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実務が根底から覆る?「非上場株式の評価見直し」の方向性と今後の実務への影響

60年ぶり抜本的な見直し「非上場株式の評価見直しの方向性と今後の実務への影響」

解説:税理士法人日本経営
代表社員税理士 小林幸生

今般、国税庁が開催する「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」において、非上場株式の評価方法に関する抜本的な見直しの方向性が示されました。本稿では、見直しに至った背景や問題認識、そして今後の実務へ与える影響について詳解いたします。

見直しの背景と問題認識

現在の財産評価基本通達に基づく非上場株式の評価体系には、かねてより以下のような問題点が指摘されてきました。

  1. 評価方式間におけるかい離により、異なる規模の企業間で不公平が生じており、これが租税回避スキームが横行する要因となっている。
  2. 類似業種比準方式には理論的な根拠や実証的な裏付けがなく、他分野における企業価値評価では用いられていないなど、上場企業の縮尺モデルを小会社に適用することの妥当性が疑問視されている。
  3. 継続企業に対して、解散を前提とした時価純資産価額で評価すべきではないとの指摘があり、清算を前提とした「時価」ではなく、継続を前提として「簿価」を用いるべきではないか。

有識者会議で示された見直しの主な方向性

これらの問題認識を踏まえ、国税庁の考える見直しの方向性として以下のようなことが示されました。

  1. 規模別区分の廃止と単一評価方式への移行
    会社規模別の評価区分を廃止し、広範の企業を共通の評価方式で評価することを検討する。規模によらず単一の評価方式に統一する。
  2. インカムアプローチ(残余利益方式)の主軸化
    企業の収益力を企業価値の要素として重視するインカムアプローチによる評価方法である「残余利益方式(簿価純資産ベース)」を検討の中心とする。
  3. 残余利益方式による評価
    「企業の保有資産(簿価純資産)」に「企業の収益獲得能力(数年分の超過収益)」を加算して算出する。
  4. 事務負担の軽減
    評価時点の時価への洗替が不要で帳簿の簿価純資産を使用できる方式とし、評価のための事務負担が軽減する。
  5. 純資産価額方式・配当還元方式の例外化
    純資産価額方式は原則的評価方式ではなく、「特定の評価会社の株式の評価方式」として位置付けることを検討する。また、配当還元方式については、特例的評価方式の趣旨を逸脱した濫用があることを踏まえ、適用の範囲等を見直した上で特別の例外措置として存置させる。

租税回避スキーム(評価額圧縮スキーム)への厳格な対応

今回の見直しでは、多種多様な租税回避スキームへの対応も示されました。

  1. 利益等の恣意的な操作への対応
    オペレーティング・リースの活用、多額の役員報酬、一時的な役員退職金等によ り利益を一時的に操作して評価額を圧縮するスキームに対し、非経常的な損益を除外した「企業の正常利益」で株式を評価することを検討する。
  2. グループ法人税制を活用した圧縮への対応
    グループ法人税制を用いて親会社の資産等を子会社へ移転し評価額を圧縮するスキームに対し、完全支配関係にあるグループ法人はグループ全体で評価を行う。
  3. 株主構成等の操作への対応
    株主構成の操作等による配当還元方式の濫用を防ぐため、適用すべき株主の範囲や基準を整理する。また、固定価格の従業員持株会株式との関係も見直しの対象とする。

実務への影響と今後の対策

今回の見直しが実現した場合、非上場株式の評価実務は根底から覆ることになります。

特に、これまで類似業種比準方式により相対的に低い評価額となっていた大会社や、各種スキームを活用してきた企業においては、株価の算出根拠が大きく変わり、評価額が大幅に上昇する可能性があります。

他方で、残余利益方式の導入がなされれば、複雑な業種目判定等が不要となり、法人税申告書等(直前期末の貸借対照表や過去数年分の損益計算書等)から容易に株価計算に必要な情報が把握可能となる側面もあります。

経営者の皆様は、不透明なスキームを駆使して株価を調整するのではなく、会計の透明性を高め、企業の真の収益力を磨くという本質的な経営が求められます。

今後の税制改正の動向を注視するとともに、現行の事業承継対策が新しい評価体系下でどのような影響を受けるのか、早期にシミュレーションを行うことも不可欠です。

※引用元:https://www.nta.go.jp/about/council/kenkyu.htm
【取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 第5回有識者会議 資料】

税理士法人日本経営は、最新の動向に基づいた高度な企業価値評価
および事業承継コンサルティングを提供しています。
本件に関するご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

本稿の監修者

小林 幸生(こばやし さちお)
税理士法人日本経営 代表社員税理士

国税庁・国税局・税務署において、長年にわたり相続税実務(事業承継税制、民事信託ほか)および公益法人への寄附税制にかかる業務を歴任。公益法人への寄附税制や租税特別措置法第40条の実務に深い知見を有し、制度の活用支援に取り組んでいる。現在は税理士法人日本経営の代表社員税理士として、資産税や公益法人分野を中心に顧客に寄り添った的確な税務コンサルティングを提供している。

本稿は執筆時点の知見に依拠した概括的な解説であり、具体的な実務判断に際しては個別事情を考慮した専門家へのご相談が不可欠です。本稿をもとに意思決定された等、本情報の利用に起因して直接又は間接に生じたいかなる不利益や損害についても、当方は一切の責任を負いかねますことを予めご了承ください。

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  • 事業形態 事業・国際税務
    相続・オーナー
  • 種別 レポート

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