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税務レポート「税務手続きの電子化」

スマート税務行政

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

はじめに

このたびの新型コロナウイルス感染拡大により、影響を受けられた皆様方に心よりお見舞い申し上げます。
新型コロナウイルスの感染拡大について、「今般の感染症対応策の実施を通じて、受給申請手続き、支給作業の一部で遅れや混乱が生じるなど、特に行政分野でのデジタル化・オンライン化の遅れが明らかになった」(本年7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」(いわゆる「骨太の方針」))と指摘されています。
こうした問題意識から、全ての行政手続きを対象に書面・押印・対面主義を見直すことが掲げられています。税務手続きも当然その対象となります。幸い、近年、税務手続きのデジタル化は進められています。

税務行政の将来像

経済社会の急激な変化に税務行政が対応できるように、中長期的に国税庁が向かうべき将来像を「税務行政の将来像」として平成29年6月に公表しています。
この将来像は、概ね10年後のイメージを示したもので、ICTの活用による「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を柱として「スマート税務行政」に進化していくことを示しています。
令和元年6月には、将来像の公表から2年が経過したことを踏まえ実現又は具現化した課題などが紹介されています。主に 
・税務手続きのデジタル化 
・AI活用の税務相談の効率化
・高度化 
・税務署窓口のスマート化

などです。e-Taxの使い勝手の改善等による申告・納付のデジタル化により、納税者の利便性向上とともにデータ基盤の充実を図り、AIの技術等を取り入れ、段階的に取り組んでいることが読み取れます。

「将来像」に見る税務手続のデジタル化
(電子申告の普及)の紹介

働き方の多様化が進み、税務手続きを行う者の増加・多様化見込まれる中、ICTの活用等を通じて、すべての納税者が簡便・正確に申告等ができるよう納税環境が整備されつつあります。

(1)大法人の電子申告の義務化
大法人の電子申告(e-Tax)の義務化(令和2年4月1日以後開始事業年度から)が制度化されました。
中小企業は税理士が経理書類をもとに申告書を作成し、電子申告するケースが多いのですが、大企業は独自の経理・会計システムを構築しているため改正前は電子申告を使用しないケースが目立っていました。

(2)年末調整の簡便化
令和2年10月から生命保険料控除証明書などの電子データを利用し、年末調整での手続きを簡便化するために、国税庁が「年末調整控除申告書作成用ソフトウエア」を無償提供します。年末調整が基本的にオンラインで完結する仕組みを整備しようとしています。

(3)電子帳簿の普及促進(文書保存の負担軽減)
近年は契約書をはじめ請求書や領収書などの取引書類の作成や授受方法を、書面からデータに切り替える検討をしている企業が多くなっています。
文書保存の負担軽減を図る観点から、各税法で保存が義務づけられている帳簿(例:仕訳帳、総勘定元帳など)・書類(例:決算関係書類、請求書、領収書など)は、一定の要件の下でプリントアウトせずに、パソコンで作成した電子データのまま保存・送付することが可能となります。
ただし、この制度(電子帳簿保存法)の適用を受けるには税務署長の事前承認が必要です。令和5年10月より開始となる「インボイス制度」により請求書等の電子化が浸透することが予想できます。

(4)スマートフォン・タブレットによる電子申告(個人)
令和2年1月(令和元年分所得税)以降、スマートフォンからより便利にe-Taxを利用できるようになりました。スマートフォンが利用可能な手続きが順次拡大されています。

(5)マイナポータルの活用
将来的には、マイナポータル等において、必要な情報を一元的に確認し、活用することができる仕組み。マイナポータルを通じて、納税者個々のニーズにあったカスタマイズ型のタイムリーな情報配信を行う方策。
マイナポータルにより、国税・地方税・年金等の手続きのオンライン・ワンストップ化の推進。などを検討中です。

おわりに

「Withコロナ」時代には、書面の取引や押印行為が在宅勤務の阻害要因となります。
確定申告書への押印省略も検討されているところです。
ペーパーレス新常態の社会がそこまで来ています。
業務処理や働き方の改善の背景には「税務行政の将来像」にある税務手続のデジタル化が必要です。
さらにこの流れを加速していくことが重要と感じており、デジタル化・オンライン化の流れをリードできるよう、日々アップデートに努めたいと思っています。
令和2年分の所得税確定申告から青色申告特別控除額が55万円に改正されました。e-Taxによる申告又は電子帳簿保存を行う場合のみ、引き続き65万円の青色申告控除が受けられます。今では、当たり前のe-Taxも導入当初(約15年前)は普及させるために5,000円の税額控除であったことに時代の流れを感じます。


詳細につきましては、担当者にご相談ください。

2020年11月1日

日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業・国際税務
    相続・オーナー
  • 種別 レポート

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