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遺言書本文に相続対象アパート住所の正確な記載がない/韓国の法律情報

遺言書本文に相続対象アパート住所の正確な記載がない
(出展:韓国法律新聞 2022/2/24)

※韓国の税務・経済・法律情報から注目のトピックスをピックアップし、日本語に翻訳してお届けします

先日、日韓相続の相談がありました。亡くなられた方は韓国籍で、日本の公証役場で作成した遺言書を遺されていました。ところが、遺言書の内容を確認すると、日本の不動産については、詳細(住所、地目、地積等)が記載されているのに、韓国の不動産については、詳細が記載されていなかったため、遺言書だけでは韓国不動産の名義変更ができませんでした。

日本で作成した公正証書遺言書は、財産の詳細な記載がなくても、韓国でも法律的には有効です。ただし、韓国登記所の実務者は遺言書に不動産の明細が記載されていない場合、相続登記を受け付けない場合がほとんどです。

登記を拒否された場合、異議申請を提出し裁判所の判断を受けることができますが、時間と費用が掛かってしまいます。

韓国に財産をお持ちの方は、公正証書遺言書に韓国財産の詳細を記載しておくことで名義変更がスムーズに行えます。

下記は、これに関する異例な判決ですが、参考までにご紹介します。

[判決]遺言書本文に相続対象アパート住所の正確な記載がなくても被相続人が所有する唯一の財産であれば有効

遺言書本文に相続財産であるアパートの住所地が記載されていなくても、当該アパートが被相続人が所有する唯一の財産であり、他のアパートを所有したと見ることができなければ、その遺言は有効であると判決が出た。

ソウル中央地方法院民事30部(当時裁判長ハン・ソンス副長判事)は、A氏が姉のB氏とC氏を相手に出した遺言効力確認訴訟(2020ガハ569413)で最近「遺言は有効だ」と原告勝訴の判決をした。

A氏の母親D氏は、2014年11月に自筆で自分が居住していたソウル銅雀区のアパートを息子であるA氏に遺贈するという趣旨の遺言書を作成した。ところが、D氏は遺言書本文に「小さなアパート」と書いただけで、具体的なアパート住所は本文の自身の名前と住民登録番号、遺言書作成日より下の部分に「銅雀区◇番地□□アパート△棟▽号」と書いた。当時A氏の姉であるB氏とC氏はこのような遺言の効力を認める同意書を作成した。ところが、2019年4月の母親死亡後、B氏とC氏が遺言の効力を認めないまま、遺言書検認手続きに協力しなかったのでA氏は訴訟を起こした。

C氏は、「母が遺言書に「小さなアパート」をA氏に遺贈するという趣旨で記載しただけで、遺贈の対象を正確に指定しなかった」とし、「(母の)遺言は民法第1066条第1項に規定された「全文」が記載されていないため効力がない」と主張した。

「自筆証書遺言」に関して規定している民法第1066条第1項は、「自筆証書による遺言は、遺言者がその全文と年月日、住所、氏名を自署して押印しなければならない」と規定している。

だが、裁判所は「D氏がこのアパート以外に別のアパートを所有したと見られる証拠がなく、C氏は母親のD氏が所有する他のアパートを特定することもできない」とし「D氏が遺言書に記載した遺贈の対象は居住していたこのアパートだと見るのが妥当だ」と明らかにした。

特に「D氏が遺言書を作成して交付する時、同席していたA氏とB氏は母親の財産保有状況を把握していた」とし「遺言書の下部に記載の場所は母親D氏が居住する場所であり、A氏に遺贈したこのアパートの住所が正確に記載されているので、遺言書本文にアパートの表示が特定されていないという事情だけで、これを自筆証書としての要件を揃えていない遺言書とは取り扱えない」と判示した。

それとともに「遺言書にはD氏がこれを作成する当時の状況と感情状態がそのまま記載されており、一部スペルが間違っているのも自然だ」とし「認定事実と弁論全体の趣旨を総合してみると、遺言書はD氏が直接自筆で作成したものと見るのが妥当だ」と判示した。

出典:韓国法律新聞

日本経営ウィル税理士法人

韓国税務担当 顧問税理士 親泊伸明
韓国税務担当 李 榕濟(イ・ヨンゼ)

本コーナーは一般的な情報をお伝えすることが目的であり、翻訳の限界から正確性・網羅性を保証するものではありません。このトピックスをご参考に意思決定をされて直接・間接に何らかの損害を被られても、一切の責任は負いかねます。意思決定にあたっては専門家に個別具体的にご相談なさってください。

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  • 事業形態 事業・国際税務
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  • 種別 レポート

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