お役立ち情報

フィリピン会計税務レポート:租税条約申請手続きの最新情報他

日系企業に重要な改正やアップデートを中心にお知らせいたします。

  1. BIR 租税条約申請に関する取扱い
  2. SEC 12月決算法人向けに関する情報

お役立ち情報やノウハウ、セミナー情報などをお届けいたします。ぜひご登録ください。

1. BIR 租税条約申請に関する取扱い

既報の通り、2021年3月31日以降のフィリピンにおける租税条約申請方法が変更となり、特に2022年12月決算法人はその申請期限が2022年4月30日に迫っています。

また、RMC No. 20-2022 が発行されたことにより、経常的に行われる取引の申請方法等が明確になりました。

今回は、弊社に問い合わせをいただいたご質問の中から、解釈に迷われる部分や最終源泉税ついて、ご回答いたします。

Q1. サービス業です。親子ローンを締結しており、その利息に対して租税条約申請を行う予定です。その必要書類の中に、Proof that the interest rate is arm’s length… とありますが、具体的にどのような書類を提出すべきでしょうか?


A1. 日本親会社の移転価格文書の提出が必要と解されます。ただし、移転価格文書を作成していないケースもあるため、移転価格ポリシーや金利設定根拠を示した文書(例えば、日本の金融機関から借入に適用されている金利+スプレッドで設定している等)を作成し、提出することで足りると解されます。

Q2. サービス業です。親子ローンを締結しており、その利息に対して租税条約申請を行う予定です。その必要書類の中に、… for a fiscally transparent entity に関する書類を提出するように要求されていますが、具体的にどのように対応すべきでしょうか?


A2. 法人格を有さないような投資組合等のいわゆる「パススルー課税」が適用される場合に、関連する書類を提出する必要があります。従いまして、通常の親子ローンの場合は、該当しないことが多いかと思います。具体的には、Letter Request において、該当しない旨を記載することで、対応可能と解されます。

Q3. 製造業です。PE(Permanent Establishment:恒久的施設)に関する書類の提出も要件にあるようですが、どのように対応すべきでしょうか?


A3. 該当するBIR Form にPE に関する質問があるため、該当しないにチェックをしておくことで足りると解されます。また、Letter Request にもその旨を記載すべきと解されます。

Q4. 製造業です。日本法人に対して、製造上の各種設計、工程、その他ノウハウ等を日本法人から支援を受けており、それに対してロヤルティ(使用料)を支払っており、租税条約申請を行う予定です。特に特許権等の法的に登録されている権利を日本法人は所有していませんが、申請時において留意点はありますか?


A4. 必要書類の要件に、Proof of ownership or interest over the licensed product, patent, copyright, trademark, tradename etc. とあります。今回の件は、法的に登録する義務がないような権利(あるいは、ライセンス)と解されますので、日本法人サイドで、ライセンス証明書のような証明書を作成し、アポスティーユ認証を行い、提出する必要があると解されます。

Q5. 製造業です。日本法人に対して、ライセンス契約に基づくロイヤルティーを支払っており、従前よりCORTT Form を使用しています。この場合、留意点はありますか?


A5. CORTT Form は使用できないため、新たにRMO 14-2021 に従い、申請しなおす必要があります。

Q6. 製造業です。2021年12月決算で2022年5月に開催する株主総会で、親会社である日本法人に配当支払いを行う予定です。申請時に留意点はありますか?


A6. 最終源泉税の発生時点に留意してください。株主総会議事録において、配当をいつまでに支払う旨が通常は記載されますが、フィリピンの源泉税は「請求基準」「支払基準」「計上基準」のいずれか早い時点がその発生時点と解されています。そのため、議事録に記載した日までに支払をしていない場合、その記載した日が請求基準として、源泉税の発生時点となりますので、留意が必要です。

関連条文、参考資料:
RMO No. 14-2021
RMC No. 77-2021
RMC No. 20-2022
Protocol Amending the Convention Between the RP and Japan for the Avoidance of Double Taxation and the Prevention of Fiscal Evasion with Respect to Taxes on Income
フィリピン税務レポート:租税条約申請時の手続き変更

2. SEC 12月決算法人向けに関する情報

SEC MEMORANDUME CIRCULAR NO.2において、下記の事項に関する情報が出ています。

  • 監査済財務諸表(Audit Financial Statement)、一般情報シート(General Information Sheet)の提出はeFAST((the Electronic Filing and Submission Tool)を使用する必要があります。eFASTを使用するには、事前登録が必要です。
  • 2021年12月31日決算の財務諸表提出の期間は、SEC登録番号の下1桁に応じて下記の通りです。ただし、eFAST を使用する場合は、提出期限前に提出することができます。

・1 または 2 の場合:2022年7月1日から15日
・3 または 4 の場合:2022年7月16日から31日
・5 または 6 の場合:2022年8月1日から15日
・7 または 8 の場合:2022年8月16日から31日
・9 または 0 の場合:2022年9月1日から15日

  • GIS は株式会社の場合、定時株主総会の日から30日以内に提出する必要があります。

レポートの執筆者

吉岡 寛(よしおか ひろし)
NIHONKEIEI (PHILIPPINES) INC. 取締役

2006年に税理士法人近畿合同会計事務所(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社。飲食・小売業、卸売業、運輸業、不動産業、医療などの中堅中小企業の会計業務全般に従事した後、2016年よりフィリピン大手会計事務所のP&A Grant Thornton に出向、日系企業に対する会計業務全般に従事。2018年10月より再度フィリピンに赴任、現地に常駐。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

フィリピンの関連情報・サービス

  • 事業形態 事業・国際税務
  • 種別 レポート

関連する事例

株式が個人株主に分散して困っている/税理士の相続・事業承継対策の提案vol.002

  • 事業・国際税務
  • 相続・オーナー

関連する事例一覧を見る

関連するお役立ち情報

自然災害に備え「事業継続力強化計画」を策定

  • 事業・国際税務

関連するお役立ち情報一覧を見る