お役立ち情報

海外事業レポート「フィリピン コミュニティ隔離措置(Community Quarantine)」期間中の行政別の対応」

12月決算法人、SEC への監査済財務諸表の提出期限の明示

フィリピン政府は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の対応として、3月17日から適用を実施している『強化されたコミュニティ隔離措置(Enhanced Community Quarantine(以下、ECQ))』を一部緩和し、マニラ首都圏は5月16日以降『修正を加えた、強化されたコミュニティ隔離措置(Modified Enhanced Community Quarantine(以下、MECQ))』に移行しました。

これにより、各省庁からは営業活動再開に向けた通達等が発行されています。

下記にて、2020年5月23日現在の主な行政から発行されている各種通達をまとめましたので、ご参考にしていただければ幸いです。

会計・税務関連の実務状況

政府による「強化されたコミュニティ隔離措置」に従い、または物理的に移動が困難なことから、ほとんどの会計事務所が在宅勤務により対応している状況であり、BIR(内国歳入庁:国税局)や、SEC(証券取引委員会)が下記通達を提出したことから、通常の法定期限ではなく、延長された法定期限に合わせて動いている状況となっています。

従いまして、納税申告や監査対応について、日本本社サイドにおいては、当地の状況に合わせた対応を行う必要があります。

BIR通達、各種申告に対する法定期限の延長

BIRに対する納税申告については、各種申告に対する法定期限が延長されました。
また、12月決算法人の法人所得税確定申告や駐在員の個人所得税確定申告は、2020年5月30日から6月14日に延長されました。

申告期限延長に関する通達:R.R NO. 11-20203月20日以降の各種申告、及び、納税期限の再延長

[対応方法]
自社の申告すべき税務申告書、及び、法定期限を確認。Revenue Regulation NO. 11-2020 に従い、延長後の法定期限を確認し手続きの準備を行う
[留意点]
・R. R. NO. 10-2020 からの改定
・万一、電子申告時においてシステムのシャットダウンが発生した場合は、不具合が生じた画面を保存し、後日、BIRにて説明ができる体制を整える必要がある
個人の確定申告期限延長に関する通達:R.R NO. 11-2020 (25)個人所得税確定申告の申告書提出、及び、納税期限の再延長

[対応方法]
改定された期限は2020年6月14日に延長
[留意点]
・納税金額を日本などから送金する場合、国際送金が可能かどうかをその都度、金融機関に確認の上手続きを進める必要がある
12月決算法人の確定申告期限延長に関する通達:R.R NO. 11-2020 (26)12月決算法人の年次法人税申告書提出、及び、納税期限の再延長

[対応方法]
改定された期限は2020年 6月14日に延長
[留意点]
・当地会計事務所やローカルスタッフと連携し、進捗状況を逐一確認。申告期限に間に合わない場合は、一旦、仮数値で申告を行い、次年度において調整する方法を検討
・3月決算法人の延長については明示されず
・SECへの財務諸表提出は2020年6月30日までと変更なし

SEC通達、監査済財務諸表提出期限の延長

SECに対する監査済財務諸表の提出期限については、通常は翌年4月中旬から5月にかけてSEC登録番号の下1桁により決められていましたが、本通達により、提出期限が下記の通りとなりました。

特別措置解除後の監査済財務諸表、及び、GIS(General Information Sheet)の提出に関する通達:SEC MEMORANDUM CIRCULAR NO. 18
SERIES OF 2020
12月決算法人:SEC への監査済財務諸表の提出期限の明示

[対応方法]
SEC登録番号の下1桁の数字により、下記の通り提出期限が明示されている 
【1・2】6月29日から7月10日まで
【3・4】7月13日から7月17日まで
【5・6】7月20日から7月24日まで
【7・8】7月27日から7月30日まで
【9・0】8月3日から8月7日まで
[留意点]
・特別措置期間が延長された場合、変更の可能性あり
・期限後提出に対し、ペナルティが課される可能性あり
外国法人のフィリピン支店におけるSECURITIES DEPOSIT に関する通達:SEC Memorandum Circular No.11 2020(A)新設の場合のSecurities Deposit
(B)既存の場合のSecurities Deposit


[対応方法]
(A)登記後60日以内にPhp 500K のSecurities Deposit をSEC に預託する必要があるが、ECQ 期間中の場合は、ECQ 明け後、30日以内に変更
(B)追加購入が必要な場合で、事業年度終了の日から6ヶ月以内の期限があるが、(A)同様にECQ 明け後30日以内に変更
[留意点]
・SEC 登録完了日や追加購入の可能性を確認
・ECQ 明けに期限を明確化させる
ローン返済における猶予期間に関する通達1ヵ月に及ぶ、あらゆるローンの支払いの猶予期間

[対応方法]
ECQ期間中でのローン未払い(利子含む)分を対象とし、5月15日から起因して最初の30日間は猶予期間とする

DOLE通達

労働法・ビザ関連の実務状況

政府による「強化されたコミュニティ隔離措置」に従い、労働者に関連する通達がDOLE(労働雇用省)より発令されています。
4月中の祝日に関する給与についても記載されていますので、ご確認ください。

また、駐在員のVISA申請についての相談も多く受けておりますが、ECQ期間中はVISA申請手続きがストップしているため期限切れ等に伴う罰金は免除されます。
ECQ明けに向けて、必要な申請手続きがとれるようBI(移民局)の通達をご確認ください。

従業員に対する政府からの給与補償制度に関する通達:LABOR ADVISORY NO. 12 SERIES OF 2020
Statement Department of Labor and Employment
April 16, 2020
従業員に対する政府からの給与補償制度

[対応方法]
設定予算超過のため、2020年4月15日で申請終了
[留意点]
今回申請が受理されなかった場合の代替案を検討中
2020年4月の祝日における従業員給与の支払に関する通達:LABOR ADVISORY NO. 13 SERIES OF 20202020年4月の祝日における従業員給与の支払に関する取扱い

[対応方法]
要件を満たす従業員に対して、追加給与を支払わなければならない可能性がある
[留意点]
2020年4月9日について、在籍する従業員に対して、No Work であっても200%支給を行う必要があると解される
労働者に対する支援労働者支援を目的とする、2020年予算の再編成

[対応方法]
労働省はCOVID-19調整措置プログラム(CAMP)の下で、新たに300,000人の労働者に5,000ペソの一時的な支援を提供する為に、2020年の予算である15億ペソを再編成した
従業員保護についてのガイドライン:Labor Advisory NO. 17 Series of 2020特別措置期間中の営業活動再開における従業員保護に対するガイドライン

[対応方法]
最低限の健康基準の遵守や在宅勤務及びテレワークの推奨等が記載されており、本ガイドラインに基づく運営が望ましいとされている

BI通達

ECQ期間中に有効期限が切れる等した場合の罰金等に関する通達: MEMORANDUMECQ期間中に有効期限が切れる等した場合の罰金等に関する取扱い

[対応方法]
ECQ期間中は一切のビザ申請手続きを延期されているため、下記の場合は罰金等は免除される
1.ECQ 終了後から30日以内に申請書を提出
2.3月17日以後にVISA の期限が失効された場合
[留意点]
実際の申請手続きにおいては、かなり混乱が予想されるため、申請期間には柔軟な対応ができるようにする
ECQ後のVisaの対応ECQ後の30日以内における、Visa更新資料の提出に関する通達

[対応方法]
ECQ期間中にVisaの有効期限が失効した場合、5月15日から30日間以内に、更新に関する資料一式を提出することで、ペナルティから免除される

DOF通達

Small Business Wage Subsidy
SBWS Program に関する制度: Small Business Wage Subsidy SBWS Program
対象事業者の従業員に対して、地域により月額Php 5,000 からPhp 8,000 までを支給する制度

[対応方法]
申請期間は2020年4月16日から2020年5月8日まで、支給対象期間は2020年5月1日以降となっている
詳細はDOF ホームページをご覧ください。
[留意点]
4月15日で申請終了となったDOLE CAMP を申請中であっても、最初の1ヶ月については適用対象となる
法令違反が発覚した場合は、申請事業者にその返金が要求される

SSS通達

SSSに関する支払の期限延長に関する通達:Circular No. 2020-006SSSに関する支払の期限延長

[対応方法]
2020年2月分から4月分までの支払期日を2020年6月1日まで延長

Philihealth通達

Philhealthに関する支払の期限延長に関する通達:ADVISORY 2020-027Philhealthに関する支払の期限延長

[対応方法]
2020年2月分から4月分までの支払期日を2020年5月31日まで延長
[留意点]
業務調整や操業停止など企業の運営状況により、所定のフォームを使用し提出する必要がある

行政当局のホームページに不具合があり、リンクにアクセスできないケースがありますことをご了承ください。

今後も新たな通達が発表されることが予想されますので、随時、重要なアップデートがございましたら、情報を発信して参りたいと存じます。

レポートの執筆者

吉岡 寛(よしおか ひろし)
NIHONKEIEI (PHILIPPINES) INC.取締役

2006年に税理士法人近畿合同会計事務所(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社。飲食・小売業、卸売業、運輸業、不動産業、医療などの中堅中小企業の会計業務全般に従事した後、2016年よりフィリピン大手会計事務所のP&A Grant Thornton に出向、日系企業に対する会計業務全般に従事。2018年10月より再度フィリピンに赴任、現地に常駐。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業・国際税務
  • 種別 レポート

関連する事例

株式が個人株主に分散して困っている/税理士の相続・事業承継対策の提案vol.002

  • 事業・国際税務
  • 相続・オーナー

関連する事例一覧を見る

関連するお役立ち情報

脱炭素で利益対策!補助金+最大14%税額控除のチャンス!

  • 事業・国際税務

関連するお役立ち情報一覧を見る