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日韓相続における注意点/二国間の制度的違いを乗り越えるために必要な専門性と経験

日韓国際相続への対策チーム

本稿は、月刊実務経営ニュース2021.01「巻頭特別企画」の抜粋記事です。

解説:日本経営ウィル税理士法人
顧問税理士・社会保険労務士・一級建築士・行政書士 親泊伸明
トータルソリューション事業部 主任 林田啓輔
トータルソリューション事業部 李 榕濟


日韓相続の注意点①戸籍の取得が困難

―― 先ほど、相続人を確定させるための戸籍の取得が難しいと仰っていましたが、それはなぜでしょうか。

親泊 韓国では、2008年(平成20年)に戸籍制度が廃止されました。そのため、同年1月1日以後に生まれた人には、戸籍がありません。1月1日以前に生まれた戸籍のある人と、戸籍のない人がいることが、なかなか理解できない人も多いです。

戸籍制度に変わる家族関係登録制度には、家族関係、基本(個人)、婚姻関係、養子縁組関係、特別養子縁組関係の、5種類の証明書があります。

また、戸籍と住民票が合わないケースがあります。韓国ではデジタル化が進んでいるため、戸籍は韓国領事館や大使館で取れます。しかし、在日韓国人の方が出産・結婚・死亡時に、日本の市役所には届け出をしても、領事館・大使館に届け出ていないと、戸籍には反映されていないからです。

ですから、日本では認められていない重婚も発生します。韓国に配偶者がいても、日本の市役所は分からないため、婚姻を受け付けてしまうからです。我々が手掛けた相続案件でも、日韓両国に奥さんがいるという例がありました。
そのほかにも、相続人が5人と聞いていたのに、戸籍を取ったら2人しかいなかった例や、生年月日が違っていた例などがあります。

日韓相続の注意点②税法上の違い

―― 日韓の相続税の違いについて説明していただけますか。

親泊 先ほど申し上げたとおり、日本は申告納税方式ですが、韓国は賦課課税方式です。また、申告期限も違い日本での相続税申告期限が10カ月ですが、韓国では6カ月または9カ月です。外国税額控除適用の問題もあるので、実質的には日本にある財産分も合わせて6カ月以内に済ませる必要があります。

外国税額控除を、申告後に適用して相続税の減額を求める更正の請求は、韓国の相続税は賦課課税方式であるためできなくはありませんが、条件は厳しいといえます。更正請求の理由が、「収用などにより価格が動いた」「後日、新たな子供が出てきて相続人が増えた」といった場合に限定されているからです。

そのほか、相続税において日本は遺産取得課税方式、韓国は遺産課税方式という違いがあり、影響が大きいので注意が必要です。

日韓相続の注意点③準拠法をどちらにするか

―― 日韓の法律上の違いが、相続にどのように影響するのか、もう少し詳しくお聞かせください。

親泊 最も大事なことは、在日韓国人の方には、基本的に韓国の民法が適用されることです。その韓国の民法には、「住んでいる国の民法を選択することもできる」という規定があります。どちらの国の法律を適用するかによって、法定相続人も法定相続分も違ってくるのです。

そのため、私たちがコンサルティングを始めるにあたって、まずお聞きするのは、準拠法をどちらにするかです。被相続人が、誰に財産を残したいと思っているのかを聞くところからスタートします。遺言書に「私は日本法を選択します」と記されていれば、法定相続人や法定相続分などは日本の民法が適用されることになります。

―― 法定相続人と法定相続分は、日韓でどのように違うのですか。

親泊 日本は配偶者(奥さん)と子供で半々ですが、韓国では「配偶者(奥さん)は子供の5割増し」とされています。したがって、子供が1人なら、奥さんが5分の3で子供が5分の2です。子供が10人なら、奥さんの取り分は23分の3(1.5/11.5)になります。

そのほか、子供が死亡している場合の代襲相続人も、日本は孫が代襲相続しますが、韓国では被代襲者(子)の配偶者にも代襲相続権があります。また、親や子供がいない夫婦の場合、日本では夫の兄弟が相続人に入りますが、韓国では配偶者の単独相続になります。

―― 相続権を放棄した場合はいかがでしょうか。

親泊 韓国でも、3カ月以内に家庭法院(家庭裁判所)に届け出れば放棄できます。ただ、放棄すると「最初からその人がいなかったことになる」ため、ここで問題が生じます。
日本では、子が放棄したら、その代襲相続人である孫に相続権が移ることはありませんが、韓国では孫に相続権が移ります。これは、日本の相続規定の第一順位が「子」であるのに対し、韓国では「直系卑属」となっているからです。そのため、韓国は、相続放棄の場合には手続きをしなくてはならない相続人の数が日本よりも多くなります。

―― そこまで複雑な案件を扱うには、相当な経験が必要ですね。差支えない範囲で、事例をいくつか紹介していただけますか。

親泊 相続ですから、当然ながら揉めるケースもあります。例えば、依頼者が後妻さんの場合、先妻のお子さんとの間で揉める場合もあります。
日本法を選択する旨を遺言書に書いていただき、奥様の取り分を2分の1にした事例がありますが、予想どおり遺留分減殺請求を受けました。
そうなると、あとは弁護士さんに下駄を預けるわけですが、私どもとすると残したい方の法定相続分が増えるように民法の選択をおすすめすることになります。

また、韓国内財産にかかる税金を韓国で支払った場合、日本の外国税額控除が適用されますが、ここで問題になるのが為替レートの変動です。
韓国財産の評価はなくなった日の為替レートで計算されます。一方、外国税額控除の計算は、韓国で税金を支払った日のレートになるのです。
以前、私どものお客様で、十数億円を韓国で支払っていただいたことがありましたが、試算していた時からレートが3%ほど動いたため、外国税額控除額が6000万円ほど増えました。日本で支払う税金が減ったので、お客様には喜んでいただけましたが、これが逆だったらと思うと冷や汗が出ます。
「無制限納税義務者が両国にまたがる時の外国税額控除の計算」は、極めて大まかな条文になっており、難しい問題です。ですから、そこは経験がものをいうところだと思います。

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日本経営ウィル税理士法人
国際相続対策チーム

親泊伸明(顧問税理士・社会保険労務士・一級建築士・行政書士)/林田啓輔(主任)/李 榕濟

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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  • 種別 レポート

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