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税制改正のプロセスと令和4年度税制改正大綱【税務レポート】

税制改正のプロセスと令和4年度税制改正大綱

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

税制は、税負担の公平確保などの理念に沿いながら経済社会の変化に対応できるよう、その仕組みは不断に見直されます。租税特別措置についても、絶えずその在り方を検討する必要があります。税制は産業や生活に大きな影響を与えます。
そこで、各府省庁や各種団体の税制改正の要望等を踏まえつつ、例年、予算編成作業と並行して税制改正の作業が行われます。

税制改正は、租税法律主義の下、立法の手続きをとることを要し、以下の手順で進められます。

1.政府税制調査会(政府税調)と各省庁要望

8月末日までに財務省に各府省庁の税制改正要望が提出され、とりまとめHPにアップされます。
経済社会の構造変化を踏まえたこれからの税制の「要望」を見ることができます。

政府税制調査会が中長期的視点から税制の在り方を検討する一方、毎年度の具体的な税制改正事項は与党税制調査会が税制改正要望等を審議します。

2. 与党「税制改正大綱」

12月中旬ごろ、与党「税制調査会」が税制改正要望等を審議し、その後取りまとめられる与党税制改正大綱を踏まえて「税制改正の大綱」が閣議に提出されます。
各メディアで大きく取り上げられ、翌年の大まかな改正内容を知ることになります。

そして、閣議決定された「税制改正の大綱」に沿って、国税の改正法案については財務省が、地方税の改正案については総務省が作成し、2月初旬に国会に提出されます

「税制改正の大綱」は12月に公表されますが、その段階では条文がない状態です。そこから、国会に提出できるような矛盾のない法律案が作成されます。

3.国会による承認

国会では、衆議院と参議院のうち、まず先に改正法案が提出された議院において委員会での審議を経て、本会議に付されます。
可決されると、もう一方の議院に送付され、そこでも可決されると改正法案は成立し、改正法に定められた日から施行されることになります。
通常は3月末に国会の承認を経て、4月1日に施行されるのが通常のスケジュールです。

※法律・施行令(政令)・施行規則(省令)
どのような場合に税金がかかるのかというような重要なことは法律で定め(国会)、具体的な計算方法などは施行令で定め(内閣総理大臣の決裁)、必要な書類や形式などを施行規則で定める(財務大臣が決裁)というイメージで構成されています。

4. 財務省による税制改正資料の公表と通達改正

7月ごろ、財務省から「税制改正の解説」が公表されます(「令和3年度税制改正の解説」は令和3年7月9日に公表されています)。
改正の趣旨や関連条文番号が記載されていますので、重要な資料となります。
また、夏から秋にかけては国税庁による通達改正が行われます。
実務では、法律、施行令、施行規則以外に通達が実務では利用されます。

通達は、本来は上級行政機関が下級行政機関に対し、法律の解釈、判断の具体的指針を示し、処理の統一のための文書による命令ですので、納税者の立場からすると強制されるものではありません。
ただし、役所側は通達に沿った処理をするので、通達に合わせることがリスクの回避につながります。改正通達は国税庁のHPに掲載されます。

5. 最後に

1から4の流れのとおり、税制改正は1年をかけて改正法の施行にむけた調整や議論がなされます。キーポイントとなるのは12月の「税制改正大綱」の発表です。
ただし、税制改正大綱の内容全てが法律になるわけではありません。中には先送りや見直しが行われる可能性があります。

令和3年度与党税制改正大綱では、

「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」

と記載されていました。この件について、令和4年度の税制改正大綱では、どのような記載がなされるのか注目したいと思っています。

2021年10月1日

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日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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