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税務レポート「交際費と税務調査」

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交際費の調査

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男


税務調査では全ての科目が調査されますが、交際費は特にチェックされやすいと言われています。その理由はやはり、プライベートとの線引きが曖昧で、事業とは関係のない費用も計上されやすいという側面があることでしょうか?

交際費とは?

交際費は、租税特別措置法において

「交際費、接待費、機密費、その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他のこれらに類する行為のために支出するものをいう」(措法61の4④)

とされています。

したがってその範囲は広く、支出の相手方は、得意先、仕入先だけではなく、間接的な関係者(役員、従業員等のほか将来の取引先候補等)も含まれます。

交際費は、原則、損金にならないと定められています(接待飲食費額の50%相当額を除く)。ただし、中小法人(資本金1億円以下)は800万円までの交際費を損金に算入できます。

交際費の調査ポイントは

ⅰ 交際費に計上したものの内容に関するもの
ⅱ 交際費以外の科目で計上したもの

これらの実態が交際費と認識されるものがあります。

支出の内容について

(1)個人負担とすべきもの

調査でチェックされるのは、役員等のプライベートな支出が含まれていないかという点です。

税務署にプライベートな支出と判断された場合、その交際費は臨時に支給される役員報酬とみなされます。この場合、以下の事態が発生します。

  • 法人税 ⇒ 臨時の役員報酬は損金算入できないため、役員報酬分だけ所得が増えます。
  • 所得税 ⇒ 役員報酬とみなされた金額について、所得税が課されます。
  • 消費税 ⇒ 交際費として飲食店等に支払った金額については消費税が含まれており、消費税の計算上経費にできましたが、役員報酬には消費税が含まれないため、消費税を過少に申告したことになります。

(2)5,000円以下の飲食費

一人当たり5,000円以下の飲食費は、交際費の損金不算入の枠外で損金に算入されます。

5,000円ルールは外部の方を招いての飲食で、その代金が一人当たり5,000円以下であれば、その全額を「交際費」ではなく「飲食費」として経費に算入することができます。

1次会、2次会のそれぞれに5,000円ルールを使うことも可能です。

この特例は、一人当たり5,000円以下になるよう人数を水増ししてしまえば簡単に不正行為ができてしまいます。

交際費課税を免れるために、人数の水増し、請求書・領収書の内容等の改ざんなどが行われている場合は、重加算税対象の否認になります。

(3)情報提供料や謝礼

情報提供料等は、ビジネスに必要であると考えると経費(損金)として認められるはずですが、その支出の内容によっては交際費と認定され、法人に税負担が生じる場合があります。

情報提供料等が「正当な対価」と認められるには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること。
  2. 提供を受ける役務の内容が当該契約において明らかにされており、かつこれに基づいて実際に役務の提供を受けていること。
  3. その交付した金品の価額が、その提供を受けた役務の内容に照らし適当と認められること。

上記の要件を満たさないために、税務調査で交際費と指摘されるケースが見受けられます。交際費と見なされた取引については、消費税の取り扱いでは「不課税取引」となります。

(4)資産計上した交際費

固定資産や棚卸資産の取得価額のなかに交際費に該当するものが含まれている場合は、注意が必要です。

例えば、土地購入に際し対策費を支払い、土地購入の付随費用として資産計上した場合は、その対策費の内容が交際費であった場合、資産計上しており損金にはなっていない場合でも、その交際費は支出した期の交際費の損金不算入の対象にしなければなりません。

(5)交際費と隣接する費用

交際費の科目で処理されていないものであっても、交際費の要件を満たすものは交際費課税の対象になります。

いわゆる「他科目交際費」は調査では必ず検討される項目です。

誤りやすい科目として、会議費、福利厚生費、手数料、広告宣伝費などがあげられます。

判定ポイント

  • 会議費 ⇒ 会議等としての実態はあるのか?
  • 福利厚生費 ⇒ 専ら従業員の慰安のため、従業員に対し、機会均等で一般的な行事・金額か?
  • 手数料 ⇒ 契約に基づくものか?
  • 広告宣伝費 ⇒ 不特定多数の者に広告の意図をもって行う行為であるのか?

(6)使途不明金と使途秘匿金

使途不明金とは、支出の目的が不明(業務の遂行に関係がない)ものをいいます。

一方、使い道はもちろん、支払先、支払金額などすべてが明かせない支出は「使途秘匿金」となります。

どちらも損金に算入することができません。

会計上は交際費や手数料の科目で処理していたとしても、税金の計算では「損金不算入」として加算しなければなりません。

さらに使途秘匿金の場合は、通常の法人税の他に使途秘匿金分の40%が追加で課税されます。

この課税は赤字で納付すべき法人税がない企業であっても支払わなければなりません。

税務調査への対応

税務調査において、交際費だけがとりわけ詳しく調べられるわけではありません。

他のさまざまな出費と同じ扱い(会社全体の収支からすれば交際費は小額)ですので、きちんと常日頃から記録をとり、用途を明らかにしておけば特別な心配は不要です。

とりわけプライベートな支出として勘違いされないために、業務上の経費であることを説明できるよう、金額の証拠や支払いの目的・効用などがわかる書類やメールなどを保管しておくことが大切です。

領収書を残すだけでなく、

①参加した人の勤務先
②参加した人の氏名(代表者名、他〇人 可)
③自社との関係性  

などを記録として残しておくことも重要です。

ご不明な点やご不安がある場合にはお気軽にお問合せください。

2020年9月1日

日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業・国際税務
    相続・オーナー
  • 種別 レポート

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