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事業再構築補助金申請のポイント~補助金を得るための事業計画作成のコツ~

事業再構築補助金申請のポイント
~補助金を得るための事業計画作成のコツ~

解説:日本経営ウィル税理士法人
公認会計士 西村 公宏

コロナ禍の長期化、事業再構築待ったなし

第3波の終息でいったんは落ち着くかと思われた新型コロナウイルスですが、大阪をはじめ大都市圏を中心とした第4波の到来で、再び緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出されました。

次々と来襲する変異種の存在を考えると、ワクチン接種等による集団免疫を得ない限り、このような状況が続くと考えられます。

コロナ禍で苦境にある事業者は、 現状維持のままで耐えていても、いつか限界がやってきます。自己防衛のために最小限の規模で耐え忍ぶだけでなく、この荒波の中でもニューノーマルに向けた萌芽、事業の再構築を目指すことも同時に行う必要があるのです。

事業再構築補助金、第二次募集は7月予定

コロナ禍で苦境にある企業の事業再構築を、強力に推し進める政策が「事業再構築促進事業」です。1兆円を超える予算規模で行われる補助金事業であり、事業規模や内容により、50%~75%の補助金が支給されます。

今回は、7月に予定されている第2回公募(第1回の公募は5月7日終了)に向けて、事業再構築補助金を得るための要となる事業計画の作成方法のコツを解説いたします。

関連ページ:事業再構築補助金を活用する、経費の最大4分の3を補助

事業再構築指針に沿った事業計画の策定

事業再構築補助金の申請要件の一つである「事業再構築」への取組みの具体的内容は、事業再構築指針で、以下の5つが挙げられています。

a.新分野展開新たな製品等で新たな市場に進出する
b.事業転換主な「事業」を転換する
c.業種転換主な「業種」を転換する
d.業態転換製造方法等を転換する
e.事業再編事業再編を通じて上記4つのいずれかを行う

その他、「中小企業卒業枠」「中堅企業ブローバルV字回復枠」がありますが、今回は上記5つに絞って解説をいたします。

事業計画の鍵となる新規事業の売上高要件

事業計画を作る際に重要となるのが、それぞれの売上高要件です。

a及びdは、計画実施により新たな事業の売上規模が総売上の10%以上になる必要がある一方、b及びcでは新たな事業の売上規模が全事業の中で最も売上構成比率の高い業種となる計画を作成する必要があります。

つまり、b及びcの計画では、新規事業に完全に事業の軸足を移す必要があるのです。

a.新分野展開
d.業態転換
新たな事業の売上規模が総売上の10%以上とする
b.事業転換
c.業種転換
新たな事業の売上規模が全事業の中で最も売上構成比率の高い業種とする

経験のない分野を事業の軸足にするためには、相当な勉強と体制の立て直し、そして事業リスクを負う必要が出てきます。現事業の将来性が極めて低い事業でない限り、後述する事業再編を除き、この選択は慎重になる必要があると言えます。

「製品等の新規性要件」に注意

上記5つのうち、a~cの場合、「製品等の新規性要件」が求められます。過去に販売等の実績がないことが求められますが、過去に全く実施していなかった必要まではなく、過去5年程度に販売実績がなければよいとされています。

a.新分野展開
b.事業転換
c.業種転換
製品等の新規性要件が求められる

また、近年試験研究などで販売実績はないものの、販売しようと取り組んでいるものを新規事業とすることも容認されています。

事業再構築補助金の審査では、計画の実現可能性も検討されると考えられ、あまりにも新規性が強すぎると実現可能性に疑問符がつけられる可能性があります。

「新規性要件」という言葉にとらわれ過ぎず、実現可能性の高いものを目指していきましょう。

新規事業は既存事業との相乗効果を目指す

同じくa~cの場合、「市場の新規性要件」も求められます。これは、新規事業が既存事業と市場を食い合わないこと、新規事業の立ち上げの影響で既存事業の売上が減少するような事象が起きないことを求めています。

a.新分野展開
b.事業転換
c.業種転換
市場の新規性要件が求められる

むしろ、新規事業と既存事業のシナジー効果により売上が増大するような事業が望ましいとされていますので、こちらも「新規性」を求めすぎない配慮が必要といえます。

M&Aを上手く組み合わせる

事業再構築の要件のうち、e.事業再編は、M&Aを通じた事業再構築を想定しております。新規事業を行うことは経験もノウハウも希薄であることから、事業リスクが高くなりがちです。

リスクを軽減する方法として、M&Aで他の事業者が持つノウハウや経験を取得するのはとても合理的と言えます。M&Aは、買収前の調査、買収時の仲介手数料、買収後の企業文化等のすり合わせに多額の費用がかかりますが、事業再構築補助金はこれら費用も補助対象となり得ます。

リスクを抑え、実現可能性を高める事業計画の構築のためにも、M&Aとの組み合わせを前向きに検討することが望まれます。

ただし、「事業再編」で認められるM&A手法には制限があることに留意が必要です。除外となる典型例が株式取得を通じた企業買収です。この場合、新規事業は自社が直接実施するわけではないため、「事業再編」の要件から除外されています。「事業再編」の要件を満たすためには、合併や事業譲渡等を通じて自社内に新規事業を取込み、自ら新規事業を実践する必要があります。

実現可能性の高い業績拡大計画を立てる

今回の事業計画策定のツボの説明は以上となります。

その他にも、業態転換要件を満たすために注意すべきこと、付加価値3~5%要件を満たすにはどのような計画にすべきか、加点要素を取り込むにはどのようにすべきか等、注意すべき点がまだまだあります。

それらの注意点に共通して言えることは、設備やソフトウエア投資を通じた付加価値の拡大、そして雇用の促進を進めていこうとする政府の趣旨にしっかり準拠しているか、その計画の実現可能性に説得力があるかです。

補助金ありきで計画を立てようとすると、これらの趣旨が忘れられ、まさに絵に描いた餅のような計画を策定しがちです。制度の趣旨を忘れず、大枠に収まる形で計画を立て、そのあとに補助金が付いてくる場合があるという認識をもって計画を立てる必要があります。

新規事業への取り組みで、成長できる企業を目指す

私たちの顧問先におきましても、事業再構築補助金の問い合わせを受けて、いくつかの顧問先で第1回公募申請のアドバイザリー業務を行いました。事業計画策定が順調に出きたところとそうでないところがあり、原因をつきつめていくと以下の結論に至りました。

日頃から新規事業を立ち上げようと構想をする習慣を持っているかどうか。

企業を取り巻く環境変化はコロナ禍以外にも様々なものがあり、過去からこのような事態は繰り返し発生しております。企業は同じ事業を継続して続けていくだけでは、いつかは衰え継続がかなわない可能性があるのです。

当法人の掲げる理念の一つに「一長一創」というものがあります。一長一創とは、事業の責任者となるもの一つは新しい事業を創業しなさいという理念です。

経営者は既存の事業にあぐらをかかず、常に新規事業を創業する精神を持たなければなりません。その考えは経営者だけでなく、事業を行うものすべての考えとして企業風土に浸透させ、新陳代謝を行っていく必要があるのです。

当法人はこのような考えのもと、自らも新規事業の立ち上げを行い、事業の再構築をたゆまず続けております。これらの実践体験に基づき、顧問先様へ効果的な事業計画策定のアドバイザリーを行っております。

事業再構築でお悩みの方は、是非とも私たちにご相談ください。

レポートの執筆者

西村 公宏(にしむら きみひろ)
日本経営ウィル税理士法人
公認会計士

2006年公認会計士試験合格後大手監査法人に入社、上場企業等の会計監査業務に従事する。2010年公認会計士登録。2017年にウィル税理士法人(現:日本経営ウィル税理士法人)に入社し、上場企業から零細企業まで幅広い企業の税務・会計顧問業務に携わる。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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  • 事業形態 事業・国際税務
    相続・オーナー
  • 種別 レポート

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