少額の資産を購入した場合 【税務レポート】


少額の資産を購入した場合
解説:税理士法人日本経営
代表社員税理士 吉本 英明
法人が資産を購入した場合には、それぞれの資産ごとに減価償却を行い、取得価額を各年度に費用配分していくのが一般的です。しかし少額の資産を購入した場合には一括で費用計上することも可能です。法人税の取り扱いを確認したいと思います。
Ⅰ.通常の減価償却
資産を購入した場合、通常、定額法または定率法により減価償却を行います。
減価償却の方法は、原則的に資産の種類によって定額法と定率法のどちらを適用するかが決まっており、これを法定償却方法といいます。
建物や構築物などの法定償却方法は定額法、機械装置や車両、器具備品などの法定償却方法は定率法となっています。なお、償却方法の届出書を提出することにより、法定償却方法以外の方法で減価償却をすることも可能です。
Ⅱ.10万円未満の資産等を購入した場合
1つ当たり10万円未満の資産もしくは使用可能期間が1年未満の資産を購入した場合には、その取得価額全額をその年の費用とすることが可能です。この場合は、取得資産を資産として計上するのではなく消耗品費などの費用計上することが必要となります。
また取得価額が10万円未満かどうかの判定は1セット単位で判定されます。そのため、例えば応接セットについて、テーブルと椅子がそれぞれ10万円未満の場合でも、1セットで10万円以上となる場合はこの規定は適用できません。
Ⅲ.20万円未満の資産を購入した場合
取得価額が20万円未満の資産を購入した場合には、取得価額を3年間で減価償却することができます。
この場合については、原則として事業年度の途中で資産を購入した場合であっても、取得価額を3年間で均等に費用計上することになるため、減価償却費の計算の際に月割りを行うことはありません。
Ⅳ.30万円未満の資産を購入した場合
中小企業者等が取得価額30万円未満の資産(以下、「少額減価償却資産」)を購入した場合には、その取得価額を全額費用計上することが可能です。
この特例の対象となる法人は、青色申告書を提出している中小企業者等で、常時使用する従業員の数が500人以下の法人に限られます。
なおこの特例は、少額減価償却資産の取得価額の合計額年300万円が限度となり、適用を受けるには確定申告書等に明細書を添付する必要があります。
また、ⅡやⅢのケースでは償却資産税の課税対象になりませんが、少額減価償却資産については償却資産税の課税対象となるため注意が必要です。
Ⅴ.最後に
今回は様々な減価償却の方法についてご紹介しました。
なお、取得した資産の取得価額は、法人が消費税の処理を税抜経理処理と税込経理処理のどちらを採用しているかにより異なります。法人が税抜経理方式を適用している場合は、消費税等抜きの価額が取得価額となり、法人が税込経理方式を適用している場合は、消費税等込みの価額が取得価額となりますのでご留意ください。
また、今回確認した減価償却の方法以外にも、一定の要件を満たすことにより、特別償却をすることも可能です。
資産の購入や設備投資をお考えの際は、ぜひ担当者にご相談ください。
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2025年09月01日
税理士法人日本経営
代表社員税理士 吉本 英明
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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