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相続税と贈与税、そして令和5年度改正案【税務レポート】

相続税と贈与税、そして令和5年度改正案

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

現在の相続税・贈与税の概要等から、令和5年度の税制改正案を考えてみたいと思います。

1. 現行の相続税の概要

相続税は、相続等により財産を取得した個人に対して、その財産の取得時における時価を課税価格として課される税です。

相続財産の合計額から債務・基礎控除額を控除した残額を法定相続分で按分した金額に対して、累進税率を適用して相続税の総額を計算(法定相続分課税方式)します。累進税率を適用することで、資産の再分配を図るという役割があります。

基礎控除:3000万円+600万円×法定相続人数
税率:10%から55%までの累進税率(8段階)

2.相続税の推移

平成初期までは、地価高騰を背景に、相続財産に占める土地の割合が高かったのですが、次第にそのウエイトは低下しています。

これに対し、有価証券及び現金・預貯金等は令和2年で8.4兆円と大きく増加し、相続財産に占める割合も48.7%に増加しています。

平成4年:土地15.5兆円(75.9%) 現金預貯・預貯金 3兆円(14.6%)
令和2年:土地 6兆円(34.7%) 現金預貯・預貯金 8.4兆円(48.7%)

また、相続税は、相続した財産の価額から基礎控除を控除して計算します。その基礎控除の水準は、バブル期の地価高騰に伴い引上げられてきました。しかし、その後の地価の下落にもかかわらず、基礎控除の水準は据え置かれ、一方で、相続税の税率構造は緩和されてきたため、平成27年1月から、資産再分配機能を回復させるため、基礎控除の引下げ(平成26年末まで:5000万円+1000万円×法定相続人数)、税率構造の見直しが行われました。

3.被相続人の高齢化

①被相続人の高齢化が進んだ結果「老老相続」が増加し、相続による若年世代への資産移転が進みにくい状況になっています。

平成元年:被相続人の死亡時の年齢 80歳以上(子の年齢50代以上) 38.9%
令和元年:被相続人の死亡時の年齢 80歳以上(子の年齢50代以上) 71.6%

②金融資産保有残高

年代別の金融資産残高をみると、この20年間で60歳代以上の保有割合は約1.5倍に増加しています。
令和元年の、個人金融資産約1,900兆円のうち60歳代以上が65%(約1,200兆円)の資産を保有しています。

4.現行の贈与税の概要

贈与税は、個人から贈与により財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税です。生前に贈与することで相続税の課税を逃れようとする行為を防ぐという意味で、相続税を補完する役割を果たしています。

1年間に贈与により取得した財産の合計額から基礎控除を控除した残額について、累進税率を適用して計算します。

基礎控除:110万円
税率:10%から55%までの累進税率(8段階)
直系尊属から18歳以上の者への贈与については累進税率緩和

昨今の高齢化の進展に伴い、相続による子や孫世代への資産移転の時期がより人生の後半にシフトしています。高齢者の保有する資産がより早い時期に子や孫世代に移転することにより、その有効活用を通じて経済社会の活性化に繋がるように期待されています。

5.現行の相続時精算課税の概要

贈与税には上記の贈与以外に、相続時精算課税制度があります。

1年間に贈与により取得した財産の合計額から特別控除額を控除した残額について、一定の税率(20%)を適用し、贈与者が死亡した場合には、相続財産と贈与財産を合算して相続税額を計算します(この制度は上記の贈与税の110万円控除は適用できません)。

特別控除:累積で2,500万円
税率:20%
適用要件:贈与者:60歳以上
受贈者:18歳以上の推定相続人・孫

6.現行の相続税と贈与税の関係

①贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、相続税よりも高い税率構造になっています。

②相続税がかからない者や、相続税がかかる者であってもその多くの者にとっては、相続税の税率より贈与税の税率の方が高いため、若年への資産移転が進みにくい状況です。

③相続税がかかる者の中でも相続財産の多いごく一部の者にとっては、相続税の税率よりも贈与税の税率の方が低いため、財産を分割して贈与する場合、相続税よりも低い税率が適用されます。

これらのことから、生前贈与でも相続でもニーズに即した資産移転が行われるよう、相続・贈与に係る税負担を一定にしていくため「資産の移転の時期の選択により中立的な税制」の構築が求められてきました。

7.令和5年度税制改正案

①相続税・贈与税の一体化として相続時精算課税制度が導入されましたが、広く利用されることはありませんでした。
そこで、相続時精算課税制度について、相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除 110 万円を控除できることとするほか、相続時精算課税で受贈した土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合、相続時にその課税価格を再計算する見直しが行われます。

相続時精算課税制度の使い勝手が向上します。令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産について適用されます。

②資産移転の中立性の観点から、暦年課税における相続前贈与の加算期間を3年から7年に延長するほか、延長した期間(4年間)に受けた贈与のうち一定額(総額100 万円)については、相続財産に加算しないこととする見直しが行われます。令和6年1月1日以降の贈与が対象です。

③教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、節税的な利用につながらないよう一定の見直しを行った上で、適用期限が令和8年(2026年)3月末まで3年延長されます。

④結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置についても、節税的な利用につながらないよう所要の見直しを行った上で、令和7年(2025年)3月末まで適用期限が2年延長されます。

8.最後に

令和5年度税制改正案は諸外国の例を参考にしつつ、相続税と贈与税を一体的に捉えて課税する観点から、格差の固定化を防止しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制を目指しています。

他方、資産の早期移転による消費拡大による経済の活性化を目指す、贈与税非課税措置については、家庭内の資産移転が格差の固定化につながらないかを要検討とすることを示しているのではないでしょうか?

改正案が令和6年1月1日の贈与から適用されることで、この1年間の「駆け込み贈与」の増加が予想されます。

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2023年2月1日

日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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