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副業収入300万円超えるとどうなる?所得税基本通達改正案【税務レポート】

副業収入300万円超えるとどうなる?所得税基本通達改正案

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

1. 改正の背景

シェアリングエコノミーなど新分野の経済活動を対象とした税務調査において申告漏れ等が増えています。

国税庁はシェアリングエコノミー等の「新分野の経済活動に係る所得」や「副業に係る所得」についての適正申告のため、これらの所得についての所得区分の判定が難しいという課題等のため、「所得税法基本通達35-1・35-2」の改正案を公表しました。

※国税庁が、2020年事務年度における、シェアリングエコノミーなど新分野の経済活動を行う個人に指摘した申告漏れの総額は201億円でした。また、調査件数を取引別に見ると、暗号資産など40%、ネット通販など19%、シェアリングビジネスなど18%となっています。

2. 改正案の概要(雑所得の範囲の明確化)

所得区分の判定の明確化のための通達の改正案です。

雑所得は、「公的年金等に係る雑所得」、「業務に係る雑所得」、「その他雑所得」に区分されます。

(1)その他雑所得の範囲の明確化

「その他雑所得」の範囲に「譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得」が含まれることが明確化されます。暗号資産取引による所得等が意識されています。

(2)業務に係る雑所得の範囲の明確化

業務に係る雑所得の範囲に、「営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得」が含まれることが明確化されます。

さらに、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること」とし、以下の場合は、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱われます。

その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合

副業収入が300万円以下なら、原則、雑所得として扱われます。

※収入金額が300万円超であれば、自動的に「事業所得」に該当するのではなく、原則どおり、「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること」となります。

3. 副業の所得の取扱いについて

改正案の背景には、「副業を事業所得とする極端な節税策の横行」がちらつきます。

≪赤字副業による節税方法の例≫

赤字の副業を事業所得で申告し、給与所得と損益通算して、還付を受ける。

副業を青色申告の事業所得とし、青色申告特別控除(最高65万円)を含めた様々な節税策(青色事業専従者控除や30万円未満の少額減価償却資産の特例)を実行する。

働き方の多様化や副業等の解禁の動きに伴い、複数の収入を得る者が増加する中、事業所得か雑所得かの区分は、原則、総合勘案して判断するべきですが、納税者の予測可能性の確保の困難さや利便性を考慮し、収入金額による形式基準が導入されるのではないでしょうか。

4. 令和2年度税制改正「雑所得を生ずべき業務を行う居住者に係る改正」

働き方改革等により給与所得者が副業等を行うケースが多くみられるようになり、申告手続き等について令和2年度税制改正が行われています。

以前は副業等を雑所得として申告する者に帳簿書類の作成保存の義務はありませんでした。
令和2年度税制改正により、記帳、所得金額の計算、確定申告の経験が乏しい納税者が多いという観点から、副業等を行う給与所得者等が、より簡便に所得金額の計算を行って、適正申告ができるように整備されました。

雑所得を生ずべき業務を行う者について、その年の前々年分のその業務に係る収入金額に応じて書類の保存や添付が義務化されることになりました。

この改正の適用は令和4年分以後の所得税です。つまり、今年の確定申告から前々年である令和2年度において、300万円を超える「業務」収入があれば現預金出納帳の保存、1000万円を超えれば収支内訳書等の確定申告書添付義務等が課されます。対象者はご留意ください。

※ただし、「業務に係る雑所得」の範囲は法令等において明らかにされていませんでした。

5. おわりに

この前記の改正案が施行されると、副業を事業として申告してきた会社員にとっては税負担が増える可能性があります。

国税庁の資料には「令和4年分以降の所得税について適用」と記載がありますので、原案が修正されずに適用されるのか注目したいと思っています。

所得税は毎年改正され、副業の取扱いについても変更されていきます。副業の確定申告について不安がある方は、ぜひご相談ください。

2022年10月1日

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日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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