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国税に不服申し立て 競馬の儲けに対する税金はおかしい?【税務レポート】

国税に不服申し立て 競馬の儲けに対する税金はおかしい?

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

最近、競馬の払戻金に対して、税務署から巨額の追徴課税を受けた芸能人の方が国税に不服申し立てを行ったことが話題になりました。

審査請求について、ご紹介したいと思います。

Ⅰ 国税に関する処分に不服がある納税者(審査請求)

国税に関する処分に不服がある場合には、不服申し立てをすることができます。

不服申し立てには処分庁(税務署長等)に対する再調査の請求と国税不服審判所(処分庁以外)に対する審査請求があります。国税不服審判所の裁決に不服がある場合には、裁判所に処分の取り消しを求める訴えを提起することができます。

審査請求を受けると国税不服審判所長は、税務署長等の処分が正しかったかどうかを調査・審理し、その結果を『裁決書』により納税者と税務署長に通知します。
国税不服審判所は納税者の権利救済だけでなく税務行政の適正さをチェックする役割も担っています。納税者と税務行政の間に立って、処分に対する審査請求について公正な第三者的立場で裁決を行います。
国税庁の特別の機関ということをもって納税者が不利な扱いを受けることはありません。

※国税不服審判所の審査請求と裁判の違い

国税不服審判所の審査請求は無料ですが、裁判所に訴えを提起する場合には訴訟費用が必要です。

Ⅱ 審査請求の処理状況

○ 令和3年度の審査請求の処理件数は2,282件となっています。

○ 処理件数のうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数(認容件数)は297件(一部認容137件、全部認容160件)で、その割合は13.0%となっています。

○ 適正かつ迅速な事件処理を通じて、納税者の正当な権利利益の救済を図るため、標準審理期間を1年と定めています。なお、令和3年度の審査請求の1年以内の処理件数割合は92.6%となっています。

○ 令和3年度の審査請求の発生件数は2,458件となっています。

 申告所得税等:770件 

 源泉所得税等:53件

 法人税等:538件

 相続税・贈与税:157件

 消費税等:834件

 その他:14件

 徴収関係:92件

Ⅲ 馬券の払戻金の税金

ところで、競馬の払戻金は課税対象となるのか?

払戻金の課税は競馬への取り組みかたによって、「一時所得」か「雑所得」かのどちらかに区分されます。

競馬ファンが単純に競馬を楽しんで利益を得たのなら、「一時所得」に該当します。国税庁のパンフレット「払戻金の支払を受けた方へ」は、一時所得として、確定申告する方法などが記載されています。

一時所得の計算
{(総収入金額−その収入を得るために支出した金額)−最高50万円(特別控除額)}×1/2

ただし、一時所得ではハズレ馬券は経費として認められていません。
一方、長年、業務の一環として馬券を購入している場合、競馬で得た利益は雑所得に分類されます。

雑所得の計算
(総収入金額−必要経費)

例えば年間1億円で馬券(ハズレ馬券を含む)を購入して1億5千万円払戻金を得た場合は
1億5千万円−1億円=5千万円」が雑所得となります。
雑所得に分類される場合は、継続してパソコン等を使い機械的に、かつ大量に馬券を購入する場合などが想定されています。

営利を目的とする継続的行為であることがポイントになります。
雑所得と認められるためにはかなり高いハードルがあります。

不服申し立てをされた芸能人の方は、雑所得としての確定申告(ハズレ馬券を経費算入)が認められず。
一時所得として5年さかのぼって「追徴課税」を受けたことを不服として、申し立てをされたことが記事になりました。

国税庁のHPには競馬の馬券の払戻金が一時所得と雑所得のいずれに該当するか、外れ馬券の購入費用が必要経費として控除できるかなどと争われていた裁判などが掲載されていますので参考になさってください。

Ⅳ 競馬の利益と税金の不思議?

競馬等で儲けたお金は課税対象(宝くじは非課税)です。

この扱いに不満を覚える競馬ファンは、少なくないようです。
会計検査院の調査では、1000万円以上の高額払戻金について、約8割が税務申告されていないことが発表されています。

馬券購入者は、そもそも馬券を購入する際に約10%の『国庫納付金』を支払っているため、「払戻金に所得税をかけるのは、国による『二重課税』ではないのか」という指摘さえあります。

一時所得の場合、外れ馬券は経費とならないため、高額配当以上に外れ馬券を購入している場合でも税金を払わなければなりません。

競馬は損をする人の方が多いと思います。
「失敗の積み重ねが成功につながる」という通念からすると、ハズレ馬券の経費性を認めるべきだという意見があるもの納得できます。

課税対象となる競馬の利益があるにもかかわらず、確定申告をしないままでいると追徴課税のペナルティがある事を念頭に、競馬を楽しんでください。

払戻金の申告などでお困りの件がございましたら、ご相談ください。

2022年8月1日

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日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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