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海外取引と消費税【税務レポート】

海外取引と消費税

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

輸出入に係る消費税の課税と還付について、確認したいと思います。

消費税は、事業者が国内において対価を得て行う課税資産の譲渡等(譲渡、貸付、役務提供)と保税地域から引き取られる外国貨物に対して課税されます。

輸入は消費税の課税の対象となり、輸出の場合、消費税は課税されません。

Ⅰ-1 輸入の消費税

保税地域から引き取られる外国貨物(いわゆる輸入品)には、消費税がかかります。

輸入品を引き取る者が消費税の納税義務者です。
外国貨物の課税標準はCIF価格(運賃、保険料込み価格)の消費税以外の関税の額及び間接諸税に相当する金額を加算した合計額です。

Ⅰ-2 申告・納付

輸入品を保税地域から引き取ろうとする者は、原則として品名、数量、金額等と関税や消費税の金額などを記載した輸入(納税)申告書を保税地域の税関長に提出、申告し、引き取り時までに関税とともに消費税を納付しなければなりません。

Ⅰ-3 計算方法

消費税(10%:標準税率)は内国消費税(7.8%)と地方消費税(2.2%)からなります。
内国消費税(7.8%)は、CIF価格(端数処理前)と端数処理後の関税額の合計額(千円未満切捨)に対して課税されます(100円未満切捨)。
地方消費税(2.2%)は内国消費税の22/78(100円未満切捨)です。

Ⅱ-1 輸出免税

消費税はあくまでも国内の消費に課せられる税金です。国外で消費されるものについては課税しないという考え方が根本にあります。

輸出販売する商品は国外で消費されることが前提となっていますので、この考えに基づき、消費税が免税となるのです。これを輸出免税といいます。

輸出免税はモノの輸出以外にも、国際輸送、国際電話など、外国に向けて行うサービスに対しても適用されます。

Ⅱ-2 申告

輸出時の消費税免税を受けるためには、資産の譲渡等が輸出取引となることを証明する必要があります。
免税されるのは、税関に輸出申告をして輸出許可書を交付された、輸出者本人です。

輸出取引の分類に応じた輸出許可書、税関長の証明、輸出をしたという事実を記した帳簿や書類などが必要です。
さらに、これら書類の保存期間は、7年間です。

Ⅱ-3 還付

消費税の課税事業者は、輸出のための仕入商品に課せられた消費税、および輸出業務や事業のために支出した諸経費への国内消費税を、所轄の税務署長に申請し還付を受けることができます。

海外で消費される輸出取引等では消費税は免除されますが、輸出のために仕入れた商品代等(課税仕入れ)には消費税が含まれています。

そのため実際の輸出者は、確定申告をすることで仕入時に支払った消費税額の還付を受けることができます。
ただし、消費税課税事業者であることが条件です。

Ⅲ「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」から

輸出免税取引が多いと、課税仕入れに係る仮払消費税を仕入税額控除しきれず、還付申告になります。

国税庁は令和4年1月に「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」という文書をHPに掲載しています。
そこでは、輸出免税による還付申告を例に含めながら、行政指導や税務調査、還付保留などについて説明しています。

還付申告を行なったからといって、実務上すぐに還付されない場合もあり、必要とあらば、還付をする前に、還付申告に至った経緯やその取引の確認書類の提出や提示を求められるケースがあります。

この確認期間が、長期にわたる場合があるようで、これらのことについての説明書きのようです。

このような文書が国税庁から公表されるのは輸出免税等の仕組みを悪用した不正還付の事例があることを示唆しています。
輸出業者の場合は、還付になる理由が明らかではありますが、税関の申告書や許可通知書、取引のインボイス等が行政指導や税務調査で確認を求められる可能性が高くなります。

還付申告になる場合は説明できる書類を整理しておく、申告書提出時に関係書類をあらかじめ添付しておくなどの対応が望ましいと言えます。

2022年6月1日

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日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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