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フィリピン税務レポート:企業復興税優遇法案(CREATE‐Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises Act)の大統領署名

税制改正第2弾 CREATE法案の概要 

2021年3月26日、包括的税制改革の第2弾として、Republic Act 11534「企業復興税優遇法案(CREATE‐Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises Act)」がドゥテルテ大統領の署名により成立しました。

ドゥテルテ大統領の就任後、2018年には所得税の減税などを中心とした TRAIN-Tax Reform for Acceleration and Inclusionや、過去の未払税金を自発的に納付することを目的とした税務恩赦として知られるTax Amnesty に関する法律が施行されました。

今回の税制改革である「企業復興税優遇法案(CREATE‐Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises Act)」は、主にコロナの影響で打撃を受けた経済の回復を大きな柱としており、法人税率の減税を目玉としています。

また、PEZAを中心とするインセンティブに関する改正も盛り込まれているため、多くの日系企業に影響が及ぼされると考えられます。

ここからは、Republic Act 11534 の法人税に関連する項目を中心に解説いたします。

出典『Department of Finance』ホームページより

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1. Income Tax:法人税

企業復興税優遇法案の目玉でもある法人税が、現行税率30%から、25%または20%に改正されます。

現行税率:30% ⇒ 改正後:25% または 20%

納税者区分 改正後税率 適用時期
内国法人総資産 P 100M以下 (*1)
課税所得 P 5M以下
20%2020年7月1日~
上記以外25%2020年7月1日~
居住外国法人25%2020年7月1日~
非居住外国法人25%2021年1月1日~

(*1) 総資産の金額は、事業用土地(主たる事務所、工場、及び、有形固定資産がある)を除く

利子、配当、ロイヤルティー、事業所得など日比間で取引を行い、かつ、租税条約を適用していないケースにおいて最終源泉税30%を適用している場合は、2021年1月1日以降より改正後税率である25%が適用されると解されるため、見直しが必要と考えられます。

2. MCIT(Minimum Corporate Income Tax):最低法人税

Gross Income(総所得と呼ばれ、売上総利益(売上高から売上原価を控除))に対して、MCITと呼ばれる最低法人税が課税されます。

ただし、事業開始事業年度の翌年から起算した第4事業年度から発生する点と、通常の法人税よりも大きい場合に課税される点に留意が必要です。下記に、具体的な課税スケジュールを記載しました。

現行税率:2% ⇒ 改正後:1%

納税者区分課税所得改正後税率適用時期
内国法人Gross Income
(総所得≒売上総利益)
1%2020年7月1日~2023年6月30日

具体的な課税スケジュール(例:3月決算法人の場合)

課税年度課税対象期間法人税最低法人税
Year 02020年1月1日~2020年3月31日(3ヶ月)
Year 12020年4月1日~2021年3月31日(12ヶ月)
Year 22021年4月1日~2022年3月31日(12ヶ月)
Year 32021年4月1日~2023年3月31日(12ヶ月)
Year 42023年4月1日~2024年3月31日(12ヶ月)法人税と最低法人税のいずれか高い金額

3. IAET(Improperly Accumulated Earnings Tax):不当留保金課税

法人の利益剰余金(Un-appropriate Retained Earning)が資本金を超過している場合に、その超過部分に対して10%の罰則的課税が行われるというルールが撤廃されます。

従前までは、①金銭による配当 ②利益剰余金を資本に振替る株式配当 ③取締役会による将来に対する投資に関する決議等により、その課税を回避する対策が必要でしたが、今後は不要とされます。

4. 非上場株式の譲渡時における譲渡所得税

非居住外国法人に対する非上場株式の譲渡所得税(Capita Gain Tax)の税率が、一律15%になります。

今後、日本国内等において、組織再編等により保有する株式を譲渡する場合には留意が必要です。

納税者区分改正前改正後
非居住外国法人PHP 100,000以下:5%
PHP 100,000超:10%
一律15%

今後も、重要なアップデートがございましたら、情報を発信してまいります。

レポートの執筆者

吉岡 寛(よしおか ひろし)
NIHONKEIEI (PHILIPPINES) INC. 取締役

2006年に税理士法人近畿合同会計事務所(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社。飲食・小売業、卸売業、運輸業、不動産業、医療などの中堅中小企業の会計業務全般に従事した後、2016年よりフィリピン大手会計事務所のP&A Grant Thornton に出向、日系企業に対する会計業務全般に従事。2018年10月より再度フィリピンに赴任、現地に常駐。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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  • 事業形態 事業・国際税務
  • 種別 レポート

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