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フィリピン税務レポート:移転価格税制に関する申告書1709、税務当局が提出基準を設定

2020年7月に急遽発行されたBIR新Form1709と移転価格文書の提出義務化に、多くの企業が対応を迫られていましたが、12月21日付けで新たにRR No.34-2020が発表されました。

BIRが調査の効率化を図ったことによりForm1709、移転価格文書の提出・作成基準がそれぞれ改定され、一定規模以下の中小企業は対象から免除される内容となりました。

Form1709の提出基準

a)大規模納税者
b)タックスインセンティブの恩典享受企業(PEZA, BOI登録事業体)
c)直近の課税年度で営業利益が純損失の企業(その他過去2年分も損失が出ている企業)
d)上記a~cの要件を満たす関連事業者と取引がある企業(関連事業者の定義はRR19-2020参照, Key Management Personalの取引は除く)

移転価格文書の作成基準

– a:年間売上が150,000,000ペソ以上かつ関連企業取引が90,000,000ペソ以上ある。
– b:該当年度で60,000,000ペソを超える固定資産の取引がある。もしくは15,000,000ペソを超える無形固定資産の取引がある。

本通達により、移転価格文書は1709提出時に添付する必要はなくなりましたが、税務調査時にBIRから依頼があった際には30日以内に提出する必要があります。

新Form1709の内容の修正

2020年7月に公開された1709に代わり、簡略化されたFormが公開されています。


2020.09.16

フィリピン 移転価格税制に関する新たな申告書1709の提出を義務付け

フィリピン進出済みの日系企業の多くが対象

2020年7月8日、フィリピンの内国歳入庁(BIR)から、歳入規則(RR No.19-2020)が公表されました。

RR No.19-2020は、移転価格税制に関連した新フォーム(BIR Form No.1709)の導入を定めたもので、今後の税務実務に大きな影響を与えるルール変更となります。

金額の基準もなく、国内外の関連会社との取引を決算提出時に合わせて税務当局に報告する必要があり、フィリピン進出済みの日系企業の多くが対象となる改正です。

当初の発表内容では、2020年3月決算期より本改正の適用が開始され、新フォーム及び添付資料の提出期日も決算提出時(2020年9月30日)と同じであり、時間的に厳しいものとなっていました。

求められている移転価格文書の作成や添付資料の収集など対応に時間を要するものがあり、期日順守の対応が難しい企業が多くなる事を踏まえ、9月15日に以下の通り提出期日の延長を認める旨の改定が発表されました。(RMC No.98-2020

決算期改定後の期日
2020年3月期及び4月期2020年12月29日
2020年5月期及び6月期2021年1月31日
2020年7月期及び8月期2021年3月1日
2020年9月期及び10月期2021年3月31日
2020年11月期及び12月期2021年4月30日

また、今回の新しい申告書を契機に、フィリピンでの移転価格税制課税のリスクは確実に高まってきていると考えられますので、特に関連当事者取引が多い企業においては早めに対応されることをおすすめします。

フィリピンの移転価格文書に関する動向

2020年7月8日付でRR No.19-2020, 7月29日付でRMC No.76-2020が発令され、2020年3月決算から新フォーム1709の提出が義務付けられました。(7月25日~有効)

対象企業2020年3月決算法人から
対象取引金額に関わらず全ての関連当事者との取引(売上、仕入、ローン、立替金など)
申告書BIR Form No.1709
添付資料・契約書、請求書などの取引の証憑書類
・関連する源泉税申告書、納付証明
・海外で納付した税金の証明や関連当事者が居住する国の税務署が発行する免税通達
・事前確認制度(APA)のコピー
・移転価格文書など

※行政当局のホームページに不具合があり、リンクにアクセスできないケースがありますことをご了承ください。

今後も新たな通達が発表されることが予想されますので、随時、重要なアップデートがございましたら、情報を発信して参りたいと存じます。

レポートの執筆者

吉岡 寛(よしおか ひろし)
NIHONKEIEI (PHILIPPINES) INC. 取締役

2006年に税理士法人近畿合同会計事務所(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社。飲食・小売業、卸売業、運輸業、不動産業、医療などの中堅中小企業の会計業務全般に従事した後、2016年よりフィリピン大手会計事務所のP&A Grant Thornton に出向、日系企業に対する会計業務全般に従事。2018年10月より再度フィリピンに赴任、現地に常駐。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業・国際税務
  • 種別 レポート

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