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インド法人設立後に必要な税務対応とは

インド法人設立後に必要な税務対応とは

解説:税理士法人日本経営

はじめに

インドで現地法人を設立した後、日本企業が最も注意すべきは税務対応とコンプライアンス体制の構築です。PAN取得やGST登録、法人税申告など、多岐にわたる手続きが存在します。期限を過ぎれば罰金のリスクが生じるだけでなく、事業開始そのものが遅れる可能性もあります。本レポートでは、インド法人設立後に必要な税務対応を時系列で整理し、法人税の申告体制からGST管理、租税条約の活用まで、実務に直結するポイントを解説します。

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1.インド法人設立で押さえるべきポイント

インド法人設立を成功させためるには、事前の計画段階で押さえるべきポイントがあります。進出目的の明確化、適切な州選定、そして現地パートナーとの強固な関係構築が、設立後の税務対応を円滑に進めるための土台となります。

最適な法人形態を決める

インドへの進出形態は、事業目的によって選択肢が異なります。製造業や販売業を本格展開するのであれば、Private Limited Company(非公開有限会社)が一般的です。この場合は株主は最大200名まで、取締役は最低2名必要となります。(※01)。

また、2025年12月1日の改正により「小規模企業(Small Company)」の定義が大幅に引き上げられました。現在は、払込資本金1億ルピー(10 Crore)以下、かつ売上高10億ルピー(100 Crore)以下の条件をいずれも満たす非公開会社が対象となります 。小規模企業に該当すると、キャッシュフロー計算書の作成免除や取締役会の開催頻度の緩和、監査人の交代義務(ローテーション)の適用除外といった、コンプライアンス上の大きなメリットを享受できます。 (※02)

一方、市場調査やマーケティング活動が主目的であれば、駐在員事務所(Liaison Office)や支店(Branch Office)も選択肢に入ります。ただし、駐在員事務所は営業活動(収益発生活動)ができない制約があります。(※01)

法人形態の選択は、設立後の税務申告や資本金規制に直接影響するため、専門家と相談のうえ慎重に決定してください。

法人形態 主な特徴 適した事業目的
Private Limited Company 独立した法人格、有限責任 製造、販売、サービス提供
Branch Office 本社の延長、利益送金可 輸出入、専門サービス
Liaison Office 営業活動不可、連絡業務のみ 市場調査、情報収集

州選定をする

インドは連邦制国家であり、税制や労働法規の詳細は州ごとに異なります。特定の産業を誘致するために独自の優遇措置を設けている州も多く、進出先の選定にあたっては、プロフェッショナル税の税率や登録義務といった地方特有の規制について事前の詳細な調査が不可欠です。

また、業種によってはセクター別の外資規制も存在します。小売業や保険業では外資規制があり、出資比率の上限が定められています。規制業種に該当する場合、追加の許認可取得が必要となり、設立から事業開始までの期間が長引く可能性があることも考慮すべきです。(※03)

州選定の際は、税制優遇だけでなく、労働力の確保のしやすさやインフラ整備の状況も総合的に判断してください。

現地パートナーとガバナンスを明確にする

インドでPrivate Limited Companyを設立する場合、取締役のうち少なくとも1名はインド居住者である必要があります。居住取締役の選任は、DIN番号(取締役識別番号)の取得と連動しており、設立手続きの初期段階で対応が求められます(※01)。

現地パートナーを起用する場合は、株主間契約や取締役会規則で権限と責任を明文化しておくことが重要です。意思決定プロセスや利益配分、紛争解決手段を事前に取り決めておくことで、会社設立後のトラブルを未然に防ぐことができます。

こうしたガバナンス体制の構築は、税務申告の正確性や監査対応の質にも直結します。日本本社との連携体制を含め、早期に設計しておくことをお勧めします。

2.インド法人の設立手続き

インド法人の設立は、電子申請システムSPICe+を通じて行います。設立証明書(COI)取得後は、各種税務関連の登録手続きを期限内に完了させる必要があります。ここでは、設立要件から登記後の各種登録までの、実務ステップを整理します(※01)。

会社形態別の設立要件

Private Limited Companyを設立する際の基本要件は以下のとおりです。最低資本金規制は撤廃されていますが、事業規模に応じた資本金の設定が実務上求められます(※01)。

  • 取締役は最低2名(うち1名はインド居住者、全員がDIN番号を取得)
  • 株主は最低2名、最大200名
  • 登記上の住所をインド国内に設定
  • 会社名の事前承認を取得

日本企業が100%出資する場合、親会社の取締役決議書や定款の英訳、公証、アポスティーユが必要です。これらの書類準備に2〜3週間かかることを見込んでスケジュールを組んでください。

設立申請はSPICe+フォームで一括処理され、承認されるとCOI証明書、PAN、TANが同時に発行されます。

設立の実務ステップ

設立から事業開始までの流れを時系列で整理します。

ステップ 期限 主な内容
第1回取締役会開催 COI取得後30日以内 最初の監査人選任、銀行口座開設決議
銀行口座開設と資本金送金 口座開設後速やかに 外貨送金証明書(FIRC)取得、KYC完了
株式割当とRBI報告 株式割当後30日以内 Form FC-GPR形式で報告
事業開始届出 COI取得後180日以内 Form 20AをROCへ提出

登記後に必要な各種登録

COI取得後は、税務関連の登録を順次進めます。PANとTANはCOI発行時に自動付与されることが多いですが、追加の手続きが必要となる場合もあります。

GST登録は、年間売上が一定額を超える事業者に義務付けられています。2025年時点の基準では、物品販売は年間売上400万ルピー超、サービス提供は200万ルピー超で登録が必要です。ただし、州間取引を行う場合は売上高にかかわらず登録が必須となります。(※04)

輸出入を行う場合はIEC(Importer-Exporter Code:輸出入コード)の取得も必要です。従業員を雇用する場合は、プロフェッショナル税(The Profession Tax :職業税)の登録が州ごとに求められます。(※01)

これらの登録手続きは相互に関連しているため、専門家のサポートを受けながら漏れなく対応することをお勧めします。

3.インド法人の税務対応とコンプライアンス

インド法人の税務対応は、法人税の申告、GSTの管理、源泉所得税(TDS)の納付が中心となります。日本親会社との取引がある場合は、租税条約の活用や移転価格税制への対応も検討が必要です。(※05)

法人税の基本対応

2025年度現在、多くの日系企業は優遇税制(Section 115BAA)を選択しており、その場合の法人税率は実効約25.17%(基本税率22% + サーチャージ10% + セス4%)となっています。

重要な点として、新規製造業向けの15%優遇税率(Section 115BAB)は、2024年3月31日までに製造・生産を開始した企業が対象であり、2025年以降に設立・操業を開始した会社には原則として適用されません 。そのため、現在の新設会社はSection 115BAA(22% regime)の活用を検討することになります(※06)。

さらに、2026年4月1日から施行される「2025年所得税法(Income-tax Act, 2025)」により、税務環境が変化します。特に、最低代替税(MAT)については、従来のような将来の税額から控除できる「クレジット」としての性格を失い、繰越不可の最終税(14%)となる点に注意が必要です。

  • 四半期ごとの前払税(Advance Tax)の納付
  • 監査報告書の提出期限は9月30日(監査義務がある場合)
  • 法人税申告書の提出期限は10月31日または11月30日

監査人は設立後30日以内に選任し、ROC報告の期限も遵守する必要があります。会計監査は年次で実施され、監査報告書は税務申告の添付書類となります。

申告体制の構築にあたっては、現地の公認会計士(CA)との連携が不可欠です。日本本社の経理部門との情報共有体制も整備してください。

GST登録とインボイス管理

GST申告は月次と年次の両方があり、GSTR-1(売上報告)、GSTR-3B(統合申告)などの書式を期限内に提出します。遅延には利息と罰金が課されるため、会計システムの整備が重要です(※04)。

申告書類 内容 提出頻度 提出期限
GSTR-1 売上の詳細報告 月次 翌月11日
GSTR-3B 納税額の確定報告 月次 翌月20日
GSTR-9 年次確定申告 年次 翌年度12月31日

インボイス管理では、GSTIN(GST識別番号)の記載や税率区分の正確性が求められます。電子インボイス(e-Invoice)の義務化も進んでおり、売上規模に応じた対応が必要です。

仕入税額控除を適切に活用するため、サプライヤーのGST登録状況についても確認してください。

租税条約の適用

日本とインドの間には租税条約が締結されており、配当・利子・ロイヤリティに対する源泉税率の軽減措置が設けられています。条約の適用を受けるには、居住者証明書の取得と適切な手続きが必要です。(※05)

親子会社間の取引がある場合、移転価格税制への対応も重要です。インドでは独立企業間価格の原則が適用され、関連者間取引について文書化義務が課されています。関連者取引については文書化義務があり、取引規模や形態に応じて、インド勅許会計士証明、ローカルファイル、マスターファイル、国別報告書などが必要となります。

  • 事業形態 事業・国際税務
  • 種別 レポート

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