資産家なのに、認知症では預金を引き出せないのか?
預金に手を付けることができない
時が経過するにつれ、母親は言ったことを忘れたり、不動産業者の方とのやり取りがおぼつかなくなってきた。一緒に医療機関へ行ったところ、認知症であると診断された。
意思能力がなく1人で生活することは困難なので、やむなく施設に入所させることにした。毎月かなりの支出になるが、これまで貯めてきた家賃収入があるので心配はない。
山田さんは金融機関に出向いた。
「ご本人様ですか?」
「いえ、母の代理で参りました」 本人でないことを正直に伝え、母の経緯を丁寧に説明した。
「少々お待ちください」
担当者は奥に行って、上司らしき人と相談している。戻ってくると、申し訳なさそうに言われた。
「ご本人ではないので、お取り扱いできません」
「どういうことですか、母が自分のために使うお金なんですよ?」
「お取り扱いできません、そういうルールになっているのです」
どうすることもできず、その日は一旦、帰宅するしかなかった。
さらに困ったことになった。母親の所有する賃貸不動産について、入居者の退去に伴う修繕費の支払い請求が来たのである。
再び、金融機関に出向いた。別の担当者からも、同じことを言われた。
「ご本人様でないので、お取り扱いできません」
結局、山田さんは、母親の口座から振り込むことも引き出すことも、できなかったのである。
口座には、十分なお金がある。しかし、それに手を付けることができない。
仕方なく山田さんは、弟さんと話し合って必要なお金を工面した。
この話を聞いた鈴木さんは、矢も盾もたまらず、顧問税理士の吉岡に相談した。
実は鈴木さんのご両親もご高齢で、最近、物忘れが多くなってきた。
「対岸の火事」では済まされない話だったのだ。
税理士 吉岡潤 からのアドバイス
話を聞いた吉岡は、「家族信託」の活用を提案した。財産の管理や相続において、柔軟な設計が可能になる家族信託。
「そんな方法があったのですか」鈴木さんは、すぐに興味を持ち、ご両親の預金を鈴木さん名義に変更した。受託者として信託のルールに基づいて、両親の通帳を管理することにしたのである。
さまざまな対策も、柔軟に設計できる「家族信託」
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(民法等の改正により、今後、取り扱いが変わる可能性もあります。専門家に個別具体的にご相談の上、ご判断ください)
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