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退職所得関連の令和7年度改正【税務レポート】

退職所得関連の令和7年度改正

解説:税理士法人日本経営
代表社員税理士 吉本 英明

令和7年度税制改正では退職所得関係について改正が入りました。
今回の改正では退職所得控除額の調整規程や退職所得の源泉徴収票の提出範囲について見直しがされました。確認したいと思います。

Ⅰ. 退職所得の計算方法

退職金の支給を受ける際には、退職所得に応じた源泉所得税が差し引かれますが、退職所得の金額は、原則として次のように計算されます。

退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
※確定給付企業年金規約に基づいて支給される退職一時金等で、従業員が負担した保険料または掛金がある場合には、その支給額から従業員が負担した保険料または掛金の金額を差し引いた残額が退職所得の収入金額となります。

上記の通り、退職所得は収入金額から退職所得控除額を差し引いて計算されますが、退職所得控除額は勤続年数に応じて以下のように計算されます。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
※80万円に満たない場合は80万円
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続年数15年の従業員が退職金として1,000万円の支給を受けた場合の退職所得の金額は次のように計算されます。
①退職所得控除額:40万円×15年=600万円
②退職所得の金額:(1,000万円-600万円)×1/2=200万円

なお、一定の期間内に複数の退職金を受けとった場合には、退職所得控除額の調整(減算)が必要となります。
退職金を受け取った年の前年以前4年のうちに、他の会社等からの退職金や確定拠出型年金(企業版DC・iDeCo)の老齢一時金(以下、DC一時金等)の支給を受けている場合には退職所得控除額の計算について調整が必要となります。
また、先にDC一時金等の支給を受けている場合には、その支給を受けた年の前年以前19年のうちに、DC一時金等以外の退職金の支給を受けていれば退職所得控除額の調整が必要となります。

Ⅱ. 退職所得控除額の調整期間の見直し

先述した通り、一定の期間内に複数の退職金を受け取った場合には退職所得控除額の調整が必要です。
令和7年度税制改正では、この調整が必要な期間について見直しが入りました。
改正により、退職金の支給を受けた年の前年以前9年以内に、DC一時金等の支給を受けている場合には退職所得控除額の計算について調整が必要となりました。
なお、退職金の支給を受けたのちに、他の会社で退職金の支給を受けた場合やDC一時金等の支給を受けている場合には変更ありません。

Ⅲ. 退職所得の源泉徴収票の提出範囲の拡大

令和7年度税制改正では、退職所得控除額に係る調整期間の見直しの他「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲にも見直しが入りました。退職金の支払者は、退職金の受給者が居住者である場合、退職金の支給後1ヶ月以内に退職所得の源泉徴収票の交付・提出が必要となります。

現行、退職所得の源泉徴収票については、受給者が役員の場合には受給者本人への交付及び税務署・市町村への提出が必要です。しかし、受給者が従業員の場合には税務署及び市町村への提出は不要とされています。
改正後は受給者が役員・従業員かかわらず、受給者への交付及び税務署・市町村への提出が必要となります。

Ⅳ. 最後に

今回は、退職所得関係の令和7年度税制改正を確認しました。
今回確認した退職所得控除の調整期間に関する改正は、令和8年1月1日以降にDC一時金等及び退職金等の支給を受ける場合に適用されます。また、退職所得等の源泉徴収票の提出範囲の改正については、令和8年1月1日以後に提出する退職所得の源泉徴収票から適用されます。

詳細につきましては、担当者にご確認ください。

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2025年05月01日

税理士法人日本経営
代表社員税理士 吉本 英明

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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