ふるさと納税の現況と新ルール【税務レポート】
ふるさと納税の現況と新ルール
解説:税理士法人日本経営
代表社員税理士 座間 昭男
ふるさと納税の指定基準の見直し等とふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)が総務省から公表されました。
「ふるさと納税」は、現在住んでいる場所ではない別の場所に寄付ができる制度のことで、平成20年に始まりました。寄付をすることで住民税や所得税の減税が行われ、さらに返礼品ももらえますので、多くの人が利用しています。
地方で生まれ育ったあと、大人になって都会で暮らす人が増えると、税収は都会に集中してしまうため、生まれ故郷に税収を移転させて潤うようにしようというのが本来の目的です。
(以下の図表は総務省ホームページより抜粋)
1.「令和5年度受入額の実績等」について
令和5年度の実績は、ふるさと納税受入額:約1兆1,175億円(対前年度比:約1.2倍)、ふるさと納税受入件数:約5,895万件(同:約1.1倍)となりました。
受入額の多い団体の上位5位は以下のとおりです。
よく目にする団体名ではないでしょうか?上位はいずれの市町村も100億円を大きく超えています。返礼品として人気の一次産品(肉、海産物、米、果物など)を用意できる自治体が受入額上位の常連となっています。
※全地方団体(都道府県及び市区町村)の令和5年度(令和5年4月1日~令和6年3月31日)決算見込の状況
2. 令和6年度課税における住民税控除額の実績等
令和6年度課税における、控除額の実績は約7,682億円(対前年度比:約1.1倍)、控除適用者数は約1,000万人(同:約1.1倍)です。
市町村民税控除額の多い上位5団体は以下のとおりです。
市町村民税控除額の適用は、単純に税収減を示しているといえます。
他自治体に流出する額が大きな自治体はほぼ都市部に固定化しています。
※全市区町村を対象に、前年中(令和5年1月1日~令和5年12月31日の間)のふるさと納税に係る令和6年度課税における控除の適用状況(令和6年6月1日時点)を調査したもの
3. ふるさと納税の募集に要した費用(全団体合計額)
各自治体の競争激化、一部自治体の著しい税収減など、その自治体を応援したいという趣旨から外れた問題も指摘されて、令和元年6月には返礼品の価格を寄付額の5割から3割に引き下げる改正が行われました。令和5年10月から、返礼品と送料や事務費を合計した「募集に関する費用」が寄付金額の5割以下でなければならないというルールも設けられました。
4. ふるさと納税の指定基準の見直し等(新ルール)
ふるさと納税制度本来の趣旨に沿った運用がより適正に行われるよう、総務省は、令和6年6月、「ふるさと納税」に関する見直しを告示しました。
ふるさと納税の指定基準の見直し等は利用者にとっては残念ともいえる方針ですが、ふるさと納税制度自体のあり方が問われている状況ともいえます。
① 令和7年10月から、寄附に伴いポイントの付与を行うポータルサイトを通じた募集が禁止されます(クレジットカード決済時に付与されるポイントは除かれます)。
ポイント付与は利用者にとっては良いことのようですが、一方で自治体が仲介業者に払っている手数料の中に特典ポイントの一部も乗せられ、手数料が多くなると考えられたのでしょうか?
② 令和6年10月から返礼品を強調した宣伝広告が禁止されます(新聞、テレビ、Web等)。
返礼品と自治体との関連性についての規定も厳格化されます。
また、地域との関連性が希薄な利用権等として、1人1泊5万円を超える宿泊券を返礼品にする場合、同一県内にある宿泊施設に限定されます。
5. 最後に
ふるさと納税には、「課題もたくさんある」と思います。
ひとつは返礼品に釣られてまったく無関係の自治体に寄付をする場合があること。
もうひとつは、本来入るはずの税金が入らないということ。
特に都会では税収減による、住民サービスの低下を招く恐れがあるのではないか?と心配です。ふるさと納税制度自体のあり方が問われている状況といえます。
今回の改正はふるさと納税を行う方(寄付者)にとっては歓迎できるとは言えませんが、国にとっては制度本来の目的に沿った運用がより適正に行われるようにするための改正となっていると思います。
ふるさと納税がより健全な形で運営され、地方創生に貢献されることを期待しつつ、寄付者は変更点を理解して、より賢く利用したいと思います。
もっと知りたい!続けてご覧ください
相続や遺言、事業承継などのさまざまなお悩みに役立つ情報を動画で紹介
2024年11月01日
税理士法人日本経営
代表社員税理士 座間 昭男
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
バックナンバー・経営者のライフプラン・相続サロンのご案内
当ページ税務レポートのバックナンバーをご覧いただけます。
経営者の方のライフプランを策定しサポートします。ライフプランに関するお悩みやご相談も承ります。
相続税専門の税理士が担当し、所得税などの各種税負担を考慮した財産の活用などを提案いたします。
-
事業形態
事業・国際税務
相続・オーナー
- 種別 レポート