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「賃上げ促進税制」の令和6年度改正【税務レポート】

「賃上げ促進税制」の令和6年度改正

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

令和6年度税制改正にて、賃上げ促進税制が強化され適用期間が延長されました。
ご紹介したいと思います。

Ⅰ. 制度の概要

賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している企業や個人事業主が、一定の要件を満たした上で、前年度よりも従業員の給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税又は所得税から税額控除できる制度です。
現行の制度には、大企業向け税制と中小企業向け税制があり、最大控除率は大企業向けが30%、中小企業向けが40%となっています。

Ⅱ. 改正の背景と内容

令和6年度の税制改正により、物価高に負けない賃上げが行われるよう同税制が強化され適用期間が3年延長されました。
また、人材投資や働きやすい職場づくりへのインセンティブを付与するため、教育訓練費を増やす事業者への上乗せ措置の要件を緩和するとともに、子育てとの両立支援や女性活躍支援に積極的な事業者への上乗せ措置が創設されました。

主な改正内容は以下の通りです。

(1)制度の区分化

地域の良質な雇用を支える企業にも賃上げをしやすい環境を整備するため、従来の大企業向け税制が大企業向けと中堅企業向けに細分化されました。
中堅企業向け税制は大企業向け税制と最大控除率こそ変わりませんが、賃上げ率に応じた割合や上乗せ要件が大企業向けと比べて緩和されます。

(2)繰越控除制度の新設

従来の制度では、同税制を適用して控除しきれなかった金額は翌年以降に繰り越すことができませんでした。
同制度をより使いやすいものとするため、中小企業向け税制については新たに繰越控除制度を創設し、同税制を適用しても控除しきれなかった金額を5年間繰り越すことができるようになりました。
この改正により、従来の制度上、同制度を活用できなかった赤字企業も賃上げ促進税制の恩恵を受けることができるようになります。

(3)上乗せ要件の拡充

①教育訓練費に係る上乗せ
中小企業向け税制の場合、従来の制度では教育訓練費の額が前年度から10%以上増加した場合に控除率が10%上乗せされていました。
改正後は、教育訓練費の額が前年度から5%以上増加した場合に控除率が10%上乗せされることとなります
また、大企業向け・中堅企業向け税制についても要件の緩和がされ、教育訓練費の額が前年度から10%以上増加した場合に5%の上乗せがされることとなりました。
なお、教育訓練費に係る上乗せは、上記の適用要件に加え、教育訓練費の額がその年度の給与総額の0.05%以上である場合に限り適用できます。

②くるみん・えるぼし認定に係る上乗せ
教育訓練費に係る上乗せのほか、くるみん・えるぼしに係る上乗せ要件が新設されました。
くるみん認定とは、仕事と子育ての両立を積極的にサポートする企業として厚生労働大臣の認定を受けることをいいます。
一方、えるぼし認定とは、女性が活躍できる職場環境づくりを推進している企業として厚生労働大臣の認定を受けることをいいます。
くるみん・えるぼし認定に係る上乗せは、企業の規模に応じて要件が異なりますが、上乗せ割合は大企業向けや中堅企業向け、中小企業向けを問わず5%となっています。

なお、上記①②の控除率の上乗せがあった場合、最大控除率は大企業向け・中堅企業向け税制が35%、中小企業向け税制が45%となります。

Ⅲ. 最後に

改正後の制度は令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます。(個人事業主については令和7年から令和9年までの各年)
賃上げ促進税制については上手く活用することで大きな節税効果が期待できますが、賃上げ分のコストを上手く価格転嫁できないケースや、原材料費や燃料費の高騰等により賃上げをすること自体が難しいというケースもあると思います。
人件費の検討には、自社の経営状況を把握することが大切になります。
是非、担当者にご相談下さい。

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2024年05月01日

日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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