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空き家問題と税制【税務レポート】

空き家問題と税制

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

Ⅰ.日本の空き家問題

現在、日本では増え続ける空き家が問題となっています。
総務省が行った住宅・土地統計調査によれば、空き家の総数は平成30年時点で約849万戸となっており、この20年間で約1.5倍に増加しています。
空き家は「賃貸用の住宅」、「売却用の住宅」、別荘等に使われる「二次的住宅」、そして「その他の住宅」の4つに分類されます。「その他の住宅」は平成30年時点で約349万戸となっており、近年最も増加傾向にありますが、この「その他の住宅」の増加が特に問題視されています。
「その他の住宅」は平成30年時点で約349万戸となっており、近年最も増加傾向にありますが、この「その他の住宅」の増加が特に問題視されています。
空き家が放置されれば、倒壊の危険や治安の悪化、ごみの不法投棄や雑草の繁茂などによる景観の悪化など、地域住民や周辺環境に大きな影響を及ぼす可能性があります。
今後も増え続けることが予想されている空き家の発生の抑制を図るため、令和5年度税制改正では「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除(以下、空き家特例)」が拡充されました。            

Ⅱ.現行の空き家特例

空き家特例とは、被相続人からの相続により取得した空き家やその敷地を譲渡した場合に、その譲渡所得から3,000万円まで控除できる制度です。
空き家特例の対象となるのは、被相続人が生前ひとりで暮らしていた家屋とその敷地に限られ、家屋については昭和56年5月31日以前に建てられたものである必要があります。
なお、譲渡される家屋等については、相続人が一定の耐震基準を満たすための耐震リフォームを行った上で譲渡するか、家屋の取壊しを行い更地の状態で譲渡する必要があります。
※被相続人が相続発生直前に老人ホーム等に入所していた場合においても、一定の要件を満たせば、空き家特例の対象となります。

Ⅲ.改正後の空き家特例

令和5年度税制改正により、空き家特例の適用期限が令和9年12月31日までの4年間延長され、適用要件も拡充されました。
現行の空き家特例の適用を受けるためには、家屋等を相続した相続人が家屋の耐震リフォーム又は取壊しを行った上で譲渡をする必要がありましたが、改正により、令和6年1月1日以後の譲渡については、買主が譲受後にその家屋の耐震リフォーム又は取壊しを実施する場合も適用対象となります。
なお、買主側のリフォーム等は譲渡年の翌年2月15日までに完了する必要があります。
また、改正により、相続により空き家を取得した相続人が3人以上の場合における1人当たりの特別控除額が「2,000万円」に減額されることとなりました。
※本改正は、令和6年1月1日以後に行う家屋・敷地の譲渡について適用されます。

Ⅳ.最後に

令和5年度税制改正で「空き家特例」について一定の見直しがされましたが、京都市では空き家に対する新たな税金である「非居住住宅利活用促進税」が新設されることとなりました。
また、民法においても空き家対策に資する新たな財産管理制度が創設されるなど、深刻化する空き家問題に対して様々な取り組みがなされています。
現在、空き家とは関係ないとお思いの方も、将来的に空き家を相続する可能性があります。放置された空き家は固定資産税の支払いや、管理の負担といった問題も生じてきます。
相続放棄をするのか、相続後に活用や売却するのか等、空き家の取り扱いについて前もって準備を進めたいものです。

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2023年7月1日

日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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