「住宅ローン控除」の令和4年度改正【税務レポート】
「住宅ローン控除」の令和4年度改正
解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男
人口減少・少子高齢化社会が到来する中、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた対策が急務となっています。
また、住宅ローン控除額が、毎年のローン支払利息額を上回っていることも会計検査院から指摘されていました。
こういった社会環境の変化等に対応するために、令和4年度改正で、控除率、控除期間、借入限度額、といった主要項目の改正が行われました。
1. 控除率
0.7%に縮小されます(改正前:1.0%)。
2. 控除期間
住宅市場が冷え込まないように配慮され、新築住宅は13年に延長、中古住宅は10年に据置されます。
3. 借入限度額
住宅ローン控除制度の適用期限を4年間延長(令和7年12月31日まで)することとし、
カーボンニュートラルの実現の観点から、まず「新築住宅、買取再販住宅」と「買取再販住宅以外の中古住宅」に区分。
新築住宅及びリフォームにより良質化した上で販売する買取再販住宅においては、認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅について借入限度額の上乗せ措置が創設されました。
(借入限度額を区分する基準が「消費税率(8%、10%)」から「住宅の種類(省エネ性能等)」に変わりました)。
- 省エネ基準が高くなるほど借入限度額が大きくなります。
- 令和6年以降に建築確認を受けた新築住宅については、省エネ基準への適合が要件とされます(省エネ基準を満たさない場合は住宅ローン控除を受けられない)。
- 中古住宅の要件は築年数要件が廃止され、昭和57年1月1日以降に建築された家屋が要件(省エネ基準は関係なし)とされます。
- 中古住宅の場合は環境性能によって細かく設定される区分はなく、認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅をまとめて認定住宅等として同じ3,000万円の借入限度額になります。
4. 所得要件
適用対象者の所得要件について、合計所得金額2,000万円以下(改正前:3,000万円以下)に引き下げられました。
5. 床面積(下限)基準の緩和
令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅において、合計所得金額1,000万円以下の者に限り、40㎡に緩和されます。それ以外の場合は、50㎡以上が対象。
6. 個人住民税における住宅ローン控除
住民税から差し引ける金額の上限が課税総所得金額の5%(最高9.75万円)に引き下げられました(課税総所得金額が195万円超の人は9.75万円)。
住宅ローン控除は減税制度であることから、減税できる額が大きくても、実際にそれだけの税額がないと減税を受けられません。
例:住宅ローン残高:4,000万円
最大減税年額:28万円(4,000万円×0.7%=28万円)
所得税額が15万円の場合⇒合計24.75万円の減税(所得税15万円+住民税9.75万円)28万円 − 24.75万円=残り3.25万円は減税が受けられません
7. 住宅ローン控除に係る申告手続きの見直し
確定申告または年末調整で住宅ローン控除の適用を受けるためには、納税者は申告の際、銀行等から交付された住宅ローンに係る「年末残高証明書」を提出又は提示しなければならないこととされていました。
この住宅ローンに係る「年末残高証明書」について、その提出又は提示が不要とされ、税務署に提出する「住宅ローン控除申告書」だけを提出するように手続きが効率化されます。
また、金融機関は、年末残高の情報等を記載した調書を税務署に提出することとされます。
税務署では毎年銀行から送られてくる年末残高の情報を基に、1年目は初年度確定申告の年末残高の確認を行い、2年目以降は年末調整や確定申告に年末残高が記載された控除証明書を毎年納税者に交付します。
この改正は令和5年入居分から適用されます。
8. 適用関係
上記の改正は、住宅の取得等をして、令和4年1月1日以後に居住の用に供する場合において適用されます。(上記7.の申告手続きの見直しを除く)
9. 最後に
すでに住宅ローン控除の適用を受けている方は、制度改正の影響はありません。控除率もこれまで通りの1%が適用できます。
住宅ローン控除の減税額はこれまでは拡大傾向でしたが、今回は縮小されています。このような状況のなか住宅購入時には環境性能等を意識することになりそうです。最大限の適用を受けられるよう準備したいものです。
詳細は担当者にご相談ください。
2022年9月1日
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日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男
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