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医療法人の親族内承継 vol.1「相続税の負担」

医療法人の出資金を相続すると、相続税を支払えないことも

「先祖代々の不動産を相続することになるのだが、相続税は払えるだろうか」 ― 資産家の方から、このようなご相談をいただくことがあります。たくさんの財産を相続したのに、そのほとんどが換金できない財産で占められていると、相続税の納税資金をどうするかは切実な問題です。これと同じことは、医療法人の出資者についても当てはまります。持分のある社団医療法人の場合、その出資持分は相続財産となるからです。40年、50年と医療法人を経営されていると、その間の内部留保はかなりの額になり、出資持分の評価が高額になることは少なくありません。潤沢な内部留保のある医療法人を承継しても、出資持分を換金することもできず、相続税の負担が多額になることが考えられるのです。

 

納税資金に充てるつもりの預金は、兄弟が相続することに

納税資金の問題だけではなく、兄弟姉妹との遺産分割の問題もあります。「医療法人をすべて相続するんだから、ほかの預金は自分たちで相続するね」という兄弟姉妹の主張は、ある意味致し方ないことかもしれません。そうなると、後継者は預金を全く相続せずに、換金することができない医療法人の出資金だけを相続することになります。つまり、相続税は自分の財産から納税しなければならないということです。

 

医療法人の出資持分の承継は、診療所にとって最大のテーマの1つ

このように、医療法人にとって出資持分の承継は、最大のテーマの1つです。内部留保が大きく、事業が順調に推移していればいるほど、その評価額は高額になるものです。その相続税が50万円と言われれば払えるでしょうが、1億円と言われると大変です。これはあり得ない話ではないのです。出資持分の評価額がいくらで、相続税の負担がどれくらいになるかは、できるだけ早い段階でシミュレーションしておく必要があります。

(2015年7月30日)

 

このトピックスの著者

近藤文哉(こんどうふみや)
日本経営ウイル税理士法人 税理士

2011年入社後、医療法人の事業承継、M&A、相続対策、海外税務など多数のプロジェクトに参加。モットーは「繋がりを大切にする」。お客様に対するポジティブで明快な提案には定評がある。

本稿は万全を期しておりますが、その内容の正確性、最新性、完全性、合法性その他を表示、保証するものではありません。実際の税務判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 医療・介護
  • 種別 ホワイトペーパー

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