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医院開業の現場「どうする?コロナ禍の昇給・賞与」

ほとんどのクリニックでコロナにより収入が減少し、前年を下回ることとなりました。コロナ禍で賞与や昇給をどう考えればよいのか。医院開業・経営の現場を、緊急アンケート調査を踏まえてレポートします。

解説:日本経営ウイル税理士法人
沢野麻梨


コロナによる医院の収入減少

4,5月の影響が大きく響く

ほとんどのクリニックでコロナにより収入が減少し、前年を下回ることとなりました。私どものお客様においても保険診療収入で4月は前期比85%、5月は前期比88%という結果となりました。

診療科目による違いはあったのか

診療科目による違いはどうでしょうか。小児科、耳鼻咽喉科が特に影響が大きく、平均で前期45%~55%と、前年を大きく下回る収入となりました。その他、外科や眼科も前年と比べると比較的影響の大きい診療科です。一方、発熱の患者様が少なく、診療を中断できない婦人科、心療内科、皮膚科は比較的患者数の減少が抑えられたと考えられます。

スタッフの雇用はどうなったか

クリニックの休診や時短

患者数が少なくなると、当然スタッフの手が空いてしまいます。休診や時短、スタッフに休みをとっていただくところも散見されました。その場合でも、休業手当として1日あたり平均賃金の6割以上の給料を支払わなければなりません。

退職希望のスタッフも

コロナ禍で退職を希望するスタッフも多く出たと聞きます。やはり、感染リスクに常にさらされることが原因の一つかもしれません。特にパートの方は家族から退職を進められるケースもあったようです。

スタッフの採用の傾向は

医療機関は依然、募集・採用が難しい

コロナにより採用の潮目が変わったという声を聞く一方、医療機関ではコロナ禍だからこそ看護師や受付スタッフの人手不足が聞かれます。地域にもよりますが、感染のリスクを懸念して、よりリスクの少ない職場へという動きもあるようです。

感染防止対策への取り組み

院内の感染対策は日頃から心がけていると思いますがスタッフへの管理はどうでしょう。患者さんだけでなくスタッフも安心して働ける環境作りに動かれた医療機関がほとんどだと思います。受付の飛沫感染対策をすることはもちろん、この機会にキャッシュレス決済を取り入れたケースも多いかと思います。

支援金を活用する

地域によっては、スタッフの採用にあたり支援金が支給されるケースもあります。例えば大阪では、4月以降離職された方を特定の求人媒体(※1)を通じて雇用した場合、常勤25万、非常勤12万5千円の支援金が給付されます(雇用保険に加入させ、3か月間の継続雇用が必要です)。

※1:イーアイデムなど大阪府のホームページに掲載されている求人媒体のみ(2020年12月1日現在)

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昇給をどうするか

最低賃金は上がるのか?

毎年最低賃金が改定されてきましたが、今年はどうでしょう。2020年、大阪府は964円、京都府909円で昨年より据え置き、兵庫県900円(1円アップ)、奈良県838円(1円アップ)となりました。全国平均は直近3年で76円の上昇ですから、今までと比べるとかなり引き上げ額が緩くなった印象です。コロナの影響を受け、事実上の据え置きということのようです。

昇給は見合わせるのか!?

最低賃金に合わせて毎年昇給させてきた事業所も少なくないようです。最低賃金がほとんど変わっていなくて、ホッとしている事業所も多いのではないでしょうか。ベースアップをするうちに新人さんとベテランさんの時給の差が小さくなってしまうという問題も聞かれます。最低賃金がほぼ同額だったということもあるのか、今年は昇給を見合わせるという声も多いように思います。

昇給したら助成金がもらえる「業務改善助成金」

事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げて設備投資を行った場合、その費用の一部が助成される「業務改善助成金」という助成金があります。昇給をご検討される場合は、専門家にご相談されることをお勧めします。

その他の助成金

労働者を雇い入れて人材を確保することによりもらえる助成金や、短時間労働者を正社員にすることでもらえるキャリアアップ助成金といったものもあります。該当する場合は、ぜひ活用していきたいものです。

賞与をどうするか

アンケート結果から導き出された賞与の割合とは

世間では大幅な人件費削減をしているところもあるようですが、クリニックではどうでしょうか。私どものお客様に緊急でアンケートを実施したところ、全体的に冬のボーナスは昨年と変えない方針のところが多いようです。コロナによる収入の減少はあったものの、感染リスクのある中で頑張ってくれていることへの労いの意味を込めてということでしょうか。スタッフのモチベーションを高めてこの冬を乗り越えたいですね!

役員報酬は変えられるか?

一方、医療法人の場合、役員報酬の扱いはどうなるでしょうか。通常、医療法人の場合は期首3ヶ月以内に役員報酬を変更しなければなりません。しかしコロナにより経営状態が著しく悪化した場合、期中の変更が認められます。その場合は、議事録の作成、保存が必要になります。多額の役員報酬で医療法人が赤字になると予測される場合は、法人と個人のバランスを見直す判断も必要になるかもしれません。

損益分岐点を見直す

人件費・役員報酬の見直しにあたって

スタッフの人件費や役員報酬の額などを考える際に、損益分岐点を知っておくことは大切です。あまり今まで考えてこなかったクリニックは、この機会に、損益分岐点を調べてみましょう。

損益分岐点とは

損益分岐点とは、収入と経費がちょうど同じで赤字でも黒字でもない、損益がトントンになる収入はいくらなのかという指標です。開業以来、あまり考えたことがないという方も多いと思います。しかし、コロナによって状況が変わる中、今後も利益を出していくためには、損益分岐点をいかに引き下げるか、事業構造を大きく見直す必要があります。

医療機関ならではの経営課題を見抜く

私どもは、医療機関ならではの損益分岐の考え方、その対応について、多くの開業医の方々をサポートしてきました。経営課題を洗い出し、改善できるところがないかご検討されたい場合は、ぜひお早めにご相談ください。

解説:医療事業部 沢野麻梨

本稿はご回答時点における一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 医療・介護
  • 種別 レポート

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