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診療所の経営・相続Q&A「MS法人のあり方を見直す」

Q:妻が医療法人の理事長、両親がMS法人の代表をつとめています。将来は子供たち(現在小学校低学年)がMS法人の役員に就任することになると思います。しかし、昨年の消費税引き上げによりMS法人の財務状況が一層厳しくなってきました。MS法人を維持したほうがいいのか、見直したほうがいいのか、困っています。


A:大きな節目は見直しのタイミング、将来のビジョンなど様々な視点から、MS法人のあり方を見直してみましょう。

かつては最適だと考えられていた体制に変化

昔は個人診療所をご開業後、メディカルサービス法人(以下MS法人)を設立する例が多く見られました。

診療所の経営を支えるため、診療所の建物や社宅などを賃貸したり、受付などの業務受託、医療機器のリースなどを行っているケースが多かったと思います。

しかしその後、法改正により一人医療法人の設立が可能になり、MS法人を設立しなくても診療所経営の安定化が図りやすくなりました。

また、消費税の導入・税率引き上げなどを経て、いまではMS法人の位置づけは大きく変わっているかと思います。

例えばMS法人が診療所の建物を所有していて、すでに建物が老朽化しているにも関わらず、新築当初の家賃が支払われているとします。

この場合、建物を買い取って自己所有にできたほうが、医療法人の経営が安定するかもしれません。

あるいはMS法人に受付などの業務委託をしている場合、委託をやめて職員を医療法人で雇用したほうが、合理的かもしれません。

その場合、まずご両親が承諾してくれるかどうかという問題があります。仮に承諾してくれたとしても、同族グループの中での取引とされるので、税理士など専門家に事前に確認される必要があるでしょう。

このように、かつては最適だと考えた体制が、歳月を経て法改正がある中で、当初の目的にそぐわなくなっているということはよくあることだと思います。

そして、年号が変わったり、大きな法改正があったり、オリンピックが開催されるなど、大きな節目の年には、経営や体制について見直しをしやすいタイミングです。

皆が納得していた相続も、年月を経て問題化するケースも

MS法人については、そもそも将来どうしたいのかということも考える必要があります。

見直しをして、ご両親の代で廃業してしまうのか、それとも、このまま維持してお子さんに引き継ぐのか。

例えば、MS法人が診療所兼ご自宅の建物を所有している場合、誰にどう承継させるのか、よかれと思ってやったことが、ご兄弟の間で仲違いの原因となることもあります。

財産はすべてキッチリ平等に分割できるものではありませんので、これはよくよく考える必要があります。

医療法人をご長男が相続し、MS法人をご長女が相続した結果、診療所の家賃について「長女が不労所得を得ているのは納得できない」と揉めたケースもあります。

そうなると診療所の建物を医療法人が買い取るなどのことになるわけですが、建物の購入対価を支払うことについて、ご長男は納得できるでしょうか。

このように先生が元気なうちは何事もなく、相続のときにも皆が納得していたにも関わらず、何年か経って問題が発生するということは、よくあることだと思います。

あのとき火種をつくってしまったと、後になって分かるのです。

MS法人については、医療法人とMS法人の役員兼任禁止や関係事業者との取引の状況に関する報告書の提出などにも留意が必要です。

もっとも、MS法人の枠を超えて事業展開されているケースも少なくありません。

MS法人のあり方、医療法人との取引内容について、将来のビジョンを踏まえて、様々な視点から検討されることをおすすめします。

(2020年1月10日 医療事業部 課長代理 八百健史)

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  • 事業形態 医療・介護
  • 種別 レポート

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