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企業財務レポート【ケース:飲食業】「原価率」は宝の山?慣例にとらわれず業績改善を実行しよう

【ケース:飲食業】
「原価率」は宝の山?慣例にとらわれず業績改善を実行しよう

解説:日本経営ウィル税理士法人
公認会計士 西村 公宏

コロナ禍が財政基盤がぜい弱な事業者を直撃

新型コロナウイルスによる影響が長期化し、その影響を受けやすい業種の財政状態をむしばみ続けています。特に飲食業は、複数の居酒屋でクラスターが発生していることもあり、コロナ禍の影響が非常に大きくでてしまっております。読者の皆様がお気に入りにされている居酒屋でも知らない間に閉店している、なんてことが起こっているように思われます。

一般的に利益率が低くて利益の蓄積が難しい飲食業は、自己資本が少なく金融機関の借入に依存している場合が多い為、甚大な影響が出ていると考えられます。

今回は、飲食業でのコロナ禍を生き抜く為の考え方の一つとして、見落とされがちな領域、原価率にフォーカスし、業績改善のヒントをお伝えいたします。

聖域になりやすい仕入高

食材の仕入は、決算書や月次試算表だと「仕入高」という一行でしか表現されないため、帳面上・会計上の分析では見落とされやすい分野です。ですが、売上が連動して増え続ける変動費の性質を持つ食材仕入高は、改善するほど利益率が劇的に改善し、また改善余地が多く潜んでいる分野です。

料理の源泉である食材は、オーナーのこだわりが詰まっている場合が多いため、どうしても意見を挟む人が少ないです。

しかし、私は敢えて言わせていただきます。それ、本当に必要な仕入ですか?と。

ゴミは宝の山!?

私が仕入高改善をアドバイスする際、真っ先に気にするのはどこだと思いますか?実は出てくる食べ物ではありません。ゴミ箱です。 つまり、食材廃棄に無駄が詰まっていないかチェックします。

何故か。その「ゴミ」の仕入にもお金を払っているからです。これを仕入れずに済むようにできれば、販売できるメニューに変えられれば、利益率は改善します。

ラーメン店だと、チャーハンが実は食材を余すことなく有効活用している有名な事例です。あの美味しいチャーハンのどこに店によってはゴミ箱行きになりそうな食材が入っているか?それは「チャーシューの細切れ」です。

チャーハンに入れるチャーシューの細切れは、ラーメンのチャーシューの製造過程で出てしまう細切れ・切り落としの活用が可能なのです。ラーメンでは使えないものでも、チャーハンに入れると一気に活きる食財に変化します。このように、食材のロスを極力減らすことで、利益率の改善が出来るのです。

「平均的な原価率」にとらわれず売値を決めよう

次に注目すべきは売上高です。具体的には商品の売値です。値決めは経営という言葉がある通り、価格決定は商売の成否に極めて重要です。売値を決めるときに気を付けなければならないのは、原価率に縛られる値決めはしてはいけないという事です。

一般的に「飲食業の平均的な原価率は30%程度」とよく言われますが、これに基づいて値決めをするのは、一番やってはいけないことです。

例えばマクドナルドの場合。100円のハンバーガーよりマックフライポテトの方が値段が高いですが、実は原材料費はハンバーガーの方が高いと言われています。それなのになぜマックフライポテトの方が高いのか。その値段で満足している人が多数いるからです。

人間の舌に食材の原価率を測定する機能はありません。あるのは、美味しいかどうか測定する機能だけです。生み出されている付加価値に合った値段設定をすれば、原価率が低くともよく売れます。

メニューの多さは諸刃の剣、勇気をもってメニューを絞ろう

思うように売上高が伸びない時にメニューのてこ入れをすることはよくあることですが、この時に注意しなければならないのは、その結果、メニューを増やしすぎないことです。メニューが増えるほど仕入れるべき食材が増え、食材ロスも発生しやすくなります。

また、調理の段取り時間が増える結果調理に時間がかかり、お客様への料理提供が遅くなる可能性があります。なにより、メニューが増えるほど店の「顔」が分かりにくくなり、店の個性が消えてしまう傾向があります。

どんなメニューにもそれを好んで注文する常連さんがあるため、メニューを削るのは不安が尽きませんが、勇気をもって行うことが大事です。メニューの多様性を担保する方法として、期間限定メニュー取り入れることも一つの方法となります。

利益改善の答えは現場にあり!客観的な目でイマを見直そう

以上、業績改善のヒントとなるものをご紹介いたしました。これらは全て共通する点があります。それは何かというと、現場を見ないと気づけないという事です。

金融機関やコンサルタントとの業績改善に関する打ち合わせとなると、どうしても決算書・試算表・総勘定元帳などの会計数値の分析から入ってしまう傾向があります。ですが、残念ながら会計数値は全ての事実をとらえられていません。そして、会計数値から漏れている事実にこそ、真実が潜んでいることがあるのです。

資金繰りが苦しくなると金融機関巡りなどで現場から足が遠のきがちになりますが、これはかえって業績を悪化させてしまいかねません。苦しい時こそ現場を見ることが大事です。

そして、毎日同じものを見ていると、どうしても気づきの力が弱くなってしまいます。この時に大事なのが第三者の目となります。現場の視点と第三者の視点、この二つがうまくかみ合うと、様々な業績改善のヒントが生み出されることが多いのです。

私たちは、ただ帳簿を見るだけでなく、経営者様のお話・お悩みを真摯に伺い、第三者の視点で様々なご助言を行ってきた実績がございます。もし、業績改善に関するアイデアでお悩みの経営者様がいらっしゃいましたら、遠慮なく私どもまでご相談ください。

レポートの執筆者

西村 公宏(にしむら きみひろ)
日本経営ウィル税理士法人
公認会計士

2006年公認会計士試験合格後大手監査法人に入社、上場企業等の会計監査業務に従事する。2010年公認会計士登録。2017年にウィル税理士法人(現:日本経営ウィル税理士法人)に入社し、上場企業から零細企業まで幅広い企業の税務・会計顧問業務に携わる。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業経営
    オーナー・個人
  • 種別 レポート

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