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韓国籍の方や帰化した方の相続の手続きと相続税について

韓国籍の方や帰化した方の相続の手続きと相続税について

本稿は、「架け橋」Vol.160(在日韓国商工会議所発行)にて掲載された記事です。

解説:日本経営ウィル税理士法人
顧問税理士・社会保険労務士・一級建築士・行政書士 親泊伸明


1.相続人の確定

(1)除籍謄本(戸籍)や家族関係登録簿について

相続の手続きは、まずは、誰が相続人になるのか、相続人を確定させることから始まります。

通常は亡くなられた方の出生から死亡までの身分関係を証明する公的書類を揃えることになりますが、日本に住んでいても韓国籍の方であれば、韓国の除籍謄本(戸籍)や家族関係登録簿を揃えることになります。

また、日本籍に帰化した方についても、帰化するまでの韓国の除籍謄本(戸籍)や家族関係登録簿と帰化した後の日本の除籍謄本(戸籍)を揃えます。

これらの除籍謄本(戸籍)や家族関係登録簿により、被相続人の婚姻や離婚・子供の出生や養子縁組などの事実が分かります。

なお、相続人が被相続人より先に亡くなられている場合には、誰が代襲相続人になるのかについても、相続人の除籍謄本(戸籍)や家族関係登録簿を揃えて確認することになります。

(2)戸籍簿や家族関係登録簿の誤りについて

被相続人の除籍謄本(戸籍)や家族関係登録簿を揃えても、在日韓国人の場合、その内容が外国人住民票や特別永住者証明書の内容と一致していない場合があります。

その原因として一番多いのは、住所地の役所には、婚姻や離婚・出生や死亡の届出をしても、韓国の役所もしくは大使館や総領事館には届出をしていないため、その異動の事実が韓国の戸籍簿に反映されないことによるものです。

それ以外にも韓国では何度も戸籍簿が書き直されていますので、その際の転記ミスも良く見受けられます。

パスポートの申請を除いて、通常の生活では戸籍を必要することが少ないため、相続手続きの段階で、初めて戸籍などの誤りに気付く場合もあり、訂正に時間を要する場合には、相続の手続き自体が止まってしまいます。

できれば、生前に戸籍簿や家族関係登録簿を取得して、その内容を確認されておかれるべきです。

(3)相続人の確定と相続分について

正しい内容の除籍謄本(戸籍)や家族関係登録簿が揃いますと、次は民法を適用して誰が相続人になるのかを確定させます。

その際に適用する民法ですが、在日韓国人の方は、国籍は韓国で居住地は日本です。

このように、法律問題の当事者などが2つ以上の国に関係する場合、どの国の法律を適用するかについて、日本では「法の適用に関する通則法(以下、「通則法」という。)」が、韓国では「国際私法」が定めています。

それによると、亡くなられた方(被相続人)の国籍が韓国であれば、原則として韓国の民法が適用されます。

ただし、国際私法には、「遺言書に明示する形で、居住地(日本)の国の法を指定し、亡くなるまでその国に居住した場合」には、その指定した法に従うと規定し、通則法もその適用を認めています。

したがって、在日韓国人の方は、遺言書に記載するか否かで自由に適用する民法を選択することが出来ます。

日本と韓国の民法では法定相続人や法定相続分、遺留分などに違いがありますので、それぞれの違いを理解したうえで、選択される必要があります。

2.相続財産の確定について

相続人の確定と並行して、被相続人が所有されていた財産や債務を確定させます。

こうして確定させた財産や債務が遺産分割の対象となります。

3.遺産分割について

相続人が確定し、被相続人が所有していた財産や債務が確定しますと、それぞれの財産や債務を相続人に分割することになります。これを遺産分割といいます。

その方法は、

被相続人の遺言があり、遺産分割の方法について具体的に指示されている場合には、その意思に基づいて遺産分割を行うことになります。この遺言書による分割を「指定分割」といいます。

遺言書が無い場合、または、遺言書があっても遺産分割に関する具体的な指示がない場合には相続人全員で話し合って分割を決めることになります。これを「協議分割」といい、この協議を遺産分割協議といいます。

相続人の間で遺産分割協議がまとまらない場合や、協議に応じようとしない相続人がいる場合には、家庭裁判所に対して、遺産分割の調停を申立てます。これを「調停分割」といいます。

家庭裁判所の調停も不成立になると、遺産分割の審判となり裁判官(家事審判官)が遺産の分け方を決めることになります。これを「審判分割」といいます。これらの分割の方法は、日本も韓国も同様です。

4.相続財産の名義変更

遺産分割が確定しますと、相続財産を各相続人の名義に変更します。

5. 韓国及び日本での相続税申告と納付

(1)日本の相続税の税務申告

日本に居住している在日韓国人の場合には、日本だけではなく韓国を含めて、全世界財産が日本の相続税の対象となります。

相続財産や債務について評価を行い、債務を差し引いた相続財産の価額が、基礎控除である3,000万円+600万円×相続人を超える場合には、死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要となります。

なお、相続税の納期限も同日です。

(2)韓国の相続税の税務申

韓国にも財産がある場合、日本に居住している在日韓国人の場合には2億ウォン(約2,000万円)の基礎控除しかありませんので、その額を超える場合には、韓国にも相続税の税務申告が必要となります。

なお、在日韓国人の場合には、韓国の非居住者となりますので、韓国にある財産だけが韓国の相続税の課税対象となります。

したがって、日本に多額の財産があっても韓国にある財産が2億ウォン以内であれば韓国には申告は不要です。

なお、韓国の場合、推定相続財産の規定や10年以内の贈与を相続財産とすると規定がありますので注意が必要です。

韓国の相続税の申告期限及び納期限は、被相続人が在日韓国人のような非居住者の場合、相続が発生した月の月末から9か月以内とされています。

6.韓国籍の方の相続の注意点

韓国籍の方の相続の手続きや申告は国をまたがるが故に発生する問題もあり、いろいろな注意も必要ですし知らなかった故に不利益を受ける場合もありますので、実際の手続の際は、詳しい専門家に相談されることをお勧めします。

日本経営ウィル税理士法人
国際相続対策チーム

親泊伸明(顧問税理士・社会保険労務士・一級建築士・行政書士)/林田啓輔(主任)/李 榕濟

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業・国際税務
    相続・オーナー
  • 種別 レポート

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