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在日韓国人の相続人確定の方法について

在日韓国人の相続人確定の方法について

解説:日本経営ウィル税理士法人
顧問税理士・社会保険労務士・一級建築士・行政書士 親泊伸明

「在日韓国人である金さんは、亡くなったお父親の相続のため、20年ぶりに韓国領事館を訪れました。20年ぶりに取得した戸籍謄本は以前と違い、5つの書類が追加されていました。 この書類がどのような書類なのか教えてください。」

韓国国籍を持つ在日韓国人の方や韓国国籍から帰化された方は、相続が発生した場合に韓国の戸籍(除籍)謄本や家族関係登録簿を準備する必要があります。

今回は、日本に居住する韓国籍の方や韓国籍から帰化された方に、相続が発生した場合に相続人を確定するために準備しなければならない書類について説明します。

相続を進めるための最初のステップは、相続人を確定することです。 相続人を確定するためには、被相続人の家族関係を確認する必要があります。韓国では日本と同様に戸籍制度がありましたが、2008年からは戸籍制度が家族関係登録制度に代わりました。2008年からは戸籍謄本の記録や訂正が出来なくなり、全ての戸籍謄本が除籍になりました。家族関係登録簿という新しい書類が戸籍(除籍)謄本と共に相続人を確定するために使われています。

1.戸籍制度の廃止と家族関係登録制度の誕生

韓国には日本と同じように戸籍制度がありましたが、今は家族関係登録制度に代わりました。
2007年12月31日、戸主制度の廃止とともに戸籍制度も廃止されました。戸主制度が廃止された理由には、家父長制の廃止と男女平等、離婚家庭や多文化家庭などの家族構成の多様化、個人情報の保護などの理由により廃止されました。
2008年1月1日から戸籍制度の代わりに家族関係登録制度が施行されました。家族関係登録簿は戸籍謄本とは異なり、「基本証明書」「家族関係証明書」「婚姻関係証明書」「養子縁組関係証明書」「親養子(特別)縁組関係証明書」の5種類に分かれ、それぞれの必要性に合わせて発行され、現在に至っています。

表 1 家族関係登録簿の5種類の証明書

2.戸籍謄本と家族関係登録簿の違い

戸籍謄本と家族関係登録簿の違いは大きくは2つがあります。

① 戸主中心と個人中心

戸籍謄本は戸主を中心に全構成員の結婚、離婚、養子縁組などのすべての個人情報が記録されています。しかし、家族関係登録簿は申請者個人を中心に目的に応じて基本証明書、家族関係証明書、婚姻証明書、養子縁組証明書、親養子縁組証明書の5つの書類に分かれており、不要な個人情報の公開を最小限に抑えています。

② 本籍地と登録基準地

本籍地とは戸籍の基準となる住所を指し、登録基準地とは家族関係登録簿を作成する際にその登録簿を特定するための住所を指します。最も大きな違いは、本籍地は、その戸籍に記載されている全ての人物が分家、婚姻などの理由で除籍されない限り同じ本籍を持ち、本籍地を変更することができるのは戸主だけでした。しかし、登録基準地は個人ごとに住所を定めることができ、家族全員が同じ登録基準地を置く必要はありません。また、各個人が自身の登録基準地を変更することができます。

表 2 記載事項の具体的な変動

3.ケース別、相続発生時に相続人の確定に必要な書類

それでは、実際に在日韓国人や韓国籍から帰化された方の相続が発生した時、相続人の確定の為にはどのような書類が必要かについて説明させていただきます。

① 被相続人が韓国籍の場合

被相続人が韓国籍の場合、韓国の除籍謄本が必要です。除籍謄本には出生に関する記録はありますが、2007年12月31日を最後に追加記録ができないため、戸籍だけでは死亡を確認することができません。そのため、除籍謄本と一緒に家族関係登録簿を取得する必要があります。

②-1 被相続人が2008年以降に帰化した場合

被相続人が2008年以降に帰化して日本国籍で死亡した場合には、除籍謄本と家族関係登録簿、日本の戸籍が必要です。出生から2007年12月31日までの記録は除籍謄本、2008年1月1日から帰化するまでの記録は家族関係登録簿、帰化後から死亡までは日本の戸籍が必要です。

②-2 被相続人が2007年以前に帰化した場合

被相続人が2007年以前に帰化し、日本国籍のまま死亡した場合には、除籍謄本とともに日本の戸籍が必要です。韓国の除籍謄本で出生とともに家族関係と帰化の事実が確認でき、帰化後の国籍喪失申告と同時に韓国の戸籍は除籍されます。帰化後から死亡までの記録については、日本の戸籍を用意する必要があります。2007年以前に帰化した場合は、家族関係登録簿ができる前のため、家族関係登録簿の発行はできません。

(注)2007年以前に帰化したとしても、国籍喪失申告が2008年以降の場合は、家族関係登録簿が創設され、除籍謄本には帰化事実が記録されないため、帰化事実を確認できる家族関係登録簿の発行も必要です。

このように、被相続人の国籍と帰化のタイミングによって相続人を確定する書類が異なります。

絵 1 相続人を確定するために必要な書類

4.まとめ

今回は、相続人を確定するための韓国の戸籍制度と家族関係登録制度と両制度の違いについてご紹介しました。 被相続人の状況によって発行可能な書類は様々です。

特に、在日韓国人の場合は、帰化の有無によって発行可能な書類の種類が異なり、いつ帰化したかによっても取得しなければならない書類が異なるため、相続人を確定する際には、より慎重に確認する必要があります。
また、除籍謄本や家族関係登録簿の取得は被相続人だけに限らず、相続人も同様に必要です。相続人についても、帰化の有無や国籍喪失申告の時期によって発行できる書類が異なります。

次回は、相続人確定時に発生する問題を実際の事例とともにご紹介します。

本稿の解説者

親泊 伸明(しんぱく のぶあき)
日本経営ウィル税理士法人顧問
税理士・社会保険労務士・一級建築士・行政書士

昭和31年生まれ。平成14年、税理士法人関西合同事務所 (現・日本経営ウィル税理士法人)を設立し代表社員税理士に就任。令和元年12月、同法人顧問に就任。

本稿は筆者が令和5年8月現在の情報に基づき、一般的な内容を簡潔に述べたものである為、その内容の正確性、完全性、最新性、信頼性、有用性、目的適合性を保証するものではございません。実際の判断等は個別事情により取り扱いが異なる場合がありますので、税理士、弁護士などの専門家にご相談の上ご判断下さい。


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  • 事業形態 事業・国際税務
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  • 種別 レポート

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