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在日韓国商工会議所発行「架け橋」/韓国の贈与税について

韓国の贈与税について

本稿は、「架け橋」Vol.161(在日韓国商工会議所発行)にて掲載された記事です。

解説:日本経営ウィル税理士法人
顧問税理士・社会保険労務士・一級建築士・行政書士 親泊伸明


「在日韓国人である父ですが、韓国に、父名義の不動産と預金があります。父も私も生活の基盤が日本ですので、できれば、現金化して日本に持って来ておきたいと思いますが、どうすれば良いでしょうか。」

韓国にお父さん名義の財産がありますと、お父さんが亡くなられた時に、韓国で相続の手続きが必要となりますし、その価額が一定額を超えれば、韓国の税務署への相続税の申告も必要となります。

そこで、不動産は売却して現金化し、預金と合わせて、日本に送金することを考えることになりますが、韓国は、為替が自由化されていないため、送金の許可を得る必要があります。しかしながら、その預金ができた理由や、不動産の取得資金の出所が証明できない場合には、なかなか、送金の許可を得ることが困難です。

なお、生涯10万ドルまでは、送金許可を得なくても送金することは可能です。

今回と次回は、韓国財産の贈与を行い、その取得原因を明確にしたうえで、送金許可を取得する方法も考えられることから、韓国の贈与税の制度や計算方法について、説明をしたいと思います。

また、その後は、韓国の相続税についてや相続や贈与した場合の名義変更の手続きについて、さらに、日本への送金などの方法について、順次解説をしていきたいと思います。

1.韓国の贈与税制度

日本と韓国の贈与税の制度の違いを纏めたものが図表1です。その内容について簡単に説明します。

①納税義務者は?

贈与税は、日本でも韓国でも貰った人(受贈者)が贈与税を納める「遺産取得者課税方式」を採用しています。
原則として受贈者が納税義務者になりますが、受贈者が韓国の非居住者で、韓国の居住者から国外財産の贈与を受けた場合は、贈与者が納税義務者になるとしています。

居住者と非居住者の判定は、韓国内に住所を置くか、または183日以上居所を置く者が居住者で、居住者でない人を非居住者としています。

②課税対象の範囲は?

韓国の贈与税は、受贈者が韓国の居住者の場合は、全世界財産に対して課税され、受贈者が韓国の非居住者の場合には、韓国国内財産か、韓国居住者から受けた国外財産に対して課税されます。

在日韓国人の場合、親も子も日本に住んでいますので、韓国の非居住者になります。
また、日本の財産は韓国からみれば国外財産になりますので、在日韓国人の親が子に日本の財産を贈与しても韓国の贈与税は生じません。

③申告はいつ、どこにする?

日本の贈与税は「申告納税方式」を採用していますが、韓国の贈与税は「賦課課税方式」を採用しています。
韓国でも申告書の作成や納付は納税者が行いますが、あくまでも税額を決定するための協力であり、最終的には国が税額を確定させることになっています。

日本の贈与税の場合、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までが申告及び納付期限ですが、韓国の贈与税の場合は、贈与を受けた都度、贈与を受けた日が属する月の末日から3か月以内に申告して納税することになっています。

韓国贈与税は、受贈者の住所地(受贈者が韓国の非居住者の場合、贈与者の住所地)の所轄税務署に申告しますが、親も子も日本に住んでいる在日韓国人の場合、贈与財産の所在地の所轄税務署に申告することになります。

2.贈与税の計算

日本と韓国の贈与税の一番の違いは、計算方法です。

日本では毎年一年間に受けた贈与額の総額で贈与税を計算しますが、韓国では10年間累積して計算を行う制度になっています。
贈与日前10年以内に同一人(贈与者が直系尊属の場合、その直系尊属の配偶者を含む)から受けた財産の合計額が1千万ウォン以上である場合、その金額を加算して贈与税を計算します。

なお、贈与税の計算は日本と異なり、贈与者毎で計算することとされています。
その点では相続税と同様の「遺産課税方式」の考え方を採用しているといえます。

仮に、2020年1月に祖母から現金1億ウォン、2020年7月に母から現金5,000万ウォン、2021年12月に父より現金1億ウォンの贈与を受けたとします。
父と母は同一人とされますので、2021年12月の父からの贈与については、2020年7月に母から贈与を受けた5,000万ウォンを加算して贈与税申告をしなければなりません。

具体的には、2020年1月に祖母からの贈与1億ウォンについては、同一年度であっても母からの贈与とは別に、単独で贈与税を算出します(なお、祖母からの贈与の場合には、通常の贈与税とは別に世代省略割増課税の適用も受けます。)。

また、2020年7月に母からの贈与5,000万ウォンについても、祖母からの贈与とは別に、単独で贈与税を算出します。

そして、2021年12月の父からの贈与1億ウォンについては、2020年7月の母からの贈与と同一人からの贈与とみなされ、母からの贈与の5,000万ウォンと併せて、1億5,000万ウォンに対して贈与税が計算され、算出された贈与税額から、母からの5,000万ウォンの贈与の際に算出された贈与税額を控除して、父からの贈与の贈与税を算出します。

また、韓国で納付した贈与税は、日本の贈与税申告をするときに、一定の範囲で外国税額控除の適用を受けることができます。

なお、日本の贈与税法では年間110万円の基礎控除がありますが、韓国の贈与税法でも贈与財産控除があります。

10年間合算して控除できる限度額は、配偶者から贈与を受けた場合には6億ウォン、直系尊属や直系卑属から贈与を受けた場合には5,000万ウォン、その他の親族から贈与を受けた場合には1,000万ウォンです。ただし、贈与財産控除は受贈者が居住者である場合にのみ適用されます。

受贈者が韓国の非居住者である場合、すなわち、在日韓国人などの場合には、控除額はなく贈与した財産に対してそのまま税率を乗じることになります。

今回は、韓国の贈与税の制度について説明しました。

次回は、韓国財産の贈与を受けた場合の具体的な日韓両国の贈与税の計算方法について説明します。

日本経営ウィル税理士法人

韓国税務担当 顧問税理士 親泊伸明
韓国税務担当 李 榕濟(イ・ヨンゼ)
韓国税務担当 崔 暎銀(チェ・ヨンウン、日本名:戸野由理)

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

日韓国際相続に関するご相談・お問い合わせ
[韓国税務担当]050-5330-1313

担当:李 榕濟(イ・ヨンゼ)
受付時間9:30〜17:30(土・日・祝日除く)

  • 事業形態 事業・国際税務
    相続・オーナー
  • 種別 レポート

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