税理士の経営・財産・相続トピックスVol.045「何を託す」
日本では馴染みの無い「信託」。平成18年に抜本的な法改正があったのですが、84年ぶりという大変な年月を経ての改正でした。信託と言うと信託銀行の商品だと思われがちですが、そうではありません。個人が遺言に代わるものとして活用できるのです。大変便利な方法ですが、世間ではまだあまり使われていません。しかし、相続対策などでは実際に使われています。欧米では、遺言ではなく信託(Trust)で財産を残すのが一般的です。
遺言ではできないが、信託ではできるということがあります。例えば、株式会社のオーナーに子供が2人(兄と弟)いた場合、遺言で株を長男に残すことはできます。しかし、将来この長男が亡くなった場合には次男に相続させたいと思っても、オーナーがそのように指定することは出来ません。
一方、信託の場合には、オーナーの次は長男、その次は次男というように「託す」ことを連続させることも可能です。これを受益者連続信託といいます。
収益物件の場合には、賃貸不動産そのものは長男に承継させるが、収益は兄と妹で分けて欲しい。このような場合、遺言では物件の所有者と収益の帰属を分けることはできませんが、信託であれば可能です。これを複層方型信託といいます。
これらは、信託の使い方のごく一例です。「託したい思い」を形にするための方法が多様化し欧米に少し近づき進化しました。ポイントは「託したい思い」は何か? そして、「託す方の思い」と「託される側の思い」が、繋がるといいですね。
(2017年6月1日 税理士法人日本経営 代表社員税理士 丹羽修二)
本稿はご回答時点における一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
-
事業形態
事業・国際税務
医療・介護
相続・オーナー
- 種別 トピックス