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税理士の経営・財産・相続トピックスVol.092「医療の数字」

医療の数字

日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 丹羽修二

世界的に見た日本の医療制度の特徴は、国民皆保険であること、かつ医療へフリーアクセスであること、そしてフリーチョイスです。
GDP比率では日本の総医療費は10.9%、米国は16.9%(OECD2018データより)。
私が米国の大学で医療経済を研究していた時、教授が「米国の車の値段の20%は医療費で、それだけで日本の車と比較し10%価格競争力が低い」と揶揄していたことを思い出します。
医療費が産業に与える影響は大きく、各国ともにそのコントロールに苦慮しているのが実情です。

平均在院日数は、日本は約16日、米国は約5日、先進諸国も5日程度、市民の感覚からすると在院期間が短いのは不安と辛さがいっぱいです。
米国の1人あたりの医療費は約1万ドル、日本は約4800ドル。
疾病内容により大きく変わりますが、入院治療では日本と米国の治療費は3倍から5倍の差があります。
米国の大学病院クラスではスタッフは1万人を超え、当然に治療費は高いでしょう。
長く入院できないのは当然です。民間保険であればなおさらです。

他国においては医療の総量規制があり、年間で実施できる手術の件数、検査の件数などの制限があり、わかりやすく表現すると順番待ちということです。
また一定の年齢になったら特定の治療はしないなど、様々な上限規制が医療へのアクセスを妨げています。
他国の医療制度においては国家的な制限により医療資源がコントロールされています。日本の医療制度の大きな特徴である、行きたい医療機関を患者が自由に選ぶことができるフリーチョイス、他国ではなかなか出来ません。

このように各国とのベンチマークで見てみると、レベルの高い医療を市民がフリーアクセスとフリーチョイスで受けることができ、かつ経済的には国際競争力のある医療費レベルを維持しているのが日本の医療の数字です。
日本の医療は制度の中で行われていることは間違いないのですが、他国ではあり得ないような「医療の文化」の領域を持っています。
それを支えているのは日本特有の「勤勉さ、真面目さ」に代表される「気質」であり、「卓越した医療の文化」につながっていると感じます。
医療を担う方々の理論や理屈や損得を超越した日々の努力に日本の医療は支えられていることをあらためて実感しています。

昨今の医療における大変困難な状況の中で、医療を担う方々の日々の使命感と努力に敬意を表し、感謝申し上げます。

2021年5月1日

日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 丹羽修二

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業・国際税務
  • 種別 トピックス

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