税理士の経営・財産・相続トピックスVol.082「2020年 路線価が上昇した、本当か?」
2020年 路線価が上昇した、本当か?
日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 丹羽修二
7月1日、国税庁から2020年度の路線価が発表されました。
国内で一番高い路線価は、銀座5丁目の「鳩居堂」前1平方メールあたり4592万円、1坪あたり1億5153万円、10坪で15億円ですから物凄いことです。
大阪では北区角田町御堂筋で2160万円、前年比35%上昇です。
沖縄の国際通りではなんと40%の上昇率です。35%、40%の上昇率はバブル期に並ぶ勢いです。
東京都は平均で5%上昇、大阪府は2.5%上昇、京都府は3.1%上昇、北海道が3.7%上昇。
反対に兵庫県は0.1%下落、静岡県は0.4%下落。
47都道府県のうち上昇したのは21。下落は26です。
評価基準額の対前年変動率は1.6%上昇しています。しかし、上昇した地区と下落した地区を比較すると下落している都道府県の方が多いのです。
この公表された路線価にはCOVID–19による経済への影響は反映されていません。反映されていなくても路線価が下落している県が26あるのです。
路線価は国税庁が相続税や贈与税を計算するとき、土地の価額を算定する基礎として公表しています。
2020年に相続が発生した場合の相続税や、贈与税は、基本的にはこの路線価が適用されることになります。
COVID–19で日本をはじめ世界の経済活動は大打撃を受け、この影響はまだまだ続くと見られています。
航空会社の予測では国際線が正常に戻るには3年かかるとの見方もあります。
COVID–19により不動産取引はほぼ止まっている状態です。
大手企業は国内オフィスを半減、海外から日本への不動産投資も先行きは不透明…など、不動産価額は専門家でも見通しの判断は難しい。
相続税は高い土地の価額で計算され、納める時にお金がないので不動産を売ろうと思ったら、買い手がいない…。
7月1日に発表された路線価は、「COVID–19はあるが、相続税の計算は高い価額で算定します」というメッセージに等しい。
減額措置の可能性があるという噂があったとしても、この時期にこの公表はあまりに事務的、形式的ではないでしょうか。
税務行政は国家財政の要であることは間違いありません。
しかしながら国家的非常時こそ、国民と税務行政が共通して納得感を持てる施策を出すことが、税務行政に求められる「経営手腕」です。
平常時の政策誘導も重要ですが、国家的非常時の「人を動かす納得感のある経営(税務行政)」を期待したいものです。
2020年7月6日
日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 丹羽修二
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