海外事業レポート「フィリピン 新型コロナウィルス感染症に関連した税務申告及び財務諸表提出期限の延長」
フィリピン首都圏の経済活動はほぼ停止状態に
フィリピン政府は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の対応として、3月17日から4月13日午前零時までの期間、ルソン地域全域において「強化されたコミュニティ隔離措置(Enhanced Community Quarantine)」を実施中であり、各家庭における厳格な自宅隔離措置や、大量輸送用の公共交通機関の運行停止、スーパーや病院、銀行等を除く商業施設・公共施設の業務停止など幅広い措置が実施されております。(在フィリピン日本国大使館メールマガジンより抜粋)
このように、首都圏の経済活動はほぼ停止に近い状態になり、行政機関も軒並み停止、あるいは、実質的に機能していない状況にあります。
会計・税務関連の実務状況
政府による「強化されたコミュニティ隔離措置」に従い、または物理的に移動が困難なことから、ほとんどの会計事務所が在宅勤務により対応している状況であり、BIR(内国歳入庁:国税局)や、SEC(証券取引委員会)が下記通達を提出したことから、通常の法定期限ではなく、延長された法定期限に合わせて動いている状況となっています。
従いまして、納税申告や監査対応について、日本本社サイドにおいては、当地の状況に合わせた対応を行う必要があります。
BIR通達、各種申告に対する法定期限の延長
BIRに対する納税申告については、各種申告に対する法定期限が延長されました。
また、12月決算法人の法人所得税確定申告や駐在員の個人所得税確定申告は、2020年5月15日に 延長されました。
申告期限延長に関する通達:RMC No. 29 2020 | 3月20日以降の各種申告、及び、納税期限について1月延長 [対応方法] 自社の申告すべき税務申告書、及び、法定期限を確認。RMC No. 29 2020に従い、延長後の法定期限を確認し手続きの準備を行う。 [留意点] 万一、電子申告時においてシステムのシャットダウンが発生した場合は、不具合が生じた画面を保存し、後日、BIRにて説明ができる体制を整える必要がある。 |
12月決算法人の確定申告期限延長に関する通達:RMC No. 28 2020 | 12月決算法人の確定申告期限について、2020年5月15日に延期 [対応方法] 当地会計事務所やローカルスタッフと連携し、進捗状況を逐一確認。申告期限に間に合わない場合は、一旦、仮数値で申告を行い、次年度において調整する方法を検討。 |
個人の確定申告期限延長に関する通達:RMC No. 28 2020 | 個人の確定申告期限について、2020年5月15日に延期 [対応方法] 納税計算の資料は既に揃っていると思わるため、一旦、納税額は計算しておく。駐在員がフィリピンに帰国できない場合などで署名がとれない場合は、郵送等で対応を検討。 [留意点] 納税金額を日本などから送金する場合、国際送金が可能かどうかをその都度、金融機関に確認の上手続きを進める必要があります。 |
SEC通達、監査済財務諸表提出期限の延長
SECに対する監査済財務諸表の提出期限については、通常は翌年4月中旬から5月にかけてSEC登録番号の下1桁により決められていましたが、本通達により、提出期限が下記の通りとなりました。
監査済財務諸表の提出に関する通達:SEC Memorandum Circular No.5 2020 | 2020年6月30日、又は、本隔離措置が解除された日の60日以内のいずれか遅い日 ⇒ 早くとも2020年6月30日までは延長 |
今後も新たな通達が発表されることが予想されますので、随時、重要なアップデートがございましたら、情報を発信して参りたいと存じます。
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レポートの執筆者
吉岡 寛(よしおか ひろし)
NIHONKEIEI (PHILIPPINES) INC.取締役
2006年に税理士法人近畿合同会計事務所(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社。飲食・小売業、卸売業、運輸業、不動産業、医療などの中堅中小企業の会計業務全般に従事した後、2016年よりフィリピン大手会計事務所のP&A Grant Thornton に出向、日系企業に対する会計業務全般に従事。2018年10月より再度フィリピンに赴任、現地に常駐。
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事業形態
事業・国際税務
- 種別 レポート