相続に強い税理士の選び方とは?相談するメリットや選び方の注意点
相続に強い税理士の選び方とは?相談するメリットや選び方の注意点
解説:日本経営ウイル税理士法人/税理士 小林 幸生
相続について税理士に相談は必要か
相続税の申告では、財産の相続を受けた方(以下「相続人」といいます。)から「税理士に頼んだ方が良いのですか?」という質問を受けます。
結論から申しますと、相続は余り経験することのない出来事だけに不安なことも多いので、相続について税理士に相談する方が安心です。
税理士に相談することで安心感が得られますが、他にも相続について税理士に相談するメリットがあります。
そこで、今回は、相続について税理士に相談するメリット、税理士の選び方や注意点についてご紹介します。
相続税の申告は税理士に依頼
相続税の申告は、相続があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告や納税を行わなければなりません。
もし、財産の申告漏れや申告内容に不備があるような場合には、かなりの確率で税務署から是正を求められ、加算税、延滞税といった余分な税負担が生じる可能性があります。
他方、本来であれば税負担を軽減できるような場合であっても、税法不知のため高い相続税額で申告をしてしまうというケースもあります。
そのようなことにならないように、相続税の申告を行う場合には、可能であれば複数の税理士に相談した上で、より安心感が得られる税理士に依頼しましょう。
相談するメリット
相続について税理士へ相談することで、次のようなメリットがあります。
相続財産について、適正な評価(課税価格の算出)ができる
相続税の対象になる財産には、現金や預貯金だけでなく、所有していた土地や建物なども含まれます。
現金や預貯金であればどのくらいの価値のものか分かりやすいですが、土地や建物の場合はそうはいきません。
国税庁が公表している「相続税の申告事績の概要(令和元年分)」によれば、相続税の対象となった財産のうち概ね4割が土地や建物となっていますので、土地や建物の評価額がいくらかになるかよって相続税額が大きく変動します。
したがって、相続税の取り扱いに詳しい税理士に依頼し、相続財産について適正な評価を行ってもらうことは非常に有益です。
相続財産に該当するものを明確にできる
相続税の申告では、亡くなられた方(以下「被相続人」といいます。)名義の財産だけでなく、名義の如何にかかわらず被相続人に帰属(実質的に所有)するすべての財産が課税の対象となります。
そのため、被相続人名義の通帳や関係書類を確認しただけでは何が相続財産になるかなど特定することができません。
この場合、財産を特定するためのノウハウを持った税理士に依頼することで、相続財産の申告漏れリスクを軽減することができます。
時間を節約できる
税理士に頼むと、それなりにお金がかかります。
そのため、相続人が、ご自身で申告書を作成し、申告することも可能です。
しかし、相続人の確定、相続財産の確定、相続財産の評価などのためさまざまな書類を取り寄せたり、相続税の申告関係書類を作成したりしなければなりません。
以前、申告書の作成に取り組まれた方からお話をお伺いする機会がありました。
思っていた以上にやるべきことが沢山あって、想定以上に時間がかかり大変だったということでした。
その点、税理士に依頼すれば、最小限の時間で申告書を作成することができますので、時間的な拘束を回避することができます。
相続に強い税理士の選び方
それでは、どのような税理士に依頼するべきでしょうか。
最も重要なことは、実際に会って、話をして、あなたが信頼できると思う税理士に依頼することです。また、相続に強い税理士に依頼することも重要です。
そこで、相続に強い税理士の選び方をご紹介します。
相続税申告の実績が豊富な税理士
相続税の負担は大きいですから、誤りのない適正な申告を行う必要があります。
そのため、相続税の申告実績が豊富な税理士に依頼することをお薦めします。
なお、相続税の申告実績が豊富かどうか判断するためのポイントとして、相続財産を特定するための基準や確認方法、税務調査を受けない申告をするためにあらかじめ留意しておくべきポイントなどを質問してみては如何でしょうか。
申告実績が豊富な税理士であれば、丁寧に説明してもらえます。
次の相続のために提案を行ってくれる税理士
父母のいずれかが亡くなる場合の相続を、一次相続といいます。
その後、遺された父又は母が亡くなる場合の相続を二次相続といいます。
相続では、この一次相続と二次相続の相続税額を考慮しながら、被相続人や相続人の意向を踏まえた想いや資産の承継を実現しなければなりません。
そのため、被相続人や相続人の意向を踏まえ、想いや資産の承継が実現できるような具体的な提案を行ってくれる税理士を選ぶことをお薦めします。
以上が、相続に強い税理士の選び方でした。
選ぶ際の注意点
次に、税理士を選ぶ際の注意点についてご紹介します。
経験豊富な税理士か
相続は、相続税を計算して、申告し、税務調査がなければそれで良いなどといった単純なものではありません。
相続人には、大切な家族があり、これから歩んでいくべき人生があります。
また、それぞれ大切に想うものや価値観の違いもあるわけですから、それを踏まえ何に気を付け、将来、どのような問題が想定されるかなどあらかじめ検討しておくことは重要です。
そのような検討項目は、書籍から得た知識だけで説明できるものではありません。さまざまな経験に基づき、経験した者にしか説明出来ないこともあると思います。
そういった意味で、経験が豊富な税理士に依頼することは重要です。
相続税以外の知見があるか
相続税の実績が豊富という観点から、相続税の申告に特化した税理士が良いという意見があります。私も、その意見には賛成ですし、専門的な知識を持った税理士を選ぶことは重要だと思います。
ただし、相続により事業を引き継ぐ方もいれば、収益不動産を引き継ぐ方もいます。
そのようなケースでは、相続税の観点だけで対応し、その後の事業に支障が生じてしまったという話も聞いたことがあります。
安心できる相続を実現するためには、ケースによっては、相続税は当然の知識として、相続税以外の知見を持った税理士を選ぶことも重要です。
税理士資格を持つスタッフが多数いるか
相続税申告は、担当する税理士が責任をもって対応すべきものです。
しかし、担当税理士が対応できなくなるような問題が起こらないとも限りません。
そのような場合でも、申告まできちんと対応してもらえるように、税理士が複数いる事務所(税理士法人)の方が安心です。
また、「三人寄れば文殊の知恵」といいますが、可能であれば複数の税理士にチームで対応してもらえる事務所(税理士法人)の方がより安心です。
そのため、税理士資格を持つスタッフが多数いる事務所(税理士法人)かどうかは非常に重要です。
報酬や費用が適正、かつ明確か
相続税の申告報酬は、遺産総額の概ね1%程度といわれており、決して安い金額ではありません。
ですから、あらかじめ報酬額が明確になっているか否かは非常に重要です。
報酬額の内訳をきちんと示し、説明してもらえる税理士に依頼するようにしましょう。
アフターフォローは万全か
国税庁が公表している「相続税の調査等の状況(令和元事務年度)」によれば相続税申告の約1割(注)に対し実地調査が行われています。
書面添付制度を利用した申告を行うことで、その割合は軽減できると考えますが、それでも実地調査の可能性を零にすることは出来ません。
せっかく税理士に依頼しているのですから実地調査は回避したいところですが、仮に実地調査を受けたとしても適切に対応してもらえるかどうかは重要なポイントです。
相続税の税務調査に対する経験をどの程度有しているか、どのような体制で臨んでもらえるかということを事前に確認しておくことも必要ではないでしょうか。
注)平成30年度の申告者に対し、令和元年度に実地調査が実施されたという仮定で計算しています。
相続について税理士に相談するタイミング
税理士に相談するタイミングは、相続が開始した場合、相続開始から2ヶ月以内に税理士に相談することをお薦めします。
なぜなら、相続財産の中に借入金などの負の財産があるような場合には、家庭裁判所に対し、相続放棄や限定承認の申述を、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に行わなくてはならないため、その前に相続財産の概要を把握しておく必要があるからです。
なお、相続税の申告相談に限れば2ヶ月を超えてからでも可能ですが、相続財産の確認や評価にはそれなりに時間を要しますので、出来るだけ早く税理士に相談するようにしましょう。
また、相続開始後に慌てなくても良いように、あらかじめ相続対策を講じておくことも一考です。
相続対策としては、具体的に遺言書の作成や家族信託契約の締結などが考えられます。
遺言や家族信託などといった対策を検討することで、セカンドライフや相続について家族と真剣に話し合える良い機会にもなりますので、ぜひ検討してみてください。
日本経営グループの強み
日本経営ウィル税理士法人は、創業から50年を超える歴史を持ち、これまで多くのお客様と共に、その二世代、三世代に亘る相続・事業承継への対応や、その家業・事業の永続発展を共に追及してまいりました。
国内有数のコンサルティンググループ「日本経営グループ」のメンバーファームとして、グループ内及び提携先の各士業と連携してワンストップサービスを提供しています。
特に、相続税申告・事業承継や相続対策について、長期的なタックスプランニングや税務提案を行えるよう、相続税のみに着目するのではなく、法人税、所得税、消費税その他各税目を網羅した提案を行うよう心掛けています。
また、税務調査を受けないように高品質の申告を目指すのはもちろんのこと、仮に税務調査を受けたとしても、豊富な経験を持つ税理士が、その不安を解消すべく、最適な対応策を検討し、迅速な終結を目指します。
初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
レポートの執筆者
小林 幸生(こばやし さちお)
日本経営ウィル税理士法人 税理士
1990年 国税局入局 国税庁、国税局、税務署勤務
2019年 税理士登録
2019年 日本経営ウィル税理士法人 入社
現在 日本経営ウィル税理士法人 大阪梅田事務所勤務
税務署にて、資産課税部門で統括官等を経験。国税局にて、資産課税課で税務調査、税務調査の指導及び税務調査に関する法令審理事務に従事。
国税庁にて、資産課税課で相続税に関する通達作成、審理、公益法人等に対する寄附に係る審理事務に従事。
相続税などの財産に関する税金について、幅広い知識と実務的な判断の経験を持つ。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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