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時間と費用を抑えたデューデリジェンスで友好的なM&Aを実現するには?

時間と費用を抑えたデューデリジェンスで友好的なM&Aを実現するには?

解説:日本経営ウィル税理士法人
税理士 近藤 文哉

コロナ禍における中小企業において、廃業や事業転換を余儀なくされる会社がある一方、会社の価値を見込んで買収を検討している会社も多くあります。

中小企業の買収は、M&Aや第三者承継、事業引継ぎなど様々な表現が使われます。M&Aのプロセスの一つに、買収の対象となる企業の調査活動、いわゆるデューデリジェンスがあります。

今回は、中小企業のM&Aにおいて企業の買収を検討している会社が、時間と費用を抑えてデューデリジェンスを実施する方法を解説いたします。  

デューデリジェンスの種類と間違った相談相手

デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスの種類には、財務税務、法務、ビジネス、人事労務、不動産、IT、知的財産などがあり、それぞれ得意とする専門家が違います。

また、企業買収目的や事業再生目的など、その目的によってもデューデリジェンスの内容は異なります。

税理士と公認会計士の専門分野

企業買収のデューデジェンスを行う際に、依頼者(買い手)によくある間違いが、身近にいる税理士や公認会計士に財務税務デューデリジェンスを安易に依頼してしまうことです。

税理士は税のプロですが、必ずしも企業買収のプロであるとは言えません。なぜなら、顧問業務が基本となるため、買収業務を専門的に取り扱う時間がないためです。また、企業買収できるほどの規模の顧客も決して多くありません。

公認会計士については、主に上場会社の財務諸表監査を得意としています。これは会計基準に適合した財務諸表を作成しているかの確認を行うもので、企業買収の財務デューデリジェンスとは根本的に異なるものです。

中小企業におけるM&Aによくある3つの特徴

中小企業のM&Aによくある3つの特徴をご紹介します。

① 名義株が多い

多くの中小企業では、株主と経営者が一致しています。

株主の中には社長だけではなく、配偶者や子供、兄弟など、何らかの理由で株式を分散しているケースがあります。その株主の中には、自分が株主であることすら知らないなど、名義上の所有者と実際の所有者とが違う、いわゆる名義株になっているケースが多くあります。

② M&Aを担う者が社内にいない

上場企業のようにM&Aの専門部署がないため、オーナーもしくは少数の経営陣のみでM&Aを判断していくことになります。取引規模が大きくないため、アドバイザーを登用しなくてよいという考えです。

③ 買収コストをかけられない

事業を拡大したいけれども、M&Aに費用をかけられない(かけたくない)という考えです。

重要なデューデリジェンスのポイント

次に、中小企業のM&Aのデューデリジェンスのチェックポイントをお伝えします。

「真の株主から株式を購入できる」か

中小企業は、原始定款から現在までの株主の移動を議事録で確認することが困難です。
株券発行法人で実際株券を発行している場合は、発行済株数全部を確認しないといけません。

「簿外負債がある」か

簿外負債の把握は、議事録や契約書を確認するだけでは困難です。ポイントとしては、経営者へのヒアリングとともに、契約書で他者の保証になっているかどうかを確認します。

さらに、未払残業代の請求がされるのか経営者へのヒアリングとともにタイムカード等で確認します。ポイントとして、経営者へのヒアリングがあるか否かで後々の表明保障に関わってきます。

「私物利用していない」か

現存備品の確認を行い、消耗品費などで過去に費用化していないか、会社で利用しているパソコンは誰の所有かなどを確認します。

「ビジネス上の不良在庫がない」か

税務上の不良在庫の確認は無意味です。実際販売できるかどうかの確認が必要です。特に季節商品、流行(デザイン性が求められるもの)に大きく影響されるものは、購入側の営業担当に確認させる必要があります。

「ビジネス上の不良債権・債務がない」か

税務上の貸倒損失の適否は無意味です。回収履歴を確認する必要があります。これは、帳簿上では現れない部分も多くあります。

「買収後に欠損金の引継ぎ」が可能か

ここは税理士の専門領域です。買収後の資金繰りに大きく関わるため、慎重に判断するよう依頼すべき箇所となります。

時間と費用を抑えて友好的にM&Aを進める

中小企業のM&Aの本質的な目的

ポイントを理解しない指摘だらけの財務デューデリジェンスでは、売り手側も買い手側もどちらも気持ちのよいものではありません。

中小企業のM&Aの本質的な目的は、1社で出来なかったことを2社ですることで会社価値をさらに高めることです。敵対的にM&Aを行ったとしたら、結果的に売り手の企業価値を毀損してしまうことにも繋がります。

もちろん、交渉事なので、売り手と買い手がそれぞれの意見をぶつけ合うことは必要です。しかし、それぞれが持つ企業の強み弱みを理解し、お互いが補強しあう関係を見出すことができなければ、最終契約というスタートラインに立つことはできません。

売り手の粗を探して、むやみやたらに買収価格に反映させようとすると、M&Aは必ず破談します。破談するM&Aに時間と費用をかけるのはもったいない話でしょう。

専門家の見極め方

時間と費用を抑え友好的にM&Aを進める財務デューデリジェンスをするためには、全てをみる必要はありません。

専門家によるヒアリングや初期段階の財務情報により、どのようなリスクがどの程度あるか大局的に把握し、ポイントに絞って調査を依頼すれば費用も抑えられます。しかし、丸投げで依頼すると、不要な調査事項を増やされて、多額の費用が掛かってしまうこともあり得ます。初期段階で、ポイントを理解した業務受託をしてくれる専門家であるかを見極めることが重要です。

M&Aでデューデリジェンスを行う際は、ぜひそのような支援ができる専門家であるかを確認して、ご相談ください。

レポートの執筆者

近藤 文哉(こんどう ふみや)
日本経営ウィル税理士法人
税理士

2011年入社後、中業企業の事業承継、M&A、組織再編、資産家の相続対策、節税提案を中心に行っている。各団体でのセミナーにおいては、ポジティブで明快な解説に定評がある。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業・国際税務
    相続・オーナー
  • 種別 レポート

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