令和3年度税制改正大綱(速報)/個人所得・資産課税
2020年12月10日、自由民主党・公明党より「令和3年度税制改正大綱」が公開されました。うち個人所得・資産課税の主要論点について、速報として概要をお伝えします。
解説:日本経営ウイル税理士法人
税理士 佐々木義広・水野知子
贈与税
住宅取得等資金の贈与
贈与税の非課税限度額の引き上げ
- 父母・祖父母などから資金提供を受けて住宅を新築等した場合に、条件を満たせば贈与税が一定額まで非課税になりますが、令和3年4月1日から12月31日の契約についての非課税限度額が引き上げられます。
契約日 | 一般住宅 | 省エネ・バリアフリー住宅 |
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令和2年4月~3月 | 1000万円 | 1500万円 |
令和3年4月~12月 | 700万円→1000万円 | 1200万円→1500万円 |
消費税率10%の場合
- 適用を受ける住宅には、床面積が50㎡~240㎡という条件がありますが、贈与を受けた人のその年の所得金額が1,000万円以下である場合には、床面積40㎡から適用できます(相続時精算課税制度の床面積も同様)。
- 令和3年1月1日以後の贈与について適用されます。
教育資金贈与
途中で相続が発生した場合の相続税課税の適正化
- 教育資金贈与とは、30歳までの子・孫等に、父母・祖父母等が信託によって教育資金を一括贈与することです。子や孫1人あたり1,500万円まで非課税となります。金融機関に資金を預けておいて、教育資金を申請して引き出して一定の期間内に教育費にあてていきます。
- これについて、その期間が終わるまでに祖父母等が亡くなった場合には、学校に通っているなどの場合を除いて、使わなかった残額を相続したとみなして相続税が課税されます。この相続税についての改正が2点あります。
- 1点目は、この相続税課税は、贈与から3年以内に亡くなった場合のみを対象としていましたが、何年前の贈与であっても使わなかった残額が相続税の対象となりました。
- 2点目は、亡くなった人の子以外が相続したとされる場合には、相続税の2割加算の対象となることになりました。
- 令和3年4月1日以後に支払われる教育資金から適用されます。
結婚・子育て資金贈与
途中で相続が発生した場合の相続税課税の適正化と、受贈者の年齢の条件緩和
- 結婚・子育て資金を父母や祖父母などから贈与され金融機関に信託等をした場合には1,000万円までは贈与税が非課税になります。
- この場合にも、資金管理契約の期間中に祖父母等が亡くなった時には、残額を相続したものとみなして相続税が課税されますが、これについても、教育資金贈与と同様に、亡くなった人の子以外が相続したとされる場合には、相続税の2割加算の対象となることになりました。
- また、贈与を受ける人の年齢は、これまで20~50歳でしたが、18歳以上になります。
- 令和3年4月1日以後に支払われる結婚・子育て資金から適用されます。
所得税
住宅ローン控除
10年間ではなく13年間の適用を延長
- 住宅ローンの残額の1%所得税が安くなる住宅ローン控除は、10年間の適用が原則ですが、消費税率アップでの需要の減少を防ぐため13年間の控除ができる特例がありました。この特例の適用が入居日や契約日の条件を満たす場合に延長されます。
入居 | 令和4年12月31日まで |
契約 | ・新築の場合、令和2年10月から令和3年9月末まで ・建売や増改築の場合、令和2年12月から令和3年11月末まで |
- さらに、延長部分について床面積40~50㎡の住宅も対象となります。
- ただし、1%を下回る借入金利で住宅ローンを借り入れているケースが多く、支払った利息額よりも住宅ローン控除額が大きくなることもあり、この点についても令和4年度税制改正で見直されます。
退職所得課税
勤続年数が短い退職金の課税強化
- 退職金(特定役員退職手当は除く)については退職所得の2分の1が課税対象となりますが、勤続年数が5年以下の場合には、300万円を超える退職所得については、2分の1しないこととなります(勤続年数5年以下の役員等の場合には、もともと2分の1倍されません)。
- 令和4年分の所得から適用されます。
セルフメディケーション税制
対象医薬品の拡充
- 対象である医薬品の購入額が年間12,000円を超える金額(上限あり)を所得から控除されるセルフメディケーション税制は、期間延長され、対象となる医薬品も効果をふまえて見直されます。
その他
土地の固定資産税
負担軽減
- 令和3年度は、税額が前年より増える土地でも、前年の税額に据え置かれます。また令和5年度まで、土地の評価の下落修正や条例による減額が行われます。
社会医療法人制度
認定要件見直し後も引き続き非課税
- 社会医療法人とは、公益性の高い医療法人として都道府県知事の認定を受けた医療法人であり、法人税等は非課税とされています。この認定要件について見直しが行われますが、見直し後の社会医療法人への課税を引き続き非課税とします。
解説:日本経営ウィル税理士法人 佐々木義広(税理士)・水野知子(税理士)
本速報は「令和3年度税制改正の大綱」の主要項目をピックアップしたものであり、法案成立前の内容です。また、内容をおおまかに解説したものであり、実行にあたっては状況に応じて個別具体的に検討する必要がありますので、本資料の内容を最終判断材料とはしないでください。本資料をもとに意思決定され、直接または間接に損害が発生したとしても、一切の責任は負いかねます。具体的に検討される場合には、税理士等の専門家にご相談ください。
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