診療所の経営・相続Q&A「組織としての一体感」
Q:事業拡大に伴い、スタッフ数も増えてきました。クリニックを良くしていきたい、成長していきたいという想いは、スタッフも分かってくれているとは思います。しかし「共感」のような一体感までは、なかなか感じられません。
A:自分たちのチカラは何なのか。どのようなアクションプランでいくのか。共有すべきは、このことかもしれません。
具体的な目標の設定
まず、先生の想いがスタッフさんに伝わっていると思えること自体、素晴らしいことです。伝えても伝えても伝わらない、と思われている先生方は少なくありませんし、逆に「先生はあまり語られないので…」と思われているスタッフさんもあるかもしれません。
多くの先生方とお会いする中で私が感じることは、まず強烈な願望・想いが必要だということです。しかし、それだけで物事が勝手に実現することはなく、それをいかに具体的な目標にするか。ここに違いがあるのだと思います。
先生が「クリニックを良くしたい」と言われたとき、「良くする」とはどういうことでしょうか? 例えば「患者満足度を高めること」だったとしましょう。では患者満足度を高めるために何をしたいのでしょうか? 駐車場や診察時間、スタッフさんの接遇、快適な待ち時間、診察スタイル…さまざまな改善点が挙がってくるのだと思います。
しかし、現実にはどうでしょう。例えばスタッフさんは、「そんなにいろいろできない。それより、患者さんから待ち時間でいつもクレームを受けているのに、先生は気にもしてくれない」と思っているかもしれません。
自分たちの組織のチカラの源とは何か
患者さんからクレームがほとんど先生の耳に届かなければ、確かに気にしないかもしれません。しかし毎日クレームが出て、スタッフからも泣いて訴えられたりしたら、先生は最優先で解決するはずです。
つまり、日々のオペレーションでどのような困難に直面しているのかによって、優先順位が変わるという現実があります。強烈な願望や想い(重要性)も大切ですが、現実には、直面している困難(緊急性)のほうに、人や組織は優先順位を置くのかもしれません。
スタッフから泣いて訴えられて、「待ち時間の短縮」を緊急に解決した先生でしたが、自分たちの取り組みで待ち時間が実際に短縮されることを実感したスタッフさんたちは、やがて今月の平均待ち時間が何分だったか、とても気になるようになります。思っていたよりも短縮できると、先生から「凄いな!」と誉められます。先生はこのように、スタッフさん一人ひとりに活躍してほしいと強く想っていたのです。それが「先生の想い」だったのです。誉められたスタッフさんは、ますます工夫改善するようになります。すでに立派な数値目標になっています。「緊急」であった課題が、チームにとって「重要」な課題になっているのです。
このように、「強烈な想い」と「目の前の困難」は組織のチカラの両輪です。自分たちの組織のチカラの源は何なのか。そして「そのためにどのようなアクションプランでいくのか」。このことこそ共有すべきで、ここに一人ひとりが自発的にこだわり(数値目標)を持てるような積み重ねをすることで、初めて組織に一体感が生まれてくるのだと思います。
(2018年7月5日 医療事業部 チームリーダー 八百健史)
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