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診療所の経営・相続Q&A「価格表示の方式」

0001Q:当院は消費税免税事業者ですが、消費税増税に伴い、サプリメントの販売や自費診療について税抜表示とするか税込み表示とするか、どちらがよいか悩んでいます。


A:免税事業者は別途消費税相当額を受け取るといったことは予定されていませんが、仕入れに係る消費税相当額を織り込んだ上で、『消費者の支払うべき価格』を表示することが適正な表示です。

 

1.消費税増税:令和1年(2019年)10月1日から

令和1年(2019年)10月1日から、消費税および地方消費税の税率が8%から10%へ引き上げられ、この税率引上げと同時に消費税の軽減税率制度が実施されます。

軽減税率の実施に伴い、消費税の税率は標準税率10%と、「酒類・外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)」を対象に軽減税率8%が適用されることになり、複数税率制度がスタートすることになります。

 

2.「適格請求書等保存方式」(インボイス方式):令和5(2023)年10月1日から

さらに、令和5(2023)年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式として「適格請求書等保存方式」(インボイス方式)が導入されます。

適格請求書等保存方式の下では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」等の保存が仕入税額控除の要件となります。

「適格請求書」には、区分記載請求書等の記載事項のほか、適格請求書発行者の登録番号や適用税率、消費税額等を記載することが義務付けられています。

即ち現行法では、免税事業者から仕入れた場合でも、その支払った対価の額は消費税込みの金額とされ、仕入税額控除が可能ですが、そうではなくなるということです。(免税事業者からの仕入税額控除の廃止については経過措置があります。)

免税事業者からの仕入れを行う事業者にとっては、自由競争の観点から、同じ対価で、仕入税額控除ができる場合とできない場合があるのであれば、仕入税額控除をできる事業者を選択する可能性が高くなります。

そこで免税事業者は事業者間の取引から排除されない為にも課税事業者となったうえで登録事業者となり「適格請求書」を発行できるようになるということも考えられます。

 

3.消費者に対する価格表示の方式:総額表示方式:平成16年4月から

平成16年4月から、消費者に対する「値札」や「広告」などにおいて価格を表示する場合には、いくら払えばいいかが簡単にわかるように消費税相当額(含む地方消費税相当額。以下同じ)を含んだ支払総額の表示を義務付ける「総額表示方式」が実施されています。

尚、平成25年10月1日から令和3年3月31日までの間、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(平成25年法律第41号)により、一定の場合には総額表示を要しないこととされています。

さて、医療機関等が提供する社会保険診療や介護保険サービス等は、社会政策的な配慮から消費税においては「非課税取引」とされているため、多くのクリニックが消費税の免税事業者となっています。

にもかかわらず、自費診療あるいは小額の物品販売等の場合には消費税を意識して『税込み、税抜き』として金額が記載された領収書あるいは価格表を発行しておられるクリニックが多いのではないでしょうか?

しかし、免税事業者は、取引に課される消費税がありませんので、これまでも「税込み、税抜価格」を表示して別途消費税相当額を受け取るといったことは消費税の仕組み上、予定されていません。

したがって、免税事業者における価格表示は、仕入れに係る消費税相当額を織り込んだ上で『消費者の支払うべき価格』を表示することが適正な表示です。

これを機に貴クリニックの領収書や価格表についても、見直しをしていただければと思います。詳しくは担当者までご相談ください。

 

(2019年09月10日 税務審理部 次長 荻野眞由美)

 

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  • 事業形態 医療・介護
  • 種別 レポート

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