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診療所の経営・相続Q&A「働き方改革への取り組み方は?」

Q:「働き方改革」は、国策のために事業者にコストを負担させるための仕掛けのように思います。クリニックの弱小チームがこれに負けずに、経営にとってもプラスになるように取り組むためには、問題をどのように捉えたらよいでしょうか。


A:どのような事業展開をするにしても、志を同じくする仲間づくりと診察・運営体制が要になるでしょう。

組織をどうモデルチェンジするか

「働き方改革」への対応の難しさは、ご質問のとおり「問題の本質をどう捉えるか」という点です。純粋に法令遵守と捉えると、確かにコストアップにしか見えないかもしれません。ただ、働き方改革は、院長にだけ背負わされた十字架ではないはずです。職員と一緒にどのように取り組んでいけるかという視点で、まずは全体像を把握する必要があるでしょう。

一通りガイドラインなどに目を通してみても、明確な答えは出ないかもしれません。そもそも、何をもって働きがいと感じるのか。責任ある仕事を任されることに、やりがいを感じる方もあれば、家庭との両立を優先される方もあります。ガイドラインはあくまでもガイドラインなので、組織をどうモデルチェンジするかは、クリニックごとに異なります。

特に専門家をして「非常に厄介」と言わしめているのが「同一労働同一賃金」です。これまで院長は肌感覚で、「Aさんは賃金よりもキャリア・成長実感だな」「Bさんは賃金よりも家庭優先だな」「Cさんはまずもって賃金だな」などと、一人ひとり、違う役割を与えてこられたのではないでしょうか。そのような一人ひとり異なる役割分担は、今後ももちろん重要だと思いますが、同時に、この賃金の違いは何なのか、役割はどう違うのか、習熟度はどう違うのか、責任ややっていることはどう違うのか。ある意味、職員にとっても厳しく不安のある内容だと言えます。適用されるまでまだ期間はありますが、組織のマネジメントそのものに影響するテーマですので、助走期間を設けて見直し整理していく必要がありそうです。

「働き方改革」は、何も答えが出されていない改革

ところで、世の中の理解としては、働き方改革によって人件費がアップするのであれば、それをまかなうだけの生産性改革を現場でやっていくという理解です。ですので、ここにどうリーダーシップを発揮していくかということも、コストアップ以上に重要なテーマだと思います。院長がトップダウンで動かしたほうが成果が出るのか。現場で自発的に多くのアイデアが出し合える安心感があるか。出されたアイデアに対して、やってみましょうと盛り上がる組織か・・・。

「働き方改革」は、答えが出されているようで、実は何も答えが出されていない改革だと、私は思います。ですので、同じテーマに向かってチームでどう対応するのか。リーダーが組織のビジョンをどう描くのか。それによって成否が分かれる。そう思うのですが、いかがでしょうか。

(2019年02月15日 医療事業部 部長 安里長綱)

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  • 事業形態 医療・介護
  • 種別 レポート

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