開業医の税金Q&A「資格取得のための学資金」

0001Q:新しくスタッフを採用するのではなく、いまいるスタッフのスキルアップに力を入れようと考えています。資格取得のために専門学校の費用も負担しようと思うのですが、経費にして差し支えないでしょうか。


 

A:職員が働きながら、医療関係の資格が取得できる専門学校に通学する場合、その費用に対してどのような課税がされるかを整理しました。(ただし税務判断は具体的状況により変わる場合がありますので、実際の判断は専門家に個別具体的にご相談ください。)

 

クリニックが負担する場合

職員が専門学校に通う費用を診療所が負担した場合、診療所の必要経費となります。しかし、その通学費用が診療所の必要性から生じたのか、職員の必要性から生じたのかによって、費目が変わってきます。

取扱い
  • 診療所が負担した費用は、給与として取り扱われる場合と、給与とならない場合があります。給与とならない場合には従業員側では非課税の扱いとなり、診療所側では単に研修費等の支払いをしただけの取扱いになります。
  • 給与の取扱いとなる場合とは、その通学費用が診療所の必要性ではなく職員の必要性から生じた費用と考えられる場合です。診療所の必要性から生じた費用である場合には、非課税と判断されることになります。なお、給与として取り扱われる場合は診療所が源泉徴収をしなくてはなりません。
非課税の要件
  • 所得税の通達に次の定めがあります。通常、上記の非課税の判断はこの通達に基づいて判断します。「使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人にその役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくてもよい。」 

 

職員が自分で支出する場合

職員が自分で授業料等を負担した場合には、「特定支出控除」の制度の適用をうけることが出来るケースがあります。特定支出控除とは、給与所得者の支出のうち、「特定支出」として定められている一定の支出の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える場合には、その超える部分の金額を給与所得控除額に加算し、給与所得の計算上マイナスすることが出来る制度です。

特定支出の範囲には、「職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)」や「職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)」等があります。今回のテーマである学資金は特定支出に該当します。

なお、給与所得控除額の2分の1とはいくら位の金額なのかが気になるところですが、給与収入が400万円の場合には67万円、同じく500万円の場合には77万円となります。また、特定支出には他にも図書費、交際費、衣服費、研修費などのうち一定のものも該当するのですが、複数の特定支出が有る場合には、その合計額をもとに計算することとなります。

 

(2017年7月10日 税理士法人 日本経営 代表社員税理士 吉本英明) 

 

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本稿はご回答時点における一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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