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診療所の経営・相続Q&A「親子間承継による事業承継」

0001Q:現在、私が経営している診療所をそろそろ息子に譲りたいと考えています。事業承継をスムーズに進める為には、どのような点に注意すべきでしょうか。


A:どんな思いで診療してきたのか、どんな思いで承継しようと決断されたのか、そういったことは、お互いに面と向かって話されないことのほうが多いのではないでしょうか。

面と向かって話さなくても、それは言わなくても分かる

ご開業されたとき、先生は一から立地を選定し、内装や医療機器・資金繰りを考え、内覧会を開催し、診察スタイルや患者さんへの接し方・スタッフの採用、ときに奥様やスタッフのご意見も取り入れて・・・毎日毎日、一日の仕事をなんとか終えて、また翌日も全身全霊で患者さんに向き合って、そんなことを何十年も繰り返して、今日まで診療所を経営されてきたことと思います。一つひとつのことに意味があり、思い入れがあり、そのような事業を譲るということは、大変なご決心だと思います。

一方、ご子息はご子息なりに思いがあって、事業を承継しようとご決断されたことと思います。

どんな思いで診療してきたのか、どんな思いで承継しようと決断されたのか、そういったことは、お互いに面と向かって話されないことのほうが多いのではないでしょうか。それは、「言わなくても分かる」ということだと私は思います。

多少の衝突があっても、それは伝えたいことがあるから

しかし、そのような思いがお互いの中にいくらあっても、現実に引継ぎを進めていくと、考え方の違いといったものが前面に出てくるものです。まず、診察スタイルが全く違うでしょう。患者さんへの接し方、スタッフへの対応、お金の使い方、内装や医療機器のリニューアル・・・どれを取っても、ことごとく考え方が違うのが普通です。それは、過ごしてきた時間が違い、受けてきた教育が違うから仕方ないことです。

衝突を避けるためには、一つには100%息子さんに任されることです。しかし、それでは患者さんもスタッフも戸惑う。スムーズに承継したいと言われるのだとすれば、それは、多少の衝突があっても「伝えたいことがある」ということが、本音なのではないでしょうか。

ごく限られた期間でも、それはかけがえのない貴重な時間

私が担当したあるドクターは、承継前にあたってしばらくの間、2診体制で診察をされました。考え方が全く違うシーンもないわけではなかったと、小耳には挟んでいます。しかし、純粋に先輩ドクター、後輩ドクターとして、お互いの診察には敬意を払われていた。これは、ドクターでない奥様には入る隙のない関係だったとお聞きしました。親子で診察された期間はごく限られていましたが、先生にとっても、息子さんにとっても、かけがえのない貴重な時間だったと思います。お互いに我慢もされて、決定的に揉めることもなく、患者さんの口コミが増えて、見事に承継をされました。先代の先生も素晴らしいですし、息子さんも素晴らしかったのだと思います。

親子間承継のポイントは、コミュニケーションです。それは言葉で簡単に伝えられるようなものではないでしょう。しかし、短い期間であっても親子で診察や運営を一緒にする中で、伝えるべきことは確実に伝わる。私は、先生からそのように教えていただいたのだと思っています。

(2018年2月10日 医療事業部 チームリーダー 森原寛之)

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  • 事業形態 医療・介護
  • 種別 レポート

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