診療所の経営・相続Q&A「権限委譲とリーダーシップ」

0001Q:分院開設に際し事務長を採用しました。しかし、現場をうまくコントロールできず、理事長である私が事務長の仕事をしている状況です。


 

A:事務長の能力がもともと期待水準に満たなかった、ということはあるかもしれません。しかし、ご本人の問題以上に環境の問題で力が発揮できないということのほうが、現実には多いのではないでしょうか。

 

権限委譲とリーダーシップをどう変えていけばよいか

採用したスタッフが思うように機能しないと、周りは本人の能力不足が原因だと考えてしまいがちです。実際、事務長の能力がもともと期待している水準に満たなかった、ということはあるかもしれません。しかし、ご本人の問題以上に環境の問題で力が発揮できないということのほうが、現実には多いのではないかと私は思います。

そもそも、看護師はじめ医療スタッフにとって、事務長は「何をしているのか分からない人」です。理事長にとっても、リーダーはあくまでも自分なのではないでしょうか。しかし、分院展開したり、事務長を雇ったり、組織化を進めていく中で、権限委譲とリーダーシップをどう変えていけばよいのか、多くの先生方が悩まれているのだと思います。

 

組織のコンフリクトを、いかにプラスに転換していくか

私は仕事がら、分院を展開されている理事長とお会いする機会が多いのですが、そのリーダーシップには感動することがあります。例えば、先輩のAさんが、なかなかものにならないと後輩のBさんを厳しく指導していたとします。すると理事長は、BさんがいかにAさんを尊敬して指導を自分のものにしようと努力しているか、Aさんに伝えるのです。組織には、必ずコンフリクトがあります。組織化したときにもリーダーシップを見事に発揮できる理事長は、そのような「トップの耳には入ってこないコンフリクト」があることを、知っているのだと思います。そして、そのようなコンフリクトは悪いことではなく、いかにプラスに転換していくかが重要だと、理解されているのだと思います。それが、組織化された中でのトップのリーダーシップなのではないでしょうか。

事務長についても、同様です。コンフリクトがあるのだと思います。しかし、それは事務長とスタッフの間の葛藤というよりも、理事長と事務長の間の葛藤なのではないでしょうか。周囲のスタッフには、そう見えているかもしれません。だから、事務長の指示を仰ぐのではなく、理事長の指示を仰いでしまう。

 

理事長の判断基準をいかに理解してもらうか

ですので、まず必要なことは、理事長はどこまでであれば事務長に任せることができるのかということだと思います。早く任せたいという思いがある一方、任せられない現実もあるのではないでしょうか。事務長の価値観や判断基準が、自分と大きくブレることはないだろうという思いがあって、初めて段階を踏んで委譲していけるのだと思います。

その意味では、最初から事務長が機能するということはないのかもしれません。理事長が事務長の仕事を兼任するという時期があってしかるべきだと思います。その間に、理事長の判断基準を事務長にいかに理解してもらうか。それが、次のステップの成否を分けるのではないでしょうか。

(2018年3月10日 医療事業部 課長 菅原剛) 

 

執筆者へのお問い合わせはこちらから 

 

本稿はご回答時点における一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

最近のレポート

2018.05.24
医療費適正化・介護給付適正化計画/NKニュースレター vol.39
2018.05.10
診療所の経営・相続Q&A「環境変化への対応」
2018.04.10
診療所の経営・相続Q&A「勤務環境と労働生産性」
2018.03.13
新認定医療法人制度を読み解く/NKニュースレター vol.38
2018.03.10
診療所の経営・相続Q&A「権限委譲とリーダーシップ」
2018.02.10
診療所の経営・相続Q&A「親子間承継による事業承継」
2018.01.10
診療所の経営・相続Q&A「リスクと意思決定」
2017.12.10
診療所の経営・相続Q&A「貯金する余裕がない」
2017.11.20
診療所の経営・相続Q&A「事業拡大の決断」
2017.10.28
2018年度診療報酬改定の最新動向/NKニュースレター vol.37
2017.10.20
診療所の経営・相続Q&A「院内ミーティング」
2017.09.20
診療所の経営・相続Q&A「診療所の承継、M&A」
2017.08.20
診療所の経営・相続Q&A「金利と借り換え」
2017.07.20
診療所の経営・相続Q&A「医療機器への再投資」
2017.07.15
骨太の方針2017 を読み解く!/NKニュースレター vol.36
2017.06.20
診療所の経営・相続Q&A「スタッフの定着」
2017.05.15
始動する地域医療連携推進法人/NKニュースレター vol.35
2017.03.15
平成30年、医療計画の見直しに向けて/NKニュースレター vol.34
2017.01.13
医師需給、偏在問題を考える/NKニュースレター vol.33
2016.09.15
医療事故調査制度/NKニュースレター vol.32
2016.06.15
2016年度診療報酬改定/NKニュースレター vol.31
2016.05.13
地域社会における医療 ・ 介護の実力/NKニュースレター vol.30
2016.02.15
健康経営を考える/NKニュースレター vol.29
2015.12.15
日本再興戦略を読み解く/NKニュースレター vol.28
2015.10.15
マイナンバーと医療・介護/NKニュースレター vol.27
2015.08.15
平成28 年度診療報酬改定を展望する/NKニュースレター vol.26
2015.06.15
地域医療構想と2025年の医療提供体制/NKニュースレター vol.25
2015.04.15
平成27年介護報酬改定を読み解く/NKニュースレター vol.24
2015.02.16
日本経営の人材育成/NKニュースレター vol.23
2014.12.15
地域包括ケアシステムを検証する/NKニュースレター vol.22

GROUP

日本経営グループトップ

©日本経営ウイル税理士法人