診療所の経営・相続Q&A「勤務環境と労働生産性」

0001Q:スタッフの募集が大変難しくなり、また、採用しても短期間で辞めていくスタッフが明らかに多くなっています。「働き方改革」の影響だと思うのですが、歯科診療所の勤務環境改善は、どのように進めていけばよいでしょうか。


 

A:業界を跨いで優秀な人材を確保していくためには、充分な処遇と働きやすい労働環境を整備していく必要があります。しかし、労働生産性が低いままでは、ただ人を増やしたり時給単価を上げるだけでは、利益を圧迫し、長続きしません。

 

勤務環境の改善には、労働生産性の改善が不可欠

労働力不足は医療機関にとっても、大変深刻な問題です。全産業で働き手が不足している中で、業界を跨いで優秀な人材を確保していくためには、従業員に対して充分な処遇と働きやすい労働環境を整備していく必要があります。

しかし、労働生産性が低いままでは、ただ人を増やしたり時給単価を上げるだけでは、利益を圧迫し、長続きしません。採用ができなければ、いまいるスタッフの負荷がますます大きくなり、さらに退職に拍車がかかり、悪循環に陥ってしまいます。つまり、勤務環境の改善を実現しようと思えば、労働生産性の改善が避けられないのです。

 

診療所は少人数だからこそ、属人性が強い

では、医療機関にとって、生産性の改善はどのように進めていけばよいでしょうか。大企業であれば、高価な機械を購入して自動化したり、費用をかけてデジタル化を進めることができるかもしれません。しかし、診療所ではそのような対策はなかなかできないものです。もっと日常の身近な改善で、生産性を改善していく必要があります。

生産性の改善とは、言い換えれば業務プロセスの再構築です。高収益を実現されている歯科診療所のオペレーションを拝見すると、なるほどと考えさせられることがあります。一般的に診療所では、それぞれの業務が専門化しています。特定の業務がその人にしか出来ない、いわゆる属人性が強い状態になっています。少人数だから業務が共有できているかというと、逆なのです。高収益の診療所ではここに着目し、日々の業務の見える化・マニュアル化(標準化)が行われています。

 

業務のバラツキは、診察をされている院長には分からない

日々の業務を棚卸ししてみると、手が回らないほど忙しい時間帯もあれば、診察が終わるまで何もできずに待機している時間帯があったりするものです。時間帯によって違うこともあれば、スタッフの役割・性格によってバラツキがあるというケースもあります。これらは、診察をされている院長には分からないものです。見える化して手順や役割を整理するだけでも、かなり無駄が省けるものです。

業務をマニュアル化するということは、ミスやヒヤリハットを防ぐことにも繋がります。ルールを細分化するということではなく、ミスの生じない業務フローにするのです。

 

重要なのは、従業員と一緒に改善活動を行っていくプロセス

しかし、高収益を実現されている先生方は、これらの見える化・マニュアル化を、単に効率化や生産性のためだけにされているのではないというのが、私の実感です。もっと重要なことは、従業員と一緒に改善活動を行っていくプロセスのほうにあります。生産性改善という同じテーマに取り組んで、コミュニケーションや考え方の共有を進めていく。それが一体感を育み、理念を共有できるチーム・組織づくりに繋がっています。

働き方改革のために、生産性改善は不可欠です。しかしそれは、まずチーム作り・組織づくりをどうするかということにかかっている。私はそのように、先生方から教えていただいているのだと思います。

(2018年4月10日 歯科事業部 副部長 金谷晃秀) 

 

執筆者へのお問い合わせはこちらから 

 

本稿はご回答時点における一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

最近のレポート

2018.10.10
民間活力も導入し新たな都市づくりを/NKニュースレター vol.41
2018.09.21
税理士の経営・財産・相続トピックス「内部留保を最大に」
2018.07.10
地域医療構想からみる介護医療院/NKニュースレター vol.40
2018.07.05
診療所の経営・相続Q&A「組織としての一体感」
2018.06.04
診療所の経営・相続Q&A「財産の整理と事業承継」
2018.05.24
医療費適正化・介護給付適正化計画/NKニュースレター vol.39
2018.05.10
診療所の経営・相続Q&A「環境変化への対応」
2018.04.10
診療所の経営・相続Q&A「勤務環境と労働生産性」
2018.03.13
新認定医療法人制度を読み解く/NKニュースレター vol.38
2018.03.10
診療所の経営・相続Q&A「権限委譲とリーダーシップ」
2018.02.10
診療所の経営・相続Q&A「親子間承継による事業承継」
2018.01.10
診療所の経営・相続Q&A「リスクと意思決定」
2017.12.10
診療所の経営・相続Q&A「貯金する余裕がない」
2017.11.20
診療所の経営・相続Q&A「事業拡大の決断」
2017.10.28
2018年度診療報酬改定の最新動向/NKニュースレター vol.37
2017.10.20
診療所の経営・相続Q&A「院内ミーティング」
2017.09.20
診療所の経営・相続Q&A「診療所の承継、M&A」
2017.08.20
診療所の経営・相続Q&A「金利と借り換え」
2017.07.20
診療所の経営・相続Q&A「医療機器への再投資」
2017.07.15
骨太の方針2017 を読み解く!/NKニュースレター vol.36
2017.06.20
診療所の経営・相続Q&A「スタッフの定着」
2017.05.15
始動する地域医療連携推進法人/NKニュースレター vol.35
2017.03.15
平成30年、医療計画の見直しに向けて/NKニュースレター vol.34
2017.01.13
医師需給、偏在問題を考える/NKニュースレター vol.33
2016.09.15
医療事故調査制度/NKニュースレター vol.32
2016.06.15
2016年度診療報酬改定/NKニュースレター vol.31
2016.05.13
地域社会における医療 ・ 介護の実力/NKニュースレター vol.30
2016.02.15
健康経営を考える/NKニュースレター vol.29
2015.12.15
日本再興戦略を読み解く/NKニュースレター vol.28
2015.10.15
マイナンバーと医療・介護/NKニュースレター vol.27

GROUP

日本経営グループトップ

©日本経営ウイル税理士法人