お役立ち情報

診療所の経営・相続Q&A「ライフプランと事業計画」

0001Q:先に開業した友人の話を聞いて、私はビックリしました。私よりも収入が少ないのに、車も買い替えず、贅沢もせず、毎期、かなりの利益を出して、多額の納税をしているのです。「そのほうが得だから」と彼は言うのですが、全く理解できません。


A:ジェットコースターのようなライフプランだからこそ、事業を永続させるという考え方が参考になるのでは。

経営のクセ

売上を上げることにかけては、右に出るものがいないほどの先生がおられるものです。売上はほどほどですが、信じられないほど利益を出されている先生もおられるものです。あるいは、同じ売上規模なのに、借入がなかなか減らない診療所もあれば、無借金でキャッシュが十分にある診療所もあるものです。同じように経営をされていても、先生が何を重視されているかによって、このようにはっきりと特徴が出てくるのだと、私はいつも思い知らされています。

例えばA先生。毎期増収している要因は、バイタリティやモチベーションにあります。最新の機器、ドクターやスタッフを揃えて、朝から晩までパワフルに診察されます。次にB先生。高い利益率の要因は、事業構造にあります。ギリギリのスタッフで回し、収支トントンの仕事は止めてしまいます。どうすれば限られた資源で利益が出せるか、オペレーションの最適化をいつも考えられています。最後にC先生。キャッシュが残る要因は、生活スタイルです。車も買い替えず、教育費もメリハリをつけて、派手な旅行や外食はほとんどされません。これはご夫婦での協力がなければ実現しません。このように、お金の使い方、事業のやり方は、先生が何に重きを置かれているかによって大きく左右されます。経営のクセと言ってもいいかもしれません。

企業価値を高め続けていくために

ところで、会計には「ゴーイングコンサーン」という考え方があります。「継続企業の前提」とも呼ばれるものです。診療所の場合はどうでしょうか。事業の永続性が問題になるケースは、ほとんどないでしょう。それよりも院長のライフプランによって、事業が大きく左右されます。資金のやりくりで苦しんだ創業期、少し落ち着いて、少しくらい贅沢してもいいのではと思われ始めた成長期、教育費もかかり、新しい機器への投資も必要になってくる安定期、そしてフェイドアウトしていく承継期…。診療所の先生方のライフプランは、ジェットコースターのようなライフプランです。だからこそ、逆に「事業を永続させる」という考え方が参考になるのだと、私は思うのです。

「事業を永続させる」とは、言い換えれば企業価値を高め続けていくということです。つまり、外に目を向ける必要があるのです。経営環境はじわじわと、確実に変化していますが、外の事には気づかないものです。ですから私たちは、外に関心を向け、変化していく必要がある。すでに決まっている未来(ライフプラン)の中で確実にキャッシュを備え、必要なときにそれを投資して、外で起こるまだ決まっていない未来(環境変化)を乗り越えていくということです。

しかし、冒頭申し上げたとおり、事業のやり方は経営の「クセ」によって大きく左右されています。事業は本来、「クセ」によって左右されるべきではありません。事業ステージによって使い分けるものです。なぜそれができないのかと言えば、ライフプランや事業計画が描けていないためです。ひとたび計画を描けば、人生でキャッシュを貯められる時期は今しかないと知って、愕然とされることもあります。

キャッシュを貯めるためには、税金を払って、いま目の前に貯めるか、適切な方法で将来に分散するかしか方法がありません。ご友人のドクターは、まさにそのことを伝えようとされているのではないでしょうか。

(2018年9月11日 医療事業部)

執筆者へのお問い合わせはこちらから

本稿はご回答時点における一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 医療・介護
  • 種別 レポート

関連する事例

贈与により娘名義の口座でも、妻の財産とされるのか?

  • 医療・介護

関連する事例一覧を見る

関連するお役立ち情報

診療所の経営・相続Q&A「いい人材を確保する」

  • 医療・介護

関連するお役立ち情報一覧を見る