病院経営・財務Q&A「医療法人会計基準による影響」

0001Q:当院は「医療法人会計基準」に準拠した会計処理を、現在行えていません。適用した場合、どのような影響が考えられるでしょうか。


 

A:医療法人の会計基準といえば、長い間、医療法人全体に強制的に適用されるような会計基準は存在せず、企業会計基準を参考としつつ、各医療法人の実態に合った「税務を重視する会計」が行われてきました。しかし、平成28年4月20日付けで、厚生労働省より新たに「医療法人会計基準」を定める省令が公布されました。

 

医療法人会計基準準拠の義務化

この「医療法人会計基準」は、全ての医療法人に強制適用されるものでしょうか。平成27年9月28日の医療法改正により、一定規模以上の社会医療法人(負債20億以上又は収益10億以上)及びそれ以外の医療法人(負債50億以上又は収益70億以上)については、平成29年4月2日以後開始する事業年度より、医療法人会計基準に準拠した計算書類の作成が義務付けられ、公認会計士による外部監査も義務付けられています。したがって、適用対象になっていない医療法人については、医療法人会計基準の適用が強制されるものではありませんが、対象法人の範囲については、今後、拡大していくことも考えられるため、医療法人会計基準の概要及び主な会計処理やその影響については、全ての医療法人が一定程度の理解をしておく必要があります。

 

医療法人会計基準準拠を適用した場合の影響

現在多くの医療法人で採用している「税務を重視した会計処理」と比較した場合、新たに対応が必要となる主な会計処理としては、①退職給付会計の適用、②固定資産の評価減、③リース会計、④税効果会計の適用、⑤事業損益の区分表示、⑥関係事業者との取引の開示などがあります。
このうち①②③⑥をピックアップし、会計処理とその影響についての一部を、簡単に説明します。

①退職給付会計
退職金規程のある法人については、原則、退職給付引当金の負債計上が必要。多額の負債計上が見込まれ影響が非常に大きく、また、退職債務の計算に困難な数理計算等を用いる必要がある(負債総額200億円未満の医療法人は簡便法の適用が可能)。

②固定資産の評価減
時価が著しく低くなった場合には、回復の見込があると認められる場合を除き、時価まで評価減を行う。多くの不動産を保有する場合、多額の損失が計上される可能性があります。

③リース会計
リース取引のうち自己の保有するものと同じ経済実態を持つものに対しては、固定資産を買ったものとみなして、リース資産及びリース債務を貸借対照表に計上する。資産・負債総額が多額になる可能性があるが、負債総額200億円未満の医療法人は簡便法の適用が可能。

⑥関係事業者との取引の開示
医療法人と密接な関係を有するMS法人を含む関係事業者との取引の透明化・適正化のため、原則として10百万円以上の取引を対象として、その取引状況に関する報告書の作成が必要となります。

 

他にも、賞与引当金や貸倒引当金など新たに計上が必要なものがある反面、一定規模未満の医療法人には簡便法の適用が認められたり、重要性に応じて計上の要否が判断されるものがあるほか、適用時の影響額の大きさを考慮して例外的な処理が認められているものもあります。将来を見据えて、スムーズな導入を行うために、主な会計処理の計上基準やその影響額について前倒しでシミュレーションを行い、事前準備をしておくことが必要かもしれません。

 

(2017年7月5日 日本経営ウイル税理士法人 公認会計士 近藤孝次) 

 

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