病院経営・財務Q&A「地域医療連携推進法人の設立」

0001Q:「地域医療連携推進法人制度」が施行され、相当数、設立を検討していたものの断念したケースもあるとも聞きます。設立を検討するにあたって、どのような点がポイントになるか、概要を教えてください。


 

A:地域医療連携推進法人制度が、平成29年4月2日から施行されています。地域医療推進法人制度は、「医療機関相互間の機能の分担及び業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための一つの選択肢として、地域 医療連携推進法人(仮称)の認定制度を創設する。これにより、競争よりも協調を進め、地域において質が高く効率的な 医療提供体制を確保する」という趣旨のもと、創設されました。 特徴は、ホールディングカンパニーと違い、非営利性を堅持しているという点です。

設立に当たって検討が必要な項目は、①参加法人と社員、②医療連携推進方針、③医療連携推進業務 などです。

 

参加法人と社員

「参加法人と社員」の検討において懸念されることは2つあります。一つが『議決権』、もう一つが『出資持分があるかないか』ということです。

一つ目の議決権に関しては原則、参加法人の規模にかかわらず各1個ということになっています。ただし、定款に一定条件を記載することで差をつけることはできるようになっています。運営目的に照らして工夫が必要になってきます。

もう一つが、出資持分のある医療法人は参画をしにくくなっているということです。非営利性を求められるため、万が一持分の払戻しが発生した場合、「配当」とみなされてしまい地域医療連携推進法人からは退社しなければなりません。このようなリスクがあるため、参加法人として持分ありの医療法人の参画には課題が残ります。参画を検討されている場合は、持分なしの移行の検討も同時に進めていく必要があるでしょう。

 

医療連携推進の方針と業務

参加法人ができることとしては、主なものは以下の5つです。

 1.病床の融通
 2.債務保証
 3.資金の貸付
 4.人事交流
 5.医薬品・医療機器等の共同購入
この5つのうち1と4に関して触れておきます。

まず「1.病床の融通」に関してですが、病床過剰地域においても病床の変更が可能であるというのは大きなメリットになる可能性があります。ただしここには地域医療構想の実現ということを前提に、どのような医療を担っていくのかということを明確にする必要があります。自院の今待っている機能だけではなく、地域(二次医療圏)にとってどういった機能が必要なのか、充分に検討が必要になります。

また、同時に「4.人事交流」によって、医師の偏在を是正できることも期待されます。ここでポイントとなるのはあくまで協力関係であるので、いかにWin-Winの関係を築くことができるかです。一方は利益があがるが、一方は提供しただけでメリットがないでは意味がありません。地域医療構想を前提としたマーケット調査などを踏まえて、自院だけの生き残りを検討するのではなく、地域医療において共存し、相乗効果が得られるような俯瞰した考え方が今回の制度の明暗を分けるポイントだろうと思います。

 

今後は診療報酬上でどのようなメリットがでてくるのかも注目したいところです。参加法人間での患者の転院という観点では、入院期間の計算における「特別の関係」には該当しないと厚生労働省が通知を出しており、マイナスの影響を受けないような配慮もされています。改定の方向に注目したいと思います。

 

(2017年6月5日 日本経営ウイル税理士法人 病院財務 主任 川戸尋士) 

 

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