医療法人の親族内承継 vol.2「出資持分の評価」

医療法人への1,000万円の出資が、5億の評価になることも

「医療法人の出資持分は、事業を続ける以上まず換金できないにも関わらず、相続時には多額の相続税が課されることがある」と、前回述べました。今回は、医療法人の出資持分がどのように評価されるのか、その考え方を見ていきたいと思います。

 

医療法人の財産価値から評価する(純資産価額方式)

医療法人の出資持分の評価については、財産評価基本通達では2つの評価方法が定められていますが、分かりやすくモデル化してご説明します。まず、実際の財産価値から評価する方法です。

A医師は、20年前に1,000万円を出資して、持分のある社団医療法人を設立しました。20年間、健全経営をして毎年3,000万円ずつ内部留保を蓄積しました。20年後、医療法人には6億円の内部留保があります。この内部留保は、医療法人を解散したりM&Aで譲渡したときには、(税金などが差し引かれて)出資者に戻ってきます。そこで、この医療法人の評価額は、6億円と評価します。これを、純資産価額方式と呼びます。

純資産価額方式は、一般的にいつ解散してもおかしくないような、小規模な医療法人を想定した評価方法だと言えます。

 

類似業種の株式相場と比較して評価する(類似業種比準価額方式)

一方、B医師は、先代から医療法人を承継し分院や介護事業の展開を続けた結果、いまや職員数は百人を超えています。これほど大規模になってくると、医療法人はもはや個人のものという感覚では経営できなくなっています。したがって医療法人の出資金を評価する際には、上場している同業種の会社(類似業種といいます)と比較して何倍の規模に相当するかを計算し、その株式相場に倍率をかけて評価額を算出します。類似業種の株式相場は、数ヶ月に一度国税庁から発表されています。

類似業種の利益と比較すると、B医師の医療法人は3倍の規模、簿価純資産で比較すると1倍の規模でした。ここで、利益のほうに3倍の比重を置いて、(3倍×3+1倍)÷4=2.5倍の規模と計算します。つまりこの医療法人の評価は、類似業種の株式相場の2.5倍となるのです。(正確な計算方法は複雑ですが、分かりやすくするため割愛します)

類似業種比準価額方式は、大規模な医療法人を想定した評価方法と言えます。

 

出資金の評価方法に、2つの方法があることがポイント

「純資産価額方式」と「類似業種比準価額方式」のどちらの評価方法を使うのかは、任意ではありません。医療法人の規模に応じて定められています。実際には、大多数の医療法人では、2つの評価方法をミックスして評価する、折衷方式が使われることになるでしょう。これも医療法人の規模に応じてブレンド割合が定められています。

ポイントは、持分のある社団医療法人の出資持分の評価には、2通りの評価方法があり、そのブレンド割合も規模に応じて定められているということです。仮に内部留保が非常に大きくても、医療法人の事業規模をさらに大規模にしていけば、内部留保ではなく、類似業種と比較した利益の倍率に比重を置いた評価方法に変わることになります。このように、医療法人の出資金の承継を考える際には、まず評価方法の基本を押さえておく必要があります。

(2015年11月4日)

 

医療法人の事業承継は、私どもがもっとも得意とする分野の1つです。そのエッセンスを整理して、お役立ちBOOK 「医療法人(診療所)の親族内承継で困らないために、いまから押さえておきたいポイント」 をまとめました。医療法人の出資持分の承継を検討されている方に最適です。

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このトピックスの著者

近藤文哉近藤文哉(こんどうふみや)
日本経営ウィル税理士法人 税理士


2011年日本経営ウイル税理士法人入社後、医療法人の事業承継、M&A、相続対策、海外税務など多数のプロジェクトに参加。モットーは「繋がりを大切にする」。お客様に対するポジティブで明快な提案には定評がある。

本稿は万全を期しておりますが、その内容の正確性、最新性、完全性、合法性その他を表示、保証するものではありません。実際の税務判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

 

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