医師・開業医の税金Q&A「海外渡航費」

0001Q:開業して7年、事業もようやく軌道に乗り、昨年には医療法人成りをしました。スタッフを労って、来年は海外慰安旅行もしくは海外視察に行きたいと考えています。海外だからということで、何か気をつけなければならないことがあるでしょうか。


 

A:診療所でも、従業員レクリエーション旅行をしたり、業務上の目的から役員又は従業員が海外渡航をすることがあります。その費用を使用者(医療法人)が負担する場合、税務上の取扱いはどうなるかを、ご説明します(今回は法人を前提として文章を作成していますが、個人事業においても同様の規定があります)。

 

従業員レクリエーション旅行

国内・海外を問わず、使用者が従業員レクリエーション旅行の費用を負担する場合には、参加者に対して支給された「給与」ではないのかという問題が生じます。つまり、金銭が支給されていなくとも、従業員は旅行代金を負担してもらえるという経済的利益を受けたわけですから、従業員に対する給与に該当するのではないかという考えです。給与となりますと、法人は源泉徴収を行う必要が出てきます。

この判断については、国税庁のホームページに取り扱いが記載されています。結論としては、次の要件を満たすものであれば給与課税はしないということになっています。

1. 旅行の期間が4泊5日以内であること
  (注)海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であることとされています。

2. 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること

但し上記の要件を満たしているものであっても、自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には、参加者と不参加者の「全員」に、その不参加者に対して支給する金額に相当する額の給与支給があったものとされますので、注意が必要です。

(なお、役員だけで行う旅行、取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行、実質的に私的旅行と認められる旅行、金銭との選択が可能である旅行などは、ここでいう従業員レクリエーション費用には該当せず、それぞれ給与、交際費などとして適切に処理されます。)

 

業務上の海外渡航費用

海外渡航に際して支給する旅費は、その海外渡航が当該法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、当該渡航のため通常必要と認められる部分の金額に限り、旅費としての経理が認められます。いくつか注意点が通達で示されていますので、ポイントをご紹介します。

1. 海外渡航が業務の遂行上必要なものであるかどうかに関して、次のものは業務遂行上必要な海外渡航に「該当しない」ものとされます(但しこれらに該当しても、旅行期間に事業にとって直接関連がある部分があるときは、その部分の旅行費用は旅費として認められます)。

① 観光渡航の許可を得て行う旅行
② 旅行斡旋業者等による団体旅行
③ 同業者団体等が主催して行う団体旅行で主として観光目的と認められるもの

2. 法人の役員が、その親族又はその業務に常時従事していない者を同伴しその旅費を法人が負担したときは、その旅費はその役員に対する給与とされます。ただし、その同伴が明らかにその海外渡航の目的を達成するために必要な同伴と認められるときは、その旅行について通常必要と認められる費用の額は、給与とはされません。

3. 業務遂行上必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行った場合は、その旅費をそれぞれの期間の比等により按分し、業務遂行上必要と認められない部分の金額については、当該役員又は使用人に対する給与とされます。但し、直接の動機が業務の遂行のためであり、観光は併せて行うものである場合には、往復の旅費は、法人の業務の遂行上必要と認められるものとして取り扱い、残額につき期間の比で按分されます。

 

慰安旅行や海外渡航費の税務上の取り扱いは複雑で、個別具体的に考える必要があります。ご判断に迷われたら、税理士など専門家にご相談して進められることをお勧めします。

 

(2017年5月10日 税理士法人 日本経営 代表社員税理士 吉本英明) 

 

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本稿はご回答時点における一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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