企業のアジア進出「香港への海外進出を考える」

003Q:取引先が香港にアジア統括拠点を作ろうとしており、当社としても他人事ではない状況になってきている。香港への進出を考えた場合、どのようなことに留意すべきか?


 

A:1997年に香港の主権がイギリスから中国へ返還されてから、2017年で20年目を迎えます。2014年に学生が中心となって起こった民主化抗議デモ「雨傘革命」は、記憶に新しいのではないでしょうか。香港経済の中枢である中環が封鎖され、金融市場に大きな影響を与えました。

一つの節目となる2017年には香港行政長官選挙が控えており、一段と緊張感が増しています。このような情勢の中でも、世界経済の回復の兆しもあって、国際金融都市としての香港に注目が集まっています。

アメリカのシンクタンク ヘリテージ財団が発表している2016年の経済自由度指数では、22年連続で世界第1位。また、イギリスのシンクタンクZ/Yenグループが発表している「グローバルファイナンシャルセンター指数」(2016年4月版)では、惜しくもシンガポールに僅差で抜かれましたが、堂々の世界第4位として国際競争力の高い金融都市に輝いています。

世界最大規模の銀行100行のうち、約7割以上が香港に支店を構えており、アジアを中心とした海外取引には欠かせない拠点となっています。他国と比べ、海外からの投資に対する規制がない、法人税率(16.5%)が低い、キャピタルゲイン・関税・付加価値税が非課税、相続税・贈与税がない、インフラが整備されているなど、企業だけでなく、個人にとっても魅力があるのが香港です。

2016年度から導入された「コーポレートトレジャリーセンター」制度により、金融機関以外への関連会社への支払利息の損金算入基準を見直すなど、多国籍企業にとって、より一層グループの金融拠点として重要な都市となっています。

 

投資促進機関や規制など

香港への進出に当たっての、投資促進機関や規制などを簡単にまとめると、下記のようになります。

投資促進機関 香港投資推進署(InvestHK)、香港貿易発展局(HKTDC)、香港科技園公司など。
規制業種/禁止業種 規制については最低限の危険・公害など公衆衛生上問題のある業種などに限られている。
出資比率 制限はなく、100%の外国人出資も認められる。
外国企業の土地所有の可否 香港では土地すべてが政府所有である。外資が不動産賃貸をすることに対して規制はないが、購入はできない。
資本金に関する規制 最低払込資本金は1香港ドル。上限制限はない。
奨励業種

制度上において、奨励業種は特にない。ただし投資推進署(InvestHK)が、主要産業を挙げている。

  • 美容・健康、生物医学、ビジネス・専門サービス、資本調達、小売、クリエイティブ産業、教育・トレーニング、エレクトロニクス、再生可能エネルギー、金融サービス、飲食業、工業、情報通信技術、調達・貿易、旅行・観光、輸送・物流の16分野。

 

香港貿易発展局(Hong Kong Trade Development Council)のウェブサイト上で専用ページを設けているのは、製造業29分野およびサービス業7分野。

  • 製造業(自動車部品、ベビー用品、本・印刷物、建築材料・専門機械、コンピュータ関連機器、電子・電気製品、環境保護設備・製品、眼鏡・アクセサリー、食品・飲料、靴、家具・関連用品、アパレル・繊維製品、ギフト、鞄・旅行用品、健康・美容用品、家庭用品、宝飾品、照明製品、医療用品・薬、梱包材料、ペットおよび同用品、撮影・光学用品、原材料・化学品、実験室用品、スポーツ用品、文房具・ オフィス設備、通信製品、玩具、時計)
  • サービス業(会計、広告・マーケティング、情報通信科学技術、法務、物流・輸送、品質検査・検測、科学技術・研究開発)

 

香港で会社を設立する場合の留意点

このように、香港で会社を設立する場合、特段難しい手続きはありません。ただし、注意しなければならないのは日本の税制です。香港は法人税率16.5%と低税率国となりますので、「タックスヘイブン対策税制」について十分に検討する必要があります。香港に会社を設立したが、結果的に日本の税率が適用され、香港進出のメリットを活かせない事例もあるので、事前に十分な検討が必要です。

 

(2017年1月15日 日本経営ウイル税理士法人 海外事業部 チームリーダー 金築広之)  

 

本稿は一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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